たぶん個人的な詩情

本や映画の感想、TRPGとか。

たぶん個人的な詩情

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【読書感想】『哲学者たちの動物園』――古今、哲学者たちは動物をどう描いてきたのか。哲学初心者にもお勧めの愉快な哲学コラム集。

動物と哲学と言うと、かつて私が辛くも卒業した某大学の哲学科にて、語り草となっている逸話にこんなものがあった。それは在籍する教授二人が、飲みの席で「猫に魂はあるのか。猫は天国に行けるのか」と言う内容で議論となったと言うものだった。共にキリス…

【映画感想】『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』――タイトルに偽りなし(だが)ナチもビッグフットもおまけでヒューマンドラマが魅力の怪作。

感想 アマプラにて『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』を観た。なんとも奇妙な映画を観てしまった、と言うのが見終わった後に抱いた率直な感想だ。 www.youtube.com 世に蔓延るB級(あるいはZ級)映画――例えば首が何本もあるサメの映画――な…

【読書感想】十三不搭『ヴィンダウス・エンジン』――動かないものが見えなくなる病を克服した主人公がサイバー都市・成都で繰り広げる痛快アクション。

第8回ハヤカワSFコンテストにて優秀賞を受賞した『ヴィンダウス・エンジン』を読んだ。毎年『SFが読みたい!』を読みつつも、その都度話に付いていけていない人間からすれば、ここ数年の内に発売されたSFを読んでいると言うのは非常に珍しい。 とは言…

【読書感想】スティーヴン・ローズ『スペクター』――手軽さと粗さと面白さ。ファストフードのようなB級ホラーにオールディーズを添えて。

はじめに タイトルとあらすじに惹かれてスティーヴン・ローズの『スペクター』を読んだ。誤解を恐れずに書けば本作はファストフードのような小説だ。手軽に読めてなおかつ面白い。そして読み始めたら最後、味を吟味するような間は与えられず、気付けば最後ま…

【読書感想】ルース・レンデル『ロウフィールド館の惨劇』心理小説としての面白さとその裏に潜む居心地の悪さ。カヴァディル一家はなぜ殺されたのか。

サスペンスの由来は英語の suspend(=宙吊り)に由来していると言う。観客の心を不安定なまま宙吊りにして物語が進行することからの連想だろうが、そうした作品では観客を宙吊るために引きとなる謎ないし展開を用意し、飽きさせないよう工夫を凝らす。 そし…

【読書感想】ヘーシオドス『仕事と日』――人類よ、農業に励め。ニートに送る仕事のすゝめ。

ヘシオドスの『仕事と日』を読んだ。正直言って、この偉大なる古代ギリシアの詩人について知っていることはほとんどなかった。彼の手によるとされる二つの作品についても、受験で覚えた以上のことは何も知らない。 この詩を読もうと思ったきっかけにしても、…

【読書感想】『暗黒神話体系クトゥルー4』――初心者にもお勧めのバラエティに富んだクトゥルー神話譚。ラヴクラフト、スミス、ハワード、ダーレス、ブロック……。

はじめに クトゥルフ神話初心者にどの一冊を勧めるか。この問題については読者各人それぞれご意見をお持ちのことだと思います。私自身この問題については長年聞かれてもいないのに考えてきました。 創元推理文庫の『ラヴクラフト全集』は初版の刊行から50…

【読書感想】鈴木光司『仄暗い水の底から』――仄暗さと温かさと人間の光と影。水にまつわるホラー短編集。

暦を見れば8月も既に半分が過ぎ、気付けばお盆も終わっていた。海外においてゴーストストーリーが冬の風物詩なのに対し、日本の怪談の季節と言えば夏をおいて他にはない。下記の記事によれば「涼み芝居」と称して幽霊の出る演目を歌舞伎で上演したのが夏に…