はじめに
先日観た映画『バンパイアハンター』に当てられて、という訳ではないですが、たまたま存在を知り、吸血鬼ものの漫画と知って読んでみたのが、今回感想を書いていく『血と灰の女王』です。
どうやら、小学館のウェブ向けプラットフォーム、マンガワンと裏サンデーで連載されている作品みたいで、既刊は23巻。第一巻の発売が2017年なので、中々の長期連載だと思います。『封神演義』なら最終巻ですからね。
なお、今回はキリが良さそうな3巻まで読んだので、若干のネタバレを含みつつ感想を書いて行きたいと思います。
なお、3月12日まで1~3巻がAmazonで無料で読めたりします。王道のバトルものが好きな人なら楽しめる内容だと思うので、ぜひぜひ。
感想
王道ボーイ・ミーツ・ガール
先にも書いた通り、吸血鬼ものの漫画ということで読んでみました。
ザ・平成って感じの内容で、良い意味で見覚えのあるボーイ・ミーツ・ガール。2017年は普通に平成なので、そりゃ当たり前なんですが、時代的にはもう少し前の、ゼロ年代にガンガン系列で連載してそうな感じの雰囲気を醸し出しています。
猟奇的な事件の発生、犯人との邂逅、死と目覚め。少女との出会い。絵や演出に粗削りな部分はままあるものの、主人公の性格と同じく、真っすぐなストーリーは読んでいて気持ちが良いです。
また、急に降って湧いた形で強くなるでもなく、地道な特訓を通して強くなり、精神面でも主人公・善の変化や成長が丁寧に描かれているのも好きなポイント。
今の時代これでやって行けるのかと、お節介にも不安を感じてしまったんですが、連載も続いていて、Amazonでもしっかりと評価されている。他人事ながら安心しました。
魅力的なキャラクター
そして、そんな王道ストーリーで活躍するキャラクターたちも本作の魅力の一つです。
まず、狂気すら伴うほどの善性を持つ主人公の佐神善くん。当初は実力もなく、理想を語ることしかできなかった彼ですが、少しずつ彼の背景が描かれるにつれて、読んでいる側も周りの仲間と同様に、彼を応援したくなってきます。
もともと、この手の正義感の強いキャラクターは得意ではなかったんですが、抵抗なく受け入れられるようになったのは、歳のせいかもしれません笑
能力の片鱗を見せ始めると共に、今後はより一層、冷静な観察眼という持ち味も生きて行くと思うので、主人公らしい活躍が楽しみですね。
また、どんどんと魅力を増していくのが、仲間の一人である狩野京児。敵サイドでライバルをしていてもおかしくないようなメンタルと性格ながら、随所に見せる優しさや格好良さが魅力的。
そんな二人のボスであるドミノはビジュが良いですし、まだ明かされていない設定なども色々とありそうなので、彼女に関してはこれからがとても楽しみです。過去編とか期待。
些細な描写の巧みさ。台詞回しの巧さ。人間描写の妙
バトルなどのグロめな描写が目を惹く漫画ではありますが、個人的に着目しているのは日常の些細な描き方や、リアリティを感じる台詞回しについて。
例えば、亡くなった友人・京介とのエピソード。コンポの昔話から「親友……だったんだと思う…」までの、ふとした言葉がとても染みます。手術明けの食事が美味しかった話もそうですし、ちょっとした言葉や台詞がすごく人間らしいんですよね。
それ系だと、地味ながら印象に残っているのは、善が単独で初めて倒した鳥形の吸血鬼とのやり取り。高級なスーツに気付いてしまったがために、人間であった頃の敵の姿を思い浮かべてしまった際の描写が、とてもリアルで、人間味に溢れていて、良い意味で小市民的。これこそ善くんの、引いてはこの漫画の魅力だと思っています。
非日常の根底には日常があることをしっかりと感じられるのは、異能力バトルものにとって大切な要素です。
その他、クレタ・マルタ戦ラストのやり取りは良いシーンでしたし、ドミノと猫の話や京児と女の子の話などの番外編も、キャラクターの魅力を引き出せていてとても好きです。作者のバコハジメさんは、人を描くのが上手いんだと思います。
惜しいポイント
で、最後は良い漫画だけに感じてしまった惜しいポイントを少し。まず感じたのは、躍動感のなさ。絵の描き込みやデザインが秀逸なだけに、漫画としての「動き」が出てくると良いのになと感じてしまいます。欲を言えば、コマ割りの工夫も欲しい。
なんとなく『魔人探偵脳噛ネウロ』っぽい、のっぺりさを感じています。表情とかギャグのノリなどを見るに、影響を受けているのかも知れません。
また、ストーリー面で言えば、現時点では「吸血鬼」らしさが弱いのも個人的には消化不良ポイント。『HELLSING』ばりのことをしろとは言いませんが、今のままだとグログロ変身ヒーローバトルロイヤルなので、血を飲む以外にも「吸血鬼」らしい演出や設定が増えていくと良いなと思ったり。
まあ多分、吸血鬼要素が薄くとも続きは読んでいく気がするんですが。
おわりに
最後は少しケチを付けてしまいましたが、総じて面白い漫画だったので、続きも読んでみる予定です。実際、既に続きは買ってしまいました。
今後の展開として、個人的に気になっているのは、主人公の名前が佐「神」なところとか、家が教会であるとことろなど。あと、2000年前の、恐らくポンペイ関連の話が掘り下げられないかなと期待したりしています。
ちなみに、感想を書くために読み返していて気づいたんですが、台詞の最後に「。」があることに気付きまして、調べてみると、どうやら小学館の少年誌と青年誌の漫画には句点が付くのだとか。
小学生の頃はサンデーを結構読んでいたんですが、普通に見逃していた模様。『金色のガッシュ‼』『MÄR』『うえきの法則』…懐かしいですね。
これを書いていて思い出したんですが、『結界師』を中途半端なところで読まなくなってしまっているので、これを機に読んでみたいなと思ったところで今回はこの辺で。
ではでは。