たぶん個人的な詩情

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【読書】2025年読んだ本10選と読書についての総括。100冊は読めたが課題も残る一年だったという話。

はじめに

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。

2026年最初の記事は、年始らしく昨年の振り返り記事です。去年の読書全般を振り返りつつ、読んだ本の中から十冊を選び、さらっと紹介していきたいと思います。

2024年分は上半期下半期の二回に分け、計二十冊を選んでいたのですが、2025年は縛りを設ける意味も兼ねて、意識的に一年で十冊を選ぶことにしました。

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その結果、惜しくもあぶれてしまった作品がいくつもありまして、実際、ブログに感想を上げておきながら、入っていない作品も結構あったりします。

これは逆に言うと、十選に選ぶような本の感想を書けていないことを意味します。どうしても文学や哲学の感想を上手くまとめきれず、ちょっと書いてもお蔵入りになることが多いんですよね。

ただ、今年はそういったタイプの本の感想を書くことを恐れず、時間がかかっても書いていきたいところです。書かないといつになっても書けるようになりませんし。

という訳で、以下昨年の振り返りと選んだ本の感想です。

2025年の読書振り返り

昨年は計101冊、作品としては100作品を読了(上下巻の作品があったため)。年始に立てた「目的意識を持った読書百冊」については、半分達成、半分未達、といったところでしょうか(漫画は除く)。

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抱負の狙いとしては、目的意識を持って本を選び読むことで、内容をしっかりと血肉にしていこう、と言うものでした。冊数としては確かに読めているんですが、やはり未だ漫然とした読書であったように思います。

これについては、本を読む目的や、目標の設定が思うようにできなかったことが敗因だったと考えています。これは読書に限らず通底していた怠慢で、恥ずかしい話、「自分が何になりたいか」がこの歳になっても見つかっていない。

人生全般において、目的意識や目標を設定できずにいることが理由なのではないかなと思います。つまりは、未だ自分探しが上手くいっていないわけです。

こう言うとモラトリアム期の若者のようで恥ずかしい部分はあるんですが、これこそが自分に足りていない部分なのだと言う確信もあるので、その辺りも含めて、反省を込めて新年の抱負記事を書く予定です。

読書の振り返りに戻ると、今年はkindleunlimitedを通して、普段あまり読まないタイプの本を読んだ年だったと思います。

実際、読んだ百作品の内、こちらのサービスで読んだ本は、漫画を除くと49冊。一年で読んだ本の半分を占めているのは、我ながら驚きでした。

自分は基本的にこのサービスを、ビジネス書のようにかさばりそうな本や、普段は読まないジャンルの新書などを読むのに使っています。

新しい発見があるお得感のあるサービスではあるので、気になっている人には試して欲しいと思う一方で、自分が「読むべき」本から離れてしまったのは、このサービスの存在が理由として大きかった気もしています。

貧乏性ゆえか、何冊読んでも価格が変わらないのであれば、もったいないの精神でアンリミテッドの本を積極的に読んでしまうわけです。

とは言え、年間の半分をアンリミテッドで読んでおきながら、以下で紹介する読んだ本十選の内、アンリミテッド本は一冊しか入っていないのも事実。

普段触れないジャンルの本や、評判の本などに触れる手段としては有効ですが、もったいない精神で本を読みまくるのはやめたいと思います。

2025年10選

ここからは、昨年読んだ本から十冊を選び、軽く紹介と感想を書いていきたいたいと思います。なお、ランキング形式ではなく、あくまでこれは読んだ順番。そして選んだのは私が昨年読んだ本の中から十選で、昨年刊行された本と言うわけではありません。

年始に発売される『SFが読みたい!』では、毎年作家や翻訳家、評論家や編集者などによるベストが公開されています。全部の作品は読めていないにせよ、ベストを選べるくらいには読めていると言うのは、本当にすごいことですよね。

話題の本も外さずに読み、いつしかその手のランキングは書いてみたいと思いつつ、以下2025年十選です。

『真理のメタファーとしての光』

ドイツの哲学者、ハンス・ブルーメンベルクの哲学書。たまたま書名に惹かれて読んでみたところ、これがとても面白かったです。

とは言え、十選に選んでおきながら、内容はほとんど覚えていません。そもそも読んだ時ですら理解し切れていない有様だったので、それもまた仕方がない気もしています。

一応説明すると、西洋における「光」のメタファーの変遷を追う「真理のメタファーとしての光」と、コペルニクス的転回に伴い、人間中心となった世界観について扱った「コペルニクス的転回と宇宙における人間の位置づけ」の二編が収められています。

