息子テオと二人暮らしの元警官フランク。ある夜、シッターのベッツィに家を預け帰宅した彼が見たのは、血の海となった自宅トイレの中に引きずり込まれていくベッツィの凄惨な最期だった。家にサメらしき怪物がいると主張し、テオと庭でテント生活を始めたフランクだが、地元の悪徳不動産会社は勝手に家を売ろうと画策。内見に来たカップルもまた犠牲者となってしまう。自分の家以外でも同様の事件が起きていることを知ったフランクは、怪物「ハウス・シャーク」の駆除専門家という人物を探し出す。犠牲者は数を増していく中、ハウス・シャークとフランクたちとの奇想天外な戦いが幕を開ける!(Amazonより引用)
B級映画の代名詞、サメ。出来不出来はさておき、多くのサメ映画がパニック映画としての矜持を持って作られる中、今回感想を書いて行く『ハウス・シャーク』は、そんな申し訳程度のパニック要素を排し、最初から笑いに舵を取っている意欲作です。
人に勧められる類の映画ではないんですが、好きな人はとことん好きなタイプの映画だと思います。深夜テンションだったとは言え、かく言う私も、見ている最中に声をあげて笑ってしまうぐらいには楽しんでしまいました。
何と言いますか、この映画からはかの傑作パロディ映画『オースティン・パワーズ』に通ずるものを感じるんですよね。こう書くとマイク・マイヤーズに怒られそうですが、しょうもないネタの連続と数々のパロディ、終始付きまとう独特の脱力感はちょっと似ているかなと。……まあクオリティは雲泥の差なんですが。
●一見するとパニックホラーめいた予告だが、これを期待して見ることなかれ。
始めはいつものB級サメ映画かと思いきや、ハウス・シャーク討伐のためにシスの暗黒卿*1めいた住宅診断士(!)が出てくる辺りから雲行きが怪しくなり、ようやくコメディ映画としての本性を現してきます。サメはバッファローと同じく陸上生物だったと言う謎の伝説*2、水浸しの室内で泳いでいる振りをするキャスト*3、閉じ込められた(ことになっている)室内*4で突如として蟷螂拳*5を習得し始めるリンカーンのコスプレイヤー……。
まるで意味が分からないんですが、すべて本当のことだからしょうがない。あまりの馬鹿馬鹿しさとクオリティの低さに、人によっては卒倒しそうな本作、どうやら資金はクラウドファンディングで集めたようですね。果たして出資者はこの路線を望んでいたのか、一抹の不安は残りますが、個人的に面白かったので無問題。
惜しむらくはやりたいことを詰め込み過ぎたのか、尺が長くなり助長になってしまっていること。もう少しコンパクトに編集されていれば、よりよくなっていたように思うのは素人考えでしょうか。まあ、このこなれていない感じも本作の売りなのかもしれません。
少し短いですが、今回はこの辺で。ちなみに一番笑ってしまったのは、サメを退治する天才的思いつき。酔っ払いの血液に引火させての爆発落ちなんて、普通は思いつかないでしょう。
▶HOUSE SHARK (2018)
▶監督・脚本:ロン・ボンク
▶制作:ハワード・グロメロ、トラヴィス・ティロ
▶音楽:エメット・ヴァン・スライク
▶キャスト:
トレイ・ハリソン
ミッシェル・マーチャント
ウェス・レイド
ウェイン・W・ジョンソン
ナイサン・ボンク
ジェニー・ルッソ