はじめに
かつてスコットランドやアイルランドに伝わる妖精、バンシーを題材としたB級ホラー映画『スクリーム・オブ・バンシー』の感想を書いた際に、こんなことを書いた。
B級作品群を見渡していて驚かされるのは、その多様性と新規性、つまりは如何に他作品と被らずにいられるか、皆が競い合ってアイデアを出し合っていると言うことだ。
B級映画のモンスター(敵役)割合を調べたことはないけれど、この題材で円グラフを作ると、メジャーどころのサメやヘビ、ワニやクモなどを除くと、残りは「その他」というグラフが出来てしまうのではないか。
そう考えてしまうくらい、にわかには信じがたい敵役がこの世には星の数ほど存在している。トマトもいればビーバーもいる。尻が襲い掛かってくる映画すらあるのだ。
そんな中、今回題材となっているのは、それらぶっ飛んだ題材に比べれば、出典がいくら神話だからと言っても、地に足が付いていると言えるかもしれない。ギリシア神話の有名モンスター、三つの首を持つ猛犬、ケルベロス。少なくとも、人を襲う想像はできる。
が、知名度に反して、意外と映画の題材として描かれていないことに、この映画の存在を知って初めて気付く。格好良く描けると映えそうではあるが、そこはB級映画。
アマプラにある上記のパッケージは大嘘も大嘘で、実態はトップに貼り付けてある、鼻の低いタイプの犬のビジュアルだ。このフォトショ詐欺を越えた域のパッケージはアメリカ本国のもの、らしい。
詐欺紛いの格好良さはポスターとして飾るには良いが、結局は映画の実態を反映している日本産の方が好みであることを表明したところで、以下感想を書いていく。
普通にネタバレしていくので気になる方は注意されたし。
あらすじ
フン族の王・アッティラの鎧が盗まれた。強奪を命じたのは北朝鮮の元将校。彼はアッティラが持っていたとされる軍神マルスの剣を手に入れるため、鎧に刻まれた文字からアッティラの墓の場所を探し出そうとしていたのだ。
強奪時に命を落とした学者を師とする考古学者・サマンサは、弟の命と引き換えにアッティラの墓を見つけるため、一人ルーマニアへと呼び出される。そこへ計画を阻止するためにCIAも登場し、彼女はテロリストとCIAの戦いに巻き込まれることとなる。
しかし彼らは知らなかった。マルスの剣が墓から持ち出された時、冥界の番犬・ケルベロスの封印が解かれることを――。
感想
本作は2005年にアメリカで制作されたテレビ映画らしい。ケルベロスがあまり見かけないモンスターであることは先にも触れたが、鍵を握るのがアッティラの鎧と彼が手にしたと言われるマルスの剣である辺りも非常に渋い。
ブカレストの博物館からアッティラの鎧が盗み出される。犯行は銃を携行した集団によって行われ、何やら金銭以上の目的があるらしい。
序盤も序盤ではあるが、この時点で期待値はかなーり高かった。結局、色々と尻すぼみになってしまうのは事実だが、ケルベロスとアッティラ、そしてテロリストの組み合わせだけでも見た甲斐があったと感じてしまうのは、設定大好きオタクの性か。
とは言え、(B級)映画的な盛り上がりももちろんある。
CIAの3人組と主人公の交流は(オーソドックスとは言え)見ていて気持ちが良いし、アメリカンジョークも小気味良い。三つの頭を活かしたケルベロスによる襲撃も(少ないながら)描かれている。
また、マルスの剣を手にした傭兵リーダーの豹変ぶりはただただ楽しい。銃なんてそっちのけで、剣での無双を描くのも良い。もうちょっと銃撃戦を描いてほしかった気持ちもあるにはあるが、そこはもう仕方がない。
そのほか、核を保有した北朝鮮の元将校を黒幕として採用する辺りからは2000年代の雰囲気を感じられる。無能な部下をドーベルマンで処理する悪趣味さは、ありがちとは言え牛丼的な魅力がある。
全体的にパッとしない、というか、真面目に作ったB級故の爆発力のなさは否めないのだが、アマプラで見る映画としては十分だろう。ツッコミどころは別途書くとして、個人的には設定の杜撰さよりも、ヒロインの弟の情けなさが気になってしまったことには触れておきたい。
映画の中で、オルフェウスの逸話になぞらえて、音楽でケルベロスを鎮めようとする場面がある。結局、車のラジオから激しめの音楽が流れて来て失敗してしまうのだが、ここで主人公に借金代を無心する弟が活躍するバカ展開が見たかった。