最初に読んだ本がこの本である辺り、読書へのやる気の漲りが感じ取れます。

『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』

かつてマイクロソフトプログラマーとして働いていた中村聡氏によるビジネス書。主に時間術について書かれており、表題通り「仕事が終わらない」人は一読の価値ありだと思います。

自分が特に肝に銘じたいと思ったのは、締め切り間際に仕事を終わらせようとする「ラストスパート志向」は避けるべきと言う話。それをしないために、著者がどのように仕事に取り組んでいるかも書かれており、個人的に納得感のある一冊でした。

昨年の初め頃に読んだのですが、仕事について反省なども見えてきた今読めば、得られるものも増えていきそうだと思っています。ちなみに、こちらの本が唯一のキンドルアンリミテッド本。手元において起きたいので、これは買いたいと思います。

『トウモロコシ畑の子供たち』

モダンホラーの帝王こと、スティーヴン・キングによる短編集。1970年代、つまりは初期のキングの短編が収められており、表題の短編は映画『チルドレン・オブ・ザ・コーン』の原作にもなっていたりします。

詳しい感想は以下の記事を読んでいただくとして、怖さはもちろんのこと、ブラックユーモアにも溢れた作品が数多く収められており、個人的にはかなり当たりの短編集。

個人的に好きな短編は、知人に紹介された会社と契約した男が、法外の方法で喫煙を管理されるようになる「禁煙挫折者救済有限会社」と、延命治療に苦しむ母を見守る息子の一人称で語られる「312号室の女」。

共にホラーと言う感じではなく、前者は『笑ゥせぇるすまん』や『世にも奇妙な物語』のようなブラックユーモアに溢れた短編で、後者は、誰しもが向き合うことになるかもしれない親の死を題材とした文学的な短編。この短編集だけでも、キングの多才さが遺憾なく発揮されているように思います。

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ヴェニスに死す』

映画の影響もあってか、タイトルだけが独り歩きしている気がしなくもないトーマス・マンによる中編小説。既に名声を得て久しい中年作家が、旅先のヴェニスで美少年に魅せられ、最後には死を迎える。

あらすじとしてはそれだけの作品ですが、もちろんこのあらすじでは語り切れない厚みがこの小説にはあります。常々、いわゆる「文学」とはあらすじを詳細に語られても面白みが減らない作品だと思っているのですが、この小説もまさにそんな作品です。

小説家が美に近づこうとする形而上の問題と、年端も行かない少年に翻弄される中年男性の悲哀や醜さと言う形而下の話題の面白み。実は途中まで読んでを繰り返していた作品だったので、読めて良かったです。

修道院 祈り・禁欲・労働の源流』

本書は、キリスト教修道制の父とされるアントニウスが活躍した4世紀から、修道会の発足や宗教改革を経て、第二バチカン公会議に至るまでを射程に収めた、修道院初学者にはありがたい一冊となっています。

詳しい感想は下記の記事で読んでいただくとして、受験世界史ではカバーしきれていなかった各修道院ごとの特色や発展の経緯が新書形式で読めるのはとても良いです。

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ちなみに、今は年末に発売されたエーコの『薔薇の名前』を読んでいるんですが、この本を読んでいたお陰で理解が進んでいる部分が大いにあります。ベネディクト会やフランチェスコ会の立ち位置、当時の清貧に対するキリスト教会の反応などは、この本を読んでいなければ理解できずに読み進めていたことでしょう。

『新版 障害者の経済学』

慶応大学商学部教授による、障害者を取り巻く環境について、経済学の観点から切り込んだ一冊。

仕事柄、この手の問題にも関わっていたりするので、本書で著者が語る問題点は他人事に感じられず、考えさせられる点が多々ありました。こちらの新版自体、2018年刊行と時間は経ってしまっていますが、未だに示唆に富んだ内容だと思います。

個人的に考えさせられたのは、障害者雇用の懸念点について。特に、特例子会社において行われる、社内の雑務を切り出す方式と、外部へ委託していた業務を任せる方式への問題点の指摘はまさにその通りで、未だに根本的な解決がなされていない辺り、難しい問題だと感じます。

