たぶん個人的な詩情

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【読書感想】いしかわゆき『書く習慣』――好きになれば書く習慣は身に付く。書くことの初心を思い出させてくれる一冊。

書く習慣

はじめに

このブログを始めてから気付けば四年もの月日が経ちました。あと半月ほどすればめでたく五年。五歳が十歳、十五歳が二十歳、二十五歳が三十歳になってしまう年月と書けばこれが如何に重いものなのか実感できますね。

しかも私にとってはこれが初めてのブログではなく、以前にもいくつかブログを書いては消しを繰り返し、焼き畑的に断続してきました。中にはまだ消していないブログもあるんですが、それはさておき、それらの期間を含めればブログを書き始めてから十年以上もの年月が経ったことになるわけです。

ブログを書く。というより、私が「ものを書く」ことをし始め、ここまで続けてきた理由を改めて考えてみると、自分の考えや感想を整理し、そこに至った経緯を形にするのが好きだからだと思っています。

ただ、最近はちょっとブログを書くうえで窮屈に感じている部分もあり、書くことが義務になっていた節もあったんですよね。それだけが更新頻度が低い理由という訳でもないんですが、今回感想を書いて行く『書く習慣』を読んだことで、自分自身を見直せたと言いますか、改めて初心に帰り、ブログを書きたいという気持ちになったので、お礼の気持ちも込めて今回は感想を書いていこうと思います。

感想

書くことは楽しい。書き方ではなく書く習慣を身に付ける方法

今回感想を書いていく『書く習慣』は、巷に溢れているような「書き方」の本ではありません。文章表現と言った書き方について説くのではなく、それ以前の問題、「書くことを習慣化する方法」について書かれた本となっています。

とは言え、習慣化といっても、カリキュラムを提示して読者に強制するような固っ苦しい本ではありません。ものを書くことは難しくない。書くことは楽しい。長年文章を書いて来た著者のそうした想いに触れることで、自分も書いてみようかな、という気持ちになってしまう、良い意味で緩めの本となっています。

書き方を云々せずとも、苦手意識さえなくなれば、文章を書くことに対して身構えずに軽い気持ちで筆を執れるようになる。文才がなくても、文法が無茶苦茶でも、自分にとっての「正解」が書ければ書くことが楽しくなる。それが「書く習慣」への近道となっていくわけです。

このように、本書はどちらかといえば書くことに対して苦手意識のある人へ向けられた本となっています。文章を書いてみたい人に対して、文章を書くメリットや効用、習慣化を助ける心持ちやテクニックを提示し、書く習慣に繋がるアドバイスをしているのが本書の特徴でしょう。

例えば、日常で感じた何気ない気持ちを言葉にしてみたり、隙間時間を書く時間に当ててみたり、Twitterを活用してみたり。紹介されている習慣化するコツは様々で、読めばきっとものを書くことへのモチベが湧いてくるはずです。

対象の読者層から外れてはいてもタメになる一冊

ただ、私自身は先にも書いた通り長年ブログを書き続けており、曲がりなりにも書くことが習慣化(というには不定期過ぎる更新頻度ではあるものの)していますし、ものを書くことについて特段苦手意識もありません。

そのため、私はこの本が対象としている読者層からは少し外れていると思います。しかし私はこの本を読んで得るものがありましたし、柄にもなく感動してしまいました。なぜかと言えば、この本は習慣化のコツを教えるだけでなく、「ものを書く」ことについて大切なことを思い出させてくれる一冊でもあるからです。

初心に帰ったとでも言いましょうか、憑き物が落ちたと言いましょうか。この本を読んだことで、文章を書くことの基本を思い出せたんですよね。というのも、私は自分なりの書き方を持っており、自分自身好き勝手書いているつもりではありましたが、一方でどこか自分自身に嘘をついてしまっていることにも自覚的だったわけです。

ブログを書く上での悩みと気づき

ここ最近、ブログを書くうえで二つほど悩みがありました。それは、自分を曝け出すことへの躊躇いと、読み手(検索エンジン含む)の視線を意識し過ぎているがために、伸び伸びと文章を書けないでいたことです。

