たぶん個人的な詩情

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【DX】電子書籍フェアの話と『DX3でわかる現代ものRPG』の感想――現代ものとファンタジーものの違い。

ここ最近、サンプルシナリオやシナリオクラフトのGMをしていたせいか、『DX3』 のGMモチベが高まっておりまして、シナリオはもちろん、キャンペーンを作りたい欲がいつになく高いんですよね。

追記:本記事にて触れている電子書籍フェアは終了しました。(7/31)

電子書籍フェア

そんなやる気を後押しするかのように、シリーズ二十周年を記念し、7月16日から29日までの期間、ダブクロ関連の電子書籍がほぼ半額と言う破格のフェアが開催されています。『基本ルールブック』に至っては200円、基本の次に抑えておくべき『上級ルールブック』を合わせても2000円弱と、三冊合わせても定価で『上級』を買うより安い。

自分もこれを機に、買うのを先送りにしていた『レネゲイズアージ』を購入してしまいました。紙だとプレ値が付いていたサプリが手軽に買えるようになったのは電子書籍さまさまですね。一時期馬鹿みたいな値段が付いていたステージ集、『ディスカラードレルム』もセール価格で2000円しません。魔街やアカデミア、エンドラインと言ったステージで遊んでみたい方は是非是非。

またこのセール、ルルブやサプリだけでなく、ダブクロの歴代リプレイシリーズも半額となっております。個人的にリプレイのお勧めとして挙げたいのは『オリジン』と『デザイア』、それに『メビウス』。これらのリプレイはどれも面白いと太鼓判を押せますし、ここでは挙げていないその他のリプレイも魅力的な作品ばかりです。

フェアの開催期間はあと数日ですが、この機会に気になっていたルルブやサプリ、リプレイなどを購入してみてはいかがでしょうか。Amazonだけでなく、BOOK☆WALKERやhontoなどでも安くなっています。

マジで絶好のタイミングだと思いますので、騙されたと思って覗くだけでも覗いて欲しいと言うのが正直なところ。むしろ、この機会に友人各位に連絡して遊ぶ環境を整えて欲しいとさえ思います。……TRPG人口よ、増えろ。

▶DX3でわかる現代もの

と、フェアの紹介はこれぐらいにして以下本題。ダブクロのモチベが上がる中、部屋の片付けをしていたら見つけたのがこちらの一冊。F.E.A.R.が出している雑誌『ゲーマズ・フィールド』の別冊31号、「DX3でわかる現代ものRPG」となります。

発売されたのは2016年。まず目を引くのはしのとうこさんのイラストですよね。車内にいるいつもの二人の姿からは、彼らの日常が垣間見えるようでワクワクしてきます。ダブクロのサプリを買う楽しみの一つはしのさんのイラストだと言うくらい、しのさんのイラストが好きです。線がすっきりしていて綺麗ですよね。

で、そんなこちらの本の内容なんですが、主に書かれているのはTRPGの王道であるファンタジーものに対して、「現代もの」にはどういった特徴があるのかと言うこと。当然TRPGである以上似通った点もありますが、両者には大きな違いがあります。

通信手段や移動手段と言った具体的な違いから、プレイヤーが実際に住む現代が舞台だからこそ起こる認識の違いなど、その違いは多種多様。後者については、キャラクターが事件に巻き込まれた際、一般人が事件に首を突っ込むのは如何なものか、ここは警察に任せてしまおう、と言った『クトゥルフ神話TRPG』などでよく見られる消極性の問題にも繋がってきます。

シナリオにおける冒険パートがPCの目的となるファンタジーものの場合、導入で詰まるなんてことは基本的にありません。ですが、冒険を必要としない現代の我々が主役となる現代ものの場合、話は違ってきます。警察によって治安が守られている現代には、それに相応しい導入が必要となってくるわけです。

本書ではこうしたファンタジーものと現代ものの相違点について、座談会に記事、リプレイと言ったいくつもの視点から掘り下げられています。

現代ものTRPGデザイナー座談会

中でも、菊池たけし、久保田悠羅、矢野俊作と言う、ファンタジーと現代もの、両方のシステムを作った経験を持つデザイナー3人による座談会は読み応えがありました。特に、三人が考えるファンタジーものと現代ものの違いについての発言は面白く、色々と参考になる部分が多かったです。ちなみに、両者の差異について矢野氏が言った「日常を想像できる」かどうか、と言うのはダブクロのデザイナーらしいなと思いましたね。

また、現代もののシステムを制作するにあたって三人がそれぞれ意識した点について語っている部分も大変興味深かったです。テーマを同じくする先行作品がある中で如何に差別化を図るか。これはゲームデザイナーに限らず関心のある点でしょう。

こちらの座談会は、現代ものを遊ぶPLやマスタリングするGMはもちろんのこと、現代もののシステムを作ろうとしているゲームデザイナー志望の方にとっても必見の内容かと思われます。また、3人の「現代もの」ゲーム遍歴を垣間見ることが出来るため、ファンとしては一読の価値ありです。

