たぶん個人的な詩情

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【読書感想】津野田興一『世界史読書案内』――高校世界史の理解を深めるブックガイド、その数90冊以上。高校生向けだが大人でもためになる世界史の道案内。

世界史読書案内 (岩波ジュニア新書)

はじめに

先日ミネルヴァ書房の『「世界史」の誕生』を読んだ。その内容はと言えば、ヨーロッパ中心のいわゆる「世界史」がいつどのように生まれ、その後根付いて行ったのかを十七世紀頃から振り返っていくものとなっている。

良い意味で地に足の着いた書きぶりは好感が持て、内容は読みごたえがあり面白く、その一方で、素人レベルの知識でも読めるくらいには分かりやすい。つまりは非常に良い本だったのだ。

今回こちらの本の感想は書かないが、これを読んで高まった歴史熱を少しでも鎮めるために読んでみたのが、今回感想を書いて行く『世界史読書案内』であった。

著者の津野田氏は高校の世界史教師であり、そもそも、この本の基となっているのは著者が授業の際に生徒へ配っていた読書案内のプリントとのことらしい。

岩波ジュニア新書であることも含め、若者向けの一冊であることは間違いないが、それは大人が読んでつまらないことを意味しない。私は「学び直し」と言う言葉が嫌いなのだが、世界史を学び直すのであれば、この本から始めても良いと思える内容だった。

その理由も含めて、この本の感想として以下気ままに感想を書いて行きたいと思う。

感想

当然ながら世界史は扱われるテーマが多く、何も知らない状態から興味の持てるテーマを見つけること自体手助けがなければ難しい。例え見つけられたとしても、その道案内となる本を探すのは意外と大変だ。

その点、この本は著者選りすぐりのテーマに即した本が数多く紹介されている。その数なんと九十冊以上。扱われるテーマや時代も幅広い。これだけあれば、歴史が嫌いでない限り、きっと興味の持てるテーマが見つかるのではないかと思う。

史書に限らない多用なジャンルの選書

この本の何よりの魅力は、扱われる本の数だけでなく、本のジャンルも幅広いことだと私は思っている。

世界史の読書案内らしく、歴史家による著作もあれば、小説家の手になる作品も紹介されている。小説一つとっても、レマルク魯迅パール・バックなど世界史自体で学ぶ作家の本があるかと思えば、エーコの『薔薇の名前』も並んでいたりする。

さらに、歴史書や小説が並んでいる中、突然生物学の本が紹介される、この混淆具合が実に良いのだ。私が世界史を好む理由の一つが、この「すべて」が繋がっている壮大さにあるのだと言うことを、改めて実感させてくれる。

選書の仕方によっては整然と見える選び方もあっただろうが、相手が「世界」である以上は、選書もこの本のように混沌としていて然るべきだと私は思う。

本の量が量だけに、一冊にあてられる紹介ページはそう多くない。ただ、著者がその本を選んだ理由がしっかりと書かれている上に、中には著者の個人的なエピソードも書かれていたりして、読者の興味を引く。

内容は紹介された本自体を読めば良いのだから、興味を持たせられたらこの本の役割は十分果たしていると言えるだろう。

読みたいテーマにきっと出会える

また、こうして多様なテーマの本の紹介を読んでみると、改めて自分がよく理解できていないテーマがあることに気付かされた。それと共に、興味関心を持っていながら、これまで踏み込んでこなかったテーマがあったことを思い出すこともできた。

例えば中国。著者が中国史を専門としていたこともあってか、本書には中国を題材としている本が数多く紹介されているのだが、私は苦手意識があったこともあり、中国については深く理解せぬままに受験を終えてしまっていたことに気付いた。特に、中華民国から現代に至る中国史の理解はかなり浅い自信がある。

その他、興味は持ちつつ放っておいてしまっていたテーマとしては、ロシア革命が挙げられる。レーニントロツキースターリン辺りは人並みに理解していても、そこに至るまでの過程などは、いまいち分かっていない。ロシアについては、今一度深く考えてみたいと思っていたので、ロシア革命をとっかかりに勉強したいと思う。

これ以外にも幅広いテーマについての本が紹介されているだけあって、きっと興味のある本に出合えるのではないだろうか。実際、この本のお陰で私はAmazonのほしいものリストに大量の本が登録されることになってしまった。

ちなみに、紹介されているものの中には、個人的にあまり響かなかった本も紹介されていたりはする。が、好みは人それぞれ。あくまで一冊目として読んでみて、そこから広げられれば良いだろう。

なお、本書の刊行が2010年と言うこともあり、ここで紹介されているのは一昔前の本ではあるが、良い本は古びないので、この本の価値も減じることはないはずだ。

今ならKindle Unlimitedに収められている。興味があればぜひ手に取って欲しいし、実はこの感想を書いている時点で、既にここで紹介されている本を読み始めている。半分ほど読み進めているが、かなり面白い。こちらの感想もいつか書いておきたい。

おわりに

この感想を書いていて、昔通っていた予備校の古文講師からお手製の読書案内をもらったことを思い出した。その先生は聞くところによると東大の哲学科を出たと言う経歴の持ち主で、何で古文の講師を務めているのか分からないのだが、兎にも角にも、最後の授業で配られた読書案内が力作と言って良い内容だったことは覚えている。

大学合格から入学までの数カ月、大学生としてここに載っている本は読んでやろうとの決意もむなしく、結局怠惰な学生生活を送ってしまったわけだが、久しぶりに引っ張り出して恩に報いたいと思う。

では、今回はこの辺で。


▶世界史読書案内
▶著者:津野田興一
▶発行所:岩波書店
▶発行日:2010年5月初版発行