たぶん個人的な詩情

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【ドラマ】ウルトラセブン「怪しい隣人」――マシスンで乱歩的な『裏窓』。山本廉の名演が光る一作。

今さらの話題となって恐縮ですが、今年の4月よりNHKBSプレミアムにて『ウルトラセブン』の4Kリマスター版の放送が開始されました。

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ウルトラマンと言えば「ティガ」「ダイナ」「コスモス」。仮面ライダーと言えば「クウガ」「アギト」「龍騎」「555」……。そんな平成生まれ平成育ちの自分たち世代にとって、昭和も昭和、1967年公開の『ウルトラセブン』は古い作品と言ってしまって構わないでしょう。

しかし自分の場合は父からの英才教育の賜物か、先に触れた平成三部作以上に『ウルトラセブン』が馴染み深いウルトラシリーズだったりします。『セブン』の前後で放送されていた『ウルトラマン』や『帰ってきたウルトラマン』には興味を持たず、幼い時分の私に「『ウルトラセブン』は敵が怪獣じゃなくて宇宙人だからいいんだよ」と耳にタコが出来るほど言い聞かせてきた父。

当時は意味もよく分からず、取り合えず聞き流していたんですが、今思えばありがたい英才教育だったのかなと思います。そのほかにも『謎の円盤UFO』や『宇宙大作戦』を見せられたりしていたんですが、今となっては感謝しかありません。…湿っぽい感じに感謝を伝えてはいますが、父は存命ですし、まだまだ元気ですのでご安心を。

で、そんな自分にとっては懐かしの『ウルトラセブン』を最近ちょくちょく見たりしているんですが、今回は昨日BSプレミアムにて放送されていた「怪しい隣人」の感想記事となります。

脚を怪我し別荘での療養中、窓から見える隣人の違和感を周囲の大人に告げるも相手にされず、果てはノイローゼとまで言われてしまうアキラ少年。しかし、彼とその姉が空中に固定された鳥の死体を発見したことから一転、隣人の正体が四次元から地球の侵略を図るイカルス星人だと判明します。

調査の過程で四次元空間に囚われてしまったモロボシ・ダンは、何とか外にいるアンヌ隊員と空間越しに言葉を交わすことに成功し、イカルス星人が地球侵略を開始したことを知ります。その後、決死の覚悟で四次元から脱出したダンはイカルス星人と対峙、お決まりの戦いを制した後、イカルス星人の円盤をウルトラホーク1号が撃墜し、「あなたの隣人も宇宙人かも知れません」的なナレーションで締め、と言うのが大まかなあらすじ。

こうして書くとあまり面白みはないですし、実際のところ他の有名な作品に比べて特筆すべき点は少ない作品でしょう。展開は駆け足気味、四次元空間からダンが脱出することを許してしまうイカルス星人の杜撰さも目に余ります*1

とは言え見所が全くないわけではないのも事実でして、本作からは子供向け特撮ではない「ドラマ」を撮ろうとした形跡が要所要所で感じ取れて憎めないんですよね。冒頭アキラ君が隣人を不審がる際の描写はホラーチックで秀逸ですし、人間態時のイカルス星人とダンの邂逅時の会話、そして四次元からの脱出後に対峙した際のやりとりは人間ドラマ的な味があってとても良いです。

特に好きなのはダンが四次元空間から出た後、森の中で人間態のイカルス星人と向き合う一連のカット。時間にしてほんの数秒、やりとりとしてもたった一言投げられるだけなんですが、この瞬間、ハッとさせられるような緊張感が走るんですよね。これはイカルス星人を演じた山本廉さんの好演も大きいのかと思われますが、何にせよ魅力的なシーンであることに変わりはありません。ほんと、良い役者さんは台詞がなくとも立ち姿や雰囲気だけで画面を締めてくれます。

また、他作品の影響や当時の流行が所々見て取れるのも個人的には面白かったり。例えば、窓から見える隣人の秘密を図らずも知ってしまうと言う展開はヒッチコックの『裏窓』を、空間越しに声を掛け合うダンとアンヌの姿からはマシスンの「消えた少女」を連想してしまいます。特に後者については『トワイライト・ゾーン』経由で影響があったのかなと思ったり。……真偽は不明ですが。

他にも、少年が重大な秘密を知るも大人から相手にされない、と言った展開は乱歩の少年探偵団からの流れなのかなあと思いつつ、似た世代であろう西岸良平さんの『三丁目の夕日』にもよくある展開だなと思ったり。

実際に乱歩の影響がどこまで強いかは分かりませんが、こうした「秘密を知ってしまった(と思っている)少年」と言う図式は今以上に当時の流行りだった気がするんですよね。それと、今に比べて昭和の作品って感動詞的に「畜生」と言う言葉を使っている気がします。今だと「クソ」がそれに取って代わったのかなと。

ちょっと作品の内容に立ち返りますと、本作におけるアクションシーンも結構面白いんですよね。イカルス星人による光線の演出は独特ですし、戦闘中上下が反転するカメラワークも良いと思います。それと山の向こうに念力で飛ばされるイカルス星人の最期も謎で、ある意味面白いです。イカルス星人自体、結構愛嬌ありますしね。

と、何だか作品の話から逸れてしまった気もするんですが、当サイトは気ままな感想ブログなのでその点はご勘弁を。シリーズ中でも有名な「第四惑星の恐怖」や「ノンマルトの使者」に対して知名度は比べるべくもありませんが、個人的には結構好きな作品でした。

ちなみに件の私の父、本作ではアキラ少年の姉が鳥を見つけた際の台詞がお気に入りだったりします。……なんでかはよく分かりませんが、今回はこの辺で。

▶怪しい隣人

▶放送日:1967年12月2日

▶脚本:若槻文三

▶監督:鈴木俊継

*1:これらの欠点は何も本作に限った話ではないが。