読書
はじめに ここ数週間、長年ほったらかしていた部屋の掃除に手を出していまして、部屋はちょっとずつ片付いて来たものの、喉をやられて今も絶賛体調崩し中。ブログの更新が疎かになっているのもそれが原因の一つだったりします。 まあその甲斐あってか、長年…
はじめに 時は先月に遡る。ツイッターにて下記の呟きを見た時、不謹慎ながら、デフォレスト・ケリーやレナード・ニモイらに続き、ついにその時が来たのかと思ってしまった。 BBCニュース - 「スター・トレック」のキャプテン・カーク俳優シャトナーさん、宇…
あらすじ ナイジェリア最大の都市ラゴス。そこで暮らす看護師のコレデはある日、妹からの電話に頭を抱えることとなる。「ねえコレデ、殺しちゃった」と。「そんなセリフ、二度と聞きたくなかったのに」。 妹のアヨオラが彼氏を殺すのはこれで3人目。美人で…
あらすじ 一年に渡って世界の海を航海し、知られざる自然や生物を紹介しつつ、クルーたちの人間模様を放送するリアリティ番組「シーライフ」。放送開始当初は視聴率を稼ぐ人気番組だったが、ここ最近は天候不順のために思うような画が取れず、一月経った今と…
動物と哲学と言うと、かつて私が辛くも卒業した某大学の哲学科にて、語り草となっている逸話にこんなものがあった。それは在籍する教授二人が、飲みの席で「猫に魂はあるのか。猫は天国に行けるのか」と言う内容で議論となったと言うものだった。共にキリス…
第8回ハヤカワSFコンテストにて優秀賞を受賞した『ヴィンダウス・エンジン』を読んだ。毎年『SFが読みたい!』を読みつつも、その都度話に付いていけていない人間からすれば、ここ数年の内に発売されたSFを読んでいると言うのは非常に珍しい。 とは言…
はじめに タイトルとあらすじに惹かれてスティーヴン・ローズの『スペクター』を読んだ。誤解を恐れずに書けば本作はファストフードのような小説だ。手軽に読めてなおかつ面白い。そして読み始めたら最後、味を吟味するような間は与えられず、気付けば最後ま…
サスペンスの由来は英語の suspend(=宙吊り)に由来していると言う。観客の心を不安定なまま宙吊りにして物語が進行することからの連想だろうが、そうした作品では観客を宙吊るために引きとなる謎ないし展開を用意し、飽きさせないよう工夫を凝らす。 そし…
ヘシオドスの『仕事と日』を読んだ。正直言って、この偉大なる古代ギリシアの詩人について知っていることはほとんどなかった。彼の手によるとされる二つの作品についても、受験で覚えた以上のことは何も知らない。 この詩を読もうと思ったきっかけにしても、…
はじめに クトゥルフ神話初心者にどの一冊を勧めるか。この問題については読者各人それぞれご意見をお持ちのことだと思います。私自身この問題については長年聞かれてもいないのに考えてきました。 創元推理文庫の『ラヴクラフト全集』は初版の刊行から50…
暦を見れば8月も既に半分が過ぎ、気付けばお盆も終わっていた。海外においてゴーストストーリーが冬の風物詩なのに対し、日本の怪談の季節と言えば夏をおいて他にはない。下記の記事によれば「涼み芝居」と称して幽霊の出る演目を歌舞伎で上演したのが夏に…
はじめに 山椒魚を扱った小説と言うと、まず井伏鱒二の「山椒魚」が頭に浮かぶ。岩屋から出られなくなった山椒魚の悲嘆を描いた作品だが、実際本作の感想の中にも、井伏のものと勘違いして読んでしまったとの感想をよく見かける。 またこちらは未読だが、ア…
スマホに入れていたキンドルのアプリを数カ月ぶりに開いてみたところ、見慣れぬ作品がライブラリからこちらを見ていた。サムネを見る限り、どうやら青空文庫の一冊のようだが、ダウンロードした覚えはない。 いや、それはいささか誇張してしまった。記憶は不…
はじめに 一昔前のライトノベルを読んでいると、続編や結末が描かれないままに終わりを迎えてしまった作品と出会うことがままあります。それが打ち切りに値する程度の作品だと断じてしまえるのなら話は簡単なんですが、打ち切られたことに一抹の寂しさを感じ…
多種多様。角川ホラー文庫に対するイメージはまさにこの言葉に尽きます。ラノベ調の軽めのものから日本を代表する硬派なホラーまでより取り見取り。ホラー系の作品が読みたい時、取り合えず選択肢に挙がるレーベル。それが角川ホラー文庫だと思います。 で、…