借金の理由もミュージシャン志望とかにして、現代の竪琴、ギターでケルベロスを鎮める。エレキだと馬鹿馬鹿しさに拍車がかかって尚良い。
ちなみに、ロックでゾンビを食い止めるシーンが描かれた『悪魔の毒々パーティ』というB級ゾンビ映画がある。こちらは馬鹿馬鹿しさ満載タイプのB級ゾンビ映画だが、気になる方は是非。
あとは野暮なツッコミをいくつか
ここからは野暮なツッコミを並べていくが、まず白状しておくと、私はこの映画の歴史的背景にはまったく精通していないし、英語も聞き取れない。最近よくある簡易字幕っぽいので、誤訳もあるだろう(実際あった)。
そのため、ここから書いていくツッコミは見当違いなのかもしれない。だからもし勘違いなどあれば適宜ご指摘していただくとして、まずよく分からないのが、アッティラとケルベロスの繋がりである。
作中でも語られているように、アッティラは地中から出土した剣をマルスの剣として扱い、覇道を築くための権威付けとして用いたらしい。
しかし、マルスはローマの神である。間違ってもケルベロスの属するギリシア神話の神ではない。一応、ギリシア神話において同一視されるアレスと、ケルベロスが番をする冥界の神・ハデスは交友関係があるらしい。こじつけも良いところだが、調べた限りこれくらいしか繋がりは思いつかなかった。
なお、ここの二柱に交友関係があるのは、アレスの起こす戦争が冥界の住人を増やすことに繋がるからとのことらしい。それはさておき、制作陣がちょっとした思い付きから両者を結びつけた、とかの方がまだ可能性はある気さえする。
またツッコミといえば、舞台がルーマニアであることも釈然としない。ウィキを読む限り、アッティラはカタラウヌムの戦いの後、西ローマから東ローマへと攻勢を転じようとしていたらしいので、墓の場所としてルーマニアを設定したのは分かるのだが、そうした説明もないので「なぜ?」となってしまう。
まあ、千五百年以上前の鎧に刻まれた文字が、現代の町の看板をヒントとして指し示しているような作品に「正しさ」など求めても無駄であろう。
それを言えば、墓の建設後、数百年を経て建った建造物を墓探しのヒントとして使っているところも、主人公が何の労力もかけずに鎧から墓の在り処を見つけられるなら、かつてルーマニアで勉強していた時に見つけられていたはずであろう、と言うツッコミも野暮というものに違いない。
明らかに破綻してるはずの論理でストーリーが続いていくB級映画、あまりに堂々としているために、こちらが見落としたのか聞き漏らしたのかと自信がなくなってくる。
— びねつ (@bine_tsu) January 28, 2026
おわりに
ケルベロスと聞いて連想するのは、ハリポタの『賢者の石』に登場する番犬・フラッフィーだったり、『ファイナルファンタジーⅦ』のスピンオフだったり、遊戯王のストラクに入っていた《魔導獣ケルベロス》というカードだったりする。
こういう連想や思い付きについて書くのは、感想記事としては極めて無駄だと思っているのだけれど、私が私として感想を書いている以上、その辺りに触れないと私の感想にはならない気がして、こんなことを書いている。
気付けば新年が始まりひと月が経ってしまった。やっつけ仕事の感は否めないが、書かないよりは書いた方が良いと思い書き上げた。
実は、年末年始に読んでいた本の感想がまとまらず、ブログに時間をかけた割に、結局更新と言う形に繋がらなかった。もう少しでまとまりそうなので、2月はちゃんと感想を上げていきたい所存。
また、今年の抱負も記録として残しておきたい気持ちもある。やりたいことはたくさんある。このブログ以外で、やり残していることもたくさん。
時間が足りないという他責の気持ちと、時間を作れていないだけという自責の念の板挟みはいつ解消できるのか。有意義に朝の時間を使いたいと思いつつ、三日坊主で断念してはギリギリの時間に起きる生活へと逆戻り。
上手い時間の作り方を見つけたい。そのためにはまず体力だろうか……。
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