たぶん個人的な詩情

本や映画の感想、TRPGとか。

たぶん個人的な詩情

MENU

【ドラマ】ウルトラセブン17話「地底GO!GO!GO!」――地底都市と謎のロボット。素材は良いが少し惜しい、そんな作品。

録画していた『ウルトラセブン』「地底GO!GO!GO!」を見た。怪獣・宇宙人枠としてはユートム、メカニックとしてはマグマライザーと言った見所のある回だが、この回はまずウルトラセブンことモロボシ・ダンが姿を借りた地球人、薩摩次郎の登場回として有名だろう。

セブンが地球に来た際、その英雄的な行いによってセブンに感銘を与えた薩摩次郎。セブンは彼の命を救うとともに、次郎をモデルにモロボシ・ダンと言う仮の姿を作り出すこととなる。時は流れて現在、そのモデルとなった次郎が炭鉱の事故に巻き込まれ、ウルトラ警備隊が彼の救出に地下へと向かう、と言うのが本作の大まかな流れだ。

モロボシ・ダンの来歴が明かされると共に、彼のモデルとなった地球人が登場する回と言うことで、さぞや面白いドラマになるだろうと期待してしまいそうになるのだが、扱われる素材に対して作品の出来はそうよくない。残念ながら、今回改めて見てもその印象が拭われることはなかった。

なにせ、ダンと次郎の顔が同じであることに対するドラマが本作ではまったく描かれないのだ。そんな評価になってしまっても仕方ないだろう。二人の相似に気付かないようセブン側が配慮するでもなく、周囲がその事実に気付く素振りもない。次郎救出の際に配慮がなされていると言えなくもないのだが、炭鉱の作業員がダンの顔を見て何の反応も示さないのは如何なものか。

素材自体に魅力がある分、それを活かし切れなかった脚本に対して不満は残る。が、そうした心理ドラマ的な要素がオミットされてしまうのも正直分からなくはない。尺の問題もあるだろうし、そもそも少年向けの特撮においてそれらが描かれるべき描写かどうかも私には分からない。ただ分かることは「私は惜しいと思っている」。それだけだ。

と、どうにも苦言ばかり呈してしまったが、今回改めて見ていて気付いた点もいくつかある。まず興味深かったのは、セブンが容姿だけでなく薩摩次郎の魂をもダンのモデルとした、との発言だろう。

ご存知の通り、宇宙から飛来した正義の味方であるにしてはモロボシ・ダンは人間味に溢れている。アンヌとのデートの際のはしゃぎ様、映画鑑賞時に煎餅をバリバリと食べるデリカシーのなさ、メカニックに対する少年のような羨望のまなざし……。

これらをプロット段階の設定の名残だと断じてしまうのは簡単だが、地球人の青年・薩摩次郎の魂をもモデルとしたと考えれば、彼がああいった言動をするのも分かる(もちろん、純粋にウルトラセブンがそういった気質の宇宙人だとするのもそれはそれで面白いが)。

また、本作「地底GO!GO!GO!」が「ノンマルトの使者」に通ずるテーマ性を持った作品である点も改めて気付かされた。これまた尺の都合かそれとも意図的か、作中に登場する地底都市の由来やユートムの製作者の正体や目的が明かされることはなく、都市はウルトラ警備隊の独断で完膚なきまでに破壊されてしまう。

果たして彼らは地球人に害をなす存在だったのだろうか。ユートムの作り主もまた「地球人」だったのではないか、と言った疑問を残すような作りはきっと意図的だろう。かつての視聴者が大人になった時、ウルトラ警備隊の行いに対して疑問を持つように。あるいは、本作をただの子ども向け番組として消費されないように。

何にせよ、このラストの消化不良感があればこそ、本作はただの子ども向け特撮としてではなく、一つのSFとして通用する作品となっている。テーマだけでなく、ドリルの付いた戦車に地底に存在する謎の都市、警備ロボットとの交戦など、如何にも昭和のSFらしい要素もてんこ盛りだ。

ちなみに、改めて本作を見てみると、ユートムからは作り手亡き後も命じられた作業をし続ける寂しきロボット、と言う印象を受けた。真偽は不明だが、SFとしてこれは一つの王道パターンと言えるだろう。また、SF映画の金字塔『禁断の惑星』を見た後にユートムを見ると、明らかにユートムがロビーの系譜上にあることが分かる。
bine-tsu.com

究極大怪獣 アルティメットモンスターズ 第四集 「 ユートム 」 単品

究極大怪獣 アルティメットモンスターズ 第四集 「 ユートム 」 単品

  • アルティメットモンスターズ 究極大怪獣 ULTIMATE MONSTERS
Amazon

子どもの時分に見ていた作品を改めて見ることで新たな発見がある、なんて話はよく聞くけれど、今回はまさにそんな体験をすることが出来た。ブログの種にもなるし、今後は意識的にそうした作品にも手を出していきたい、と思ったところで今回はこの辺で。

全部の感想を書いていくかは分かりませんが、ちょくちょく『ウルトラセブン』の感想も書いていければと思います。では。

▶地底GO!GO!GO! (1968年1月28日)

▶脚本:上原正三

▶監督:円谷一

▶特殊技術:大木淳

▶出演:
キリヤマ:中山昭二
ダン:森次浩司
アンヌ:菱見百合子
フルハシ:石井伊吉
ソガ:阿知波信介
アマギ:古谷敏
薩摩次郎:森次浩司
水木:田中淑隆
徳田:松本染升
和田:国分秋恵
坑夫:西田敏明
ユートム:中島春雄