たぶん個人的な詩情

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【映画】『禁断の惑星』――すべてのSF映画は本作に通ず(?)な古典的傑作SF。

先日、BSプレミアムで放送されていた『禁じられた惑星』を見ました。「お噂はかねがね…」と言った感じで、存在は知っていたものの見たことがなかった本作、特段事前知識も入れずに軽い気持ちで見始めたわけですが、これがまた面白かった。

いや、面白かったと言う以上に、合点がいった、しっくり来た、と言う方が感覚としては近いかも知れません。

隙を見逃さずに自分語りをさせて貰えば、私は父の影響で小中学生の時分から「スタートレック」の第一作、『宇宙大作戦』を見せられて育ってきました。だからこそ、『禁じられた惑星』を見た際の衝撃は大きかったわけです。

まず思ったことは、まるで「スタートレック」ではないか、と言うこと。植民された惑星の調査に訪れた宇宙船と、たった一人の生存者に、その美しい一人娘。惑星に残された先住民の高度な遺物、宇宙船のクルーに迫る正体不明の怪物……。

見ている最中、未見の『宇宙大作戦』を見ているのかと錯覚してしまうほどの既視感のに度々襲われてしまいました。もちろん、その順序が逆であることは重々承知しているんですが……。

この既視感の基となる後続作品への影響は「スタートレック」に限りません。素人目に見ても、本作のエッセンスが数多くの作品に受け継がれていることは明らかです。

人類のお助け役として活躍するロビーの影響は言わずもがな、クレル人の地下遺跡などは『スター・ウォーズ』に登場するデス・スターの内装に受け継がれていますし、船員の制服や小道具、演出などは「どこかで見たことある」ものばかり。

本作なくしてその後のSF映画やアニメはなかった、とは言い難くとも、この作品によるイメージの共有が一つの転換点、分岐路になったことはまず間違いないでしょう。

SF映画の古典と言えば『メトロポリス』(恥ずかしながら未見)と言われる印象がありますが、世間一般に持たれている「SF」のイメージは本作に負うところが多いように思います。

特撮や音楽は今見ても味がありますし、中でも主人公一行が訪れるアルテア4の背景などは、地球ではない惑星の美しさと違和を一目で見る者に感じさせます。脚本もシンプルながら丁寧な作りで好感が持てますし、怪物の正体にしても、50、60年代のSFらしさが感じられて微笑ましいものがありますね*1

ただし、どうも登場人物が紋切型に収まってしまっている印象は拭えず、人物描写、キャラクター性の深みと言った点については、後継の「スター・トレック」に軍配が上がると言っていいでしょう。

とは言え、今見ても十分楽しめる作品であることは確かですし、SFに少しでも興味があると言うのならば見ておいて損はない、むしろ見てくれと思う作品でした。正直、本作未見で何かを語ろうとしていた自分が恥ずかしいくらいです。『メトロポリス』も早い内に見たいと思います。

ちなみに、本作が『テンペスト』を下敷きにしているとの話がありますが、「言われてみれば……」程度で、「ははーん、これは『テンペスト』を元ネタにしているな」とは思えなかったと告白したところで、今回はこの辺で。

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禁断の惑星 (字幕版)

▶禁断の惑星 / Forbidden Planet (1956/アメリカ)
▶監督:フレッド・M・ウィルコック
▶脚本:シリル・ヒューム
▶原案:アーヴィング・ブロック、アレン・アドラー
▶制作:ニコラス・ネイファック
▶撮影:ジョージ・J・フォルシー
▶編集:フェリス・ウェブスター
▶音楽:ベベ・アンド・ルイス・バロン
▶キャスト:
エドワード・モービアス博士:ウォルター・ピジョン
アルティラ・モービアスアン・フランシス
ジョン・J・アダムス機長:レスリー・ニールセン
ドク・オストロウ:ウォーレン・スティーヴンス
ジェリー・ファーマン:ジャック・ケリー

*1:唯一、ヒロインを虎が襲うシーンについては作中での説明が十分にはなされていないように思われる。これについて考えられる可能性としては、途中から登場したイドの怪物の生みの親がヒロインであり、それを脅威と感じ取った虎による危険分子の排除、だったのだろうか。