現代ものTRPGの遊び方

そして意外と読み逃せないのがゲーマーズ・フィールド編集部による「現代ものTRPGの遊び方」と言う記事。こちらの記事ではいくつかの観点からファンタジーものと現代ものを対比し、両者の違いを浮き彫りにしていきます。

例えばファンタジーの世界では私的な武装が許されており、最低限自力での問題解決が求められます。それに対し現代では、警察を始めとする公的機関が秩序を守ります。この対比をこの記事では「剣」と「秩序」と名付け、「魔法」と「科学技術」と言う対比からは、技術が一般化したために現代では個の力が弱くなったことを、「冒険」と「日常」の対比からは、リスクを取ってまで冒険をする必要がなくなった現代は、その代わりに日常を手に入れたのだと指摘しています。

これだけでは現代がTRPGの舞台に不向きだと断じて終わりですが、この記事では、このように一見TRPGの舞台としては不適当な現代が、如何にTRPGの舞台として適切な形に変更できるのか、加工できるのかを掘り下げていきます。

ここでなされるいくつかの説明や提案には、普遍的な内容があるだけでなく、『ダブルクロス』を始めとしたF.E.A.R.製品を例にした個別の内容も含まれています。普段遊んでいるシステムの設定やギミックが、如何に現代を遊びやすいよう加工(=ゲーム化)しているのかを知ることは、シナリオを作る上でも大変参考になるはずです。

リプレイ「Cradle of The Genius」

また、現代ものの基本を抑えられるように、と作られた丹藤武敏さんによるリプレイもとても面白かったです。こちらは「現代もの」初心者にも優しい、基本ルールブックのみのレギュレーションとなっております。PLは波多野志郎、林啓太、藤井忍、鈴吹太郎の四名。

現代ものの指針を示すリプレイだけあって、舞台は高校、異能の力に覚醒し世界の真実を知るPC1と言う、皆大好きド定番展開となっております。しかも、プロサッカー選手を夢見る高校生、と言うPC1の設定がしっかりと活きているのは流石だなと。

言うまでもなく、超常の力に目覚めたオーヴァードが一般人と肩を並べて競技に参加することは容易ではありません。そのため、レネゲイドの力を得たと言うことは、今まで当たり前のように目指していた夢を諦めざるを得なくなったことを意味します。

そんな自身の不安についてPC1が吐露するわけですが、ここのシーンを丁寧に描いているのは個人的にポイントが高いです。何と言ってもこれ、実はあんまり公式リプレイでは描かれていない部分なんですよね。キャンペーンの場合、どうしても世界の命運だとか、日常を捨てた先の出来事に目が向いてしまいますから。

例えば、同じくPC1が覚醒することで物語が始まる『アライブ』は、数あるリプレイの中でも日常との決別を綺麗に描いた作品だと思いますが、今回のリプレイのように超常の力が自らの夢を潰えさせてしまうかも知れない、と言った切実さはないわけです*1

そんな日常と非日常の岐路に立たされたPC1に対し、覚醒したことで日常を捨てざるを得なくなった友人がPC2だと言うのも対比として面白く、二人のやり取りは中々に読みごたえがありました。

また、PC4を務める鈴吹社長のPCが、過去作にも登場した謎の女・鈴木和美だと言うのも面白かったです。初心者向けのリプレイながら、歴代の作品との橋渡しを担っているのは憎いですね。現代ものではお約束のネタ(「学園もの」「事件の隠蔽」など)についてのコラムが掲載されているのも嬉しい限り。

 

本書には以上紹介したコンテンツだけでなく、更にダブクロとガーデンオーダーのシナリオが一本ずつ載っている上に、『ガーデンオーダー』で『ダブルクロス』を遊ぶためオプショナルルールなども掲載されています。

普段から現代ものに慣れ親しんだ方にとっては現代ものを見直すきっかけになるでしょうし、ファンタジーものがメインだという方にとっても、現代ものを知るための取っ掛かりとなるであろうこちらの一冊。

発売されたのは随分と前ですが、現在電子書籍でも入手できるため、興味があれば是非手に取ってみてください。普遍的な内容を多く含んでいますし、この手の内容に興味があれば買ってみて損はないはずです。……残念ながら今回のフェアの対象ではありませんが。

最後にまた繰り返しとなりますが、ダブクロの世界に足を踏み出すなら今が絶好のチャンス、このチャンスを逃す手はありません。将来的に遊ぶことを見据え、今買っておくのも普通にありだと思います。それぐらい今回のフェアは破格です。

……と、長くなってしまいましたが、今回はこの辺で。TRPGの記事は今後も定期的に挙げていこうと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

▶DX3でわかる現代ものRPG
▶発行所:ファーイースト・アミューズメント・リサーチ
▶発行日:2016年4月

*1:こんなことを言いつつ『アライブ』は滅茶苦茶好きなリプレイの一つで、しのとうこさんがPLを務めるPC1・七村紫穂の真っ直ぐさ、成長具合が本当に魅力的。他のリプレイに比べ地味な嫌いはあるものの、是非手に取って欲しいシリーズの一つ。テレーズ・ブルムが生まれるきっかけともなったリプレイなので、彼女が好きと言う方も是非。