たぶん個人的な詩情

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【映画感想】『ロスト・ワールド』(1925/68分版)――すべてはここから始まった。恐竜映画の原点にしてストップモーションの先駆的作品。

はじめに

記憶にある限りの一番古い将来の夢は古生物学者で、小学校の卒業文集にもそんなことを書いた記憶があります。きっかけは幼稚園の友達の家にあった恐竜図鑑。その流れでスピルバーグの『ジュラシック・パーク』を観て、古生物学者と言う仕事を知り、発掘作業してみたさの安直な気持ちで、将来の夢として掲げていた覚えがあります。

結局、中学・高校と歳を重ねるにつれて興味関心は生物よりも人間に移り変わってしまうのですが、未だにその手のニュースには目がないですし、テレビで恐竜特集があればついつい見てしまうくらいには恐竜が好きです。

そんな恐竜好きの子ども、しかも本を読むのも好きな子どもが、小学生の頃に出会った一冊の本。それこそが青い鳥文庫から出ていた『失われた世界』でした。

コナン・ドイルと言えばシャーロック・ホームズだった自分にとって、この作品の存在はかなりの驚きでした。そして、恐竜の描かれた表紙に胸を躍らせ頁を捲った遠い日の記憶。読んだのは大分前のため詳細はあんまり覚えていないものの、かなり楽しい作品だったことだけは覚えています。

本日はそんな『失われた世界』を原作とした映画『ロスト・ワールド』の感想です。アマプラにあったので観てみましたが、内容はもとより、色々と気付きもあって面白かったです。また、二十年ほど前に読んだ本の内容と言うこともあり、とても懐かしい気持ちになりました。

あらすじ

新聞記者の青年マローンは、友人の冒険家・ロクストン卿と共にチャレンジャー教授の講演へ足を運ぶ。チャレンジャー教授は大衆の哄笑もものともせず、アマゾンの奥地に未だ恐竜が生息していること、その事実を証明するために探検隊の発足を宣言する。

婚約者に良いところを見せるため、探検隊への同行を申し出るマローン。チャレンジャー教授、ロクストン卿らに加え、行方不明となっている父を探すためにポーラ・ホワイトも探検隊へと加わることになる。

彼らは失われた世界へと辿り着き、ポーラの父を助け出すことができるのか…。

感想

上でも書いた通り、原作小説の内容はあんまり覚えておらず、印象に残っているシーンは要所要所であるものの、かなりうろ覚え。

それでも、チャレンジャー教授とそのライバル関係にあったサマリー教授の印象は強く残っています。結構好きなキャラクターだったこともあり、続編の「毒ガス帯」でも登場した時は、テンション上がりましたね。

しかし残念ながら、この映画版で彼にスポットライトが当たることはありません。サマリー教授に限らず、全体的に原作のダイジェストのような作りになっているので、ストーリーはかなーりあっさりめ。

ただこれ、調べてみるとオリジナルのフィルムがないために、現存しているフィルムで再構成した結果のようです。アマプラで見られるのは68分版。元々は100分はあったようなのでかなりの削減具合です。

とは言え、女性の隊員が加わったり、謎の敵対的猿人が登場したりする映画版の大筋は見れるので、大きなズレはなかったりするのかなと思います。

大きなところでは、マローンと婚約者・グラディスのくだりが丸々カットされているのが変更点なのかなと。一応、100分として再構成されたものは既にあるらしく、音楽や字幕はありませんが、Wikipediaに動画はあるので気になる方はぜひ。

ただ、海外ではこのバージョンのディスク化もしているみたいなので、ぜひとも日本版も販売していただきたいところです。

ja.wikipedia.org

正直言って、68分版だとストーリー的に物足りなさを感じはするのですが、この映画が当時与えた衝撃、恐竜と言うスペクタクルは今でも感じることができます。

ちょうど百年前にこれを観た人たちは、『ジュラシック・パーク』でブラキオサウルスが登場した時のような興奮を感じたのではないでしょうか。実際、ウィリス・オブライエンによるストップモーションは当時としては確実に斬新でしたし、これが『キングコング』やハリーハウゼンに繋がると考えると、歴史的な意義でも重要なのは言うまでもありません。

そのアニメーション関連で言えば、個人的にはブロントサウルスが息をし、腹が動く様子には驚きました。それぐらい、恐竜の息づかいが感じられます。また映画『ジュラシック・パーク』でトリケラトプスのお腹が動く様子は、このシーンのオマージュなのではないかと勘繰ってしまいました。

オマージュと言えば、ラストで街を恐竜が闊歩し暴れまわる様は、同じ名を冠する『ロストワールド / ジュラシック・パーク』で、Tレックスが暴れ回るラストに繋がっているのかなと。

そもそも、公開時のポスターから想像し得るラストを描いたのが、スピルバーグ(もといマイケル・クライトンの)『ロスト・ワールド』だったのかも知れません。

また、役者の面で言うと、個人的にチャレンジャー教授とマローンは原作のイメージにぴったりで、すごく良かったです。

なお、64分版では作中にシューベルトピアノ三重奏曲第2番が結構な頻度で使われているんですよね。


www.youtube.com

映画の内容に即していたかはさておき、『バリー・リンドン』でも印象的に使われているということもあり、個人的にはテンション上がりました。

おわりに

ちなみに、作中で登場する竜脚類のことをブロントサウルスと読んでいて、時代だなあと感じていたのですが、調べてみると、どうも近年ではブロントサウルスはアパトサウルスとは別種だったのでは、という研究も進んでいるそう。

natgeo.nikkeibp.co.jp

これは恥ずかしながらまったく知らなかった情報で、日進月歩、恐竜研究も進んでいることを強く感じました。趣味とは言え、追える限りしっかりと情報は追っていこうと決意を新たにしたところで今回はこの辺で。

ではでは。


▶ロスト・ワールド / The Lost World(1925 / アメリカ)
▶監督:ハリー・O・ホワイト
▶脚本:マリオン・フェファックス
▶原作:コナン・ドイル『失われた世界』
▶製作:アール・ハドソン、ワッタースン・ロサッカー
▶特殊効果・技術監督:ウィリス・オブライエン

▶音楽:R・J・ミラー
▶撮影:アーサー・エディソン、ホーマー・スコット、デイヴ・ジェニングス
▶出演者
ポーラ・ホワイト:ベッシー・ラヴ
ジョン・ロクストン:ルイス・ストーン
チャレンジャー教授:ウォーレス・ビアリー
サマリー教授:アーサー・ホイト
エド・マローン:ロイド・ヒューズ