『サド侯爵夫人・わが友ヒットラー

三島由紀夫による戯曲二編が収められている一冊。感覚的に掴みやすいのは「わが友ヒットラー」ですが、後々また読み返したくなるのは確実に「サド侯爵夫人」だと思っています。

度重なる夫の不貞を知りつつ、それでも夫を許す妻・ルネ。そんな彼女が、ついに夫が釈放されるに至って、夫を見限る。この理由を、宗教的な信仰の見地から説明する三島の筆致は素晴らしく、今後何度も読むことになると感じています。

また『ヒットラー』については、男同士の友情が社会的立場によって変化していく過程が見事に描かれており、友情一般について書かれた素晴らしい戯曲だと思います。

実は三島はまともに読んでこなかったので、これを機に読んでいきたいところです。

『無名祭祀』

こちらは昨年発売された、「英雄コナン」の生みの親として知られるパルプ・フィクション作家、ロバート・E・ハワードクトゥルー神話関連作品をまとめた中短編集。

クトゥルー神話の面で言えば、奇怪な死を遂げたことで知られるフォン・ユンツトによって書かれ、「黒の書」の名でも知られる『無名祭祀書』を生み出したほか、若くして亡くなった詩人、ジャスティン・ジョフリの生みの親としても知られています。

クトゥルー神話関連作品を読んできている以上、ハワードの作品も当然読んだことはあったのですが、こうしてまとめて読んでみると、ハワードの作家性のようなものが見えてきますし、単純に面白い作品が多いことにも気付かされます。

こちらの作品については、現在別途記事を書いている最中なので、詳しくはそちらを読んでいただきたいと思います。少なくとも今月中には書き上げる予定です。

ホンキートンク・ガール』

こちらは、映画化もされたファンタジー小説、『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の作者による私立探偵もののミステリ小説。『パーシー・ジャクソン』の作者であることも、本作がシリーズの二作目であることも気づかずに読み進めたんですが、滅茶苦茶面白かったです。

舞台はテキサス。私立探偵のライセンス取得を目指すトレス・ナヴァーは、友人の頼みを受けて新進気鋭の歌手・ミランダのデモテープの行方を探すこととなる。しかし、ナヴァーが見張っている中でバンドメンバーの一人が暗殺される事態となる。その結果、事件から手を引くよう各方面から忠告されるが……。

実はイカした表紙に惹かれて図書館で借りて読んでいたんですが、読み終わった後思わず手元に置いておきたいと思い、ネットで購入してしまいました。斜に構えた優男風でありながら義理堅く、ちょっとセンチな探偵見習、トレス・ナヴァーの語りが魅力的な作品です。こちらの作品の感想については、別途記事を書いてみたいと思っています。

イースター菌』

ワセダミステリクラブ出身の作家・式貴士氏による短編集。表題作の「イースター菌」は、露店で売られていたモアイ像の置物が巨大化し、人々がパニックに陥ると言う謎短編となっています。

このような調子で、結構ぶっ飛んだ(誉め言葉)作品が多数収められており、そもそもSF小説なのかすらもよく分かりません。が、面白いです。雰囲気としては、筒井康隆さんや清水義範さんが近いのかなと思います。

こちらも、別個で記事を書きたいと思っているので感想はこの辺で。ちなみに、こちらの本は昨年の神田古本まつりにて購入した一冊となっています。

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おわりに

百一冊の本を読めたとは言え、先に触れた神田古本まつりはもちろん、ブックオフのセールでも本を買い込んだ2025年。キンドルアンリミテッドで読んだ本が半分を占めたことからも分かるように、積読が減る気配のない一年でありました。

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これは例年のことではありますが、いつまでも増やすばかりと言うのもあれなので、増やしつつも減らす努力はしていきたいところ。

思えば、時間の作り方が下手と言うか、気付けばYoutbeのショート動画を見ていたりすることが最近増えた気がします。読書の時間だけでなく、他の時間も食ってしまっているので、スマホについては、節度を持って使っていきたいですね。

また、時間を作ると言う観点で言えば、体調についてもしっかりと整えていきたいところです。これも例年のことではあるんですが、年末は特に体調を崩しがちでして、思うようにブログに取り組めずに終わってしまったのは心残りでした。

いったん本の話に戻すと、やはり易きに流れる傾向が強い一年だったと言う反省があるので、買って満足せず、労力のかかる本にも挑んでいきたいと思います。毎年反省している気もしますが…。

では、思いのほか長くなってしまったので今回はこの辺で。

改めて、本年もよろしくお願いいたします。