この二つは表裏一体の関係にありまして、結局は私の自意識が過剰であることに由来しています。自分を曝け出して変に思われはしないか、(そんなものあるわけないのに)自分のイメージを損なわないか。そして、人から見て格好良く、体裁良く書けているのかどうか、と。

これについては私が意識し過ぎている気もしますが、余程自分に自信があるか、あるいは他者に興味がないでもない限り、ブログを書いている人であれば、少なからずこうした悩みを経験したことがあると思います。

しかし本書には、そうした悩みに刺さる言葉がいくつも書かれています。

例えば、

・飾り気のない言葉に「自分らしさ」が滲み出る。

・本音を晒すほどリアルでオリジナルな文章になる。

・「いい感じのまとめ」が文章をつまらなくする。

などなど。

確かに、人のブログを読んでいる時などは小綺麗にまとまった文章よりも、自分の気持ちや体験を前面に押し出した文章の方が読んでいて楽しいですし、大量生産されたような形式の感想ブログは読まずにブラウザバックすることなんてざらです。

また、本音で語られた文章が読み手に響くことも紛れもない事実。収まりを意識し過ぎたり、自分がどう見えているかを気にするくらいなら、自分らしく書いた方が自分にとっても読み手に取っても良いのかなと思ったりしました。

もちろん、人目を気にして文章を書くことは時に重要です。自分本位の文章が過ぎれば人は読んでくれませんし、ブログという形で衆目に晒す以上、読んで貰うことを求めているのですから、読んで貰えなくては本末転倒でしょう。

実際、読者を意識した文章の重要性については本書でも度々触れられていますし、それは重々承知しています。しかしそれ以上に、自分を抑えてまで文章を書くことに意味があるのか、自分の書きたい文章とはこんなものだったのか、そこに本音はあるのか、と、改めて文章を書く初心を思い出せたのはこの本のお陰でした。

これをきっかけにブログの書きぶりに何か劇的な変化が起きるとは思いませんが、読者の目を気にしつつ、今後も自分らしく楽しんで書き続けられればと思います。……しばらくは葛藤続きでしょうけどね。

文章を書くのは苦手だけど、書き方の習慣を身に付けたい、という方はもちろん、改めて文章を書くことについて、自分自身を見つめ直したいという方にもこの本はお勧めですので、興味のある方は是非ご一読を。個人的にはめちゃくちゃためになる本でした。

おわりに

というわけで、今回はいしかわゆきさんの『書く習慣』をだしに、私自身のブログに関する個人的な悩みと今後の展望についてちょろっと語ってしまいました。

十年一昔とは言いますが、改めて言葉にしてみると、よくもまあここまでブログを書き続けてきたものだと我ながら思ってしまいます。大それたことを成したわけではなくとも、中々に感慨深いものがありますし、趣味として緩く続けてはいきたいですね。

まあ何かが変わるわけではありませんが、今後ともお付き合いいただければ幸いです。

ちなみに、本書の中には「誰かに読んでもらえる」文章を目指す工夫として、中学生に伝わるかどうかを意識することが挙げられています。頭ではわかっていながら偉そうに小難しい言葉を使いたがるのは私の悪癖でもあるんですが、それはさておき、その難しい言葉の例として、著者は「俯瞰」という言葉を挙げています。

なんでも、著者は中学2年生の時に、ライトノベルで読んだこの言葉を無駄に使いたくなってしまったことがあるのだとか。難しい言葉の話はここでは置いておいて、個人的にこのライトノベル奈須きのこさんの『空の境界』じゃないか、と思っているんですが、どうでしょうか。

そのものずばり「俯瞰風景」というタイトルの章がありますし、あの文章や世界観は読めば誰しも真似してみたくなる厨二感満載でしたし。余談ですが、私を含め、あの世代が真似しがち文体御三家は、西尾維新奈須きのこ乙一だと勝手に思っています。

と、最後は随分と脱線してしまいましたが今回はこの辺で。

ではでは。

▶書く習慣
▶著者:いしかわゆき
▶ブックデザイン:金澤浩二
▶カバー・本文イラスト:芦野公平
▶図版制作:長田周平
▶発行所:クロスメディア・パブリッシング
▶発行日:2021年9月1日初版発行