いつぞやの「午後のロードショー」にて、フランス制作のサスペンス映画、『クリムゾン・リバー』を見ました。舞台はアルプスの麓にある大学町ゲルノン。そこで発見された他殺遺体は拷問され、そのうえで目玉がくり抜かれていた。 場違いな猟奇殺人犯を捕まえ…
先日感想を書いた『神の起源』と言う小説では、南極での4万年前の死体の発見が、主人公たちを世界的陰謀に巻き込む切っ掛けとして描かれていました。このエピソードはもちろんフィクションですが、この話に説得力を持たせるため、作中ではアルプス山脈で発…
南極で未知の繊維製の服を着た死体を発見したNASAの研究チーム。死体の眠っていた断層から、死体はおよそ4万年前のものだと判明。早速上司に報告するが、一方でそれを盗聴する謎の組織が存在した。 死体は軍によって回収され、急遽帰途に就くこととなったチ…
はじめに 久しぶりにダン・ブラウンを読んだ。彼の作品の面白さは、その息もつかせぬスピーディな展開と、読者の知的好奇心をくすぐる数々の蘊蓄、旅行欲を掻き立てる芸術や街並み、建造物の描写にあると思う。静と動、この二つを共存させるバランス感覚は素…
先日、ユタ州の砂漠にて奇妙なものが発見されたと言うニュースが話題となった。それは何と、映画『2001年宇宙の旅』に登場する謎の石柱状の物体、モノリスを彷彿とさせるオブジェクトであったのだ。 公安局はこれについて「許可なしに連邦当局の管理する公有…
リチャード・マシスンと言うと、私にとっては『地球最後の男』や『縮みゆく男』を書いた小説家であり、例に漏れずどうしてもホラーやSFのイメージが強いんですよね。あの『ナイトランド』でも追悼企画が組まれていたことですし。 ナイトランド(vol.7)…
笑いと恐怖の境界線は、思いのほか曖昧なのではないだろうか。そんな思い付きを裏付けるかのように、よくよく考えてみれば不思議で恐怖を伴う光景であるはずなのに、思わず笑みがこぼれてしまう、なんて状況はそう珍しいことではない。 もしかするとそれは、…
この本のタイトルを始めて見かけた時のことを未だに覚えている。それは確か、本屋で平置きの本を眺めている時のことだった。 感じたのは、鈍器で頭を殴られたかのような衝撃と、ある種の嫉妬。誠におこがましいことだが、文章を生業にしたいと一度でも考えて…
青春の一ページが輝いて見えるのはどうしてだろうか。失われた過去として、未体験の憧れとして、手の届かなかった理想として。人それぞれ捉え方の違いはあれど、そこには今ここにないものとしての青春が反映されている。故に私たちの思い描く青春は、どうし…
はじめに このご時世と言うこともあって、図書館に行く頻度がめっきり減った。自分事で恐縮ではあるが、ここ最近で言えば、必要に駆られて国会図書館並びに都立中央図書館に足を運んだくらいだと思う。 行くことになるまで知らなかったが、最近ではコロナ対…
なぜ本を読むのかと言う問いへの応えは十人十色。好きだから、学びたいから、何となく、惰性で、明日の課題のために……etc。 人それぞれに読む理由はあれど、その理由は大きく分けて二つ。それは目的意識の有無によって大別される。 楽しさを求めて本を読む場…
クーンツ『ストーカー』を読了。誤解を恐れずに言えば、クーンツの魅力の一つは、最低限楽しませてくれることだと思っています。打率が安定していると言いますか、大きく外れることがないんですよね、これまでの経験上。 とは言え、そこまで彼の作品を読んで…
暗黒女子 (双葉文庫) 作者:秋吉 理香子 出版社/メーカー: 双葉社 発売日: 2016/06/16 メディア: 文庫 名門女子高で、最も美しくカリスマ性のある女生徒・いつみが死んだ。一週間後に集められたのは、いつみと親しかったはずの文学サークルのメンバー。ところ…
昨年末に発表されたイ・セドル氏の引退は、末端の囲碁ファンである私*1にとっても一つの時代の終わりを感じさせられる出来事でした。彼は辞表を提出した際のインタビューにおいて、越えられない壁として立ちはだかるAIの存在について触れたようです。 Google…
はじめに 海外の怪奇小説は好んで読むのに対し、国内のホラー作品はあまり読んだことがありません。食わず嫌いと言うのもありますが、それ以上に読むのが怖いと言うのが大きな理由として挙げられます。何を馬鹿なと思われるかもしれませんが、海外ものはあく…