はじめに
本を読むことは楽しい。小難しい理由など存在せず、ただただ楽しい。この単純な事実を思い出させてくれるから、私はこの本が好きだ。
この心地良さは、ある意味で自分の普段の行い(=読書)を肯定してくれている気がするからなのかもしれない。読書は基本的に孤独な営みだが、特に読書仲間などいない私のような人間にとって、本を読んでいることは一人孤独な壁打ちに近い。
だから、こうして読書している人間が他にもいることが感じられると嬉しいし、読書をしても良いんだと、安心する。そんなこともあって、読書について語られた本には自然と手が伸びてしまうのかもしれない。
そして、この本はそんな本の中でも、図抜けて面白い。それはひとえに著者の人間性が前面に出ている一冊だからだと思う。一般化した普遍的な内容ではなく、これは岡崎氏による、本と読書についての本なのだ。
感想
読書論らしいタイトルではあるし、紹介文でもそう書かれているが、この本は読書論というにはあまりに自由奔放だ。体系的に書かれているわけでもないから、論というのも違う気がする。だが、だからこそ良いのだ。
共感して膝を打ちなくなるような一節もあれば、なるほどと感心させられるアイデアもある。中には、私とは相容れない部分もあった。
しかし、本の読み方や本との接し方は十人十色、千差万別。本や読書についての考え方は人それぞれあるのだから、これで良いのだ。
とは言え、割合いとしては共感する部分が多分にあった。例えば「なぜ人は本を読むのか。また、読まなければならないのか」という問いに対しての回答はこうだ。
本を読むのを日々の習慣としてきた私にしてみれば、いちいち理屈づけするのが面倒なわけだ。
まさにその通り。習慣と化している行為に対して理屈で考えるのは面倒だし、どうしても後付けの理由になってしまう。
が、著者はそこで自分の意見で述べて終わりにするのではなく、様々な読書人の言葉を引きながら、読書の効能について語っていく。この本の中では、多種多様な本が引用され、紹介されるのだが、これもまたこの本の魅力の一つだ。
読書好きあるあるだと勝手に認定している習慣の一つに、本の中に登場した書物が知らない作品だった場合、取り敢えずメモっておく、というのがあると思っている。
本から本へ繋がって広がっていく感覚はとても楽しく、何物にも代えがたい。世の中にはまだまだ知らない本がある。その事実に圧倒され、まだ読めていないことに悔しさを感じ、同時にワクワクもしてくる。読んでやるぞ、と。
そんなこともあって、この本を読んでいるとついつい他の本を読みたくなってくるのだが、著者自身、こんなことを書いている。
読んでいる最中に、無性に別の本が読みたくなる――これが読書について書かれた本としてはベストで、もしそんな気持ちになったら、いつでも途中で放り出して、別の本を読みはじめてくださってけっこうだ。
この意味で、本書は読書について書かれた本としてはベストであろう。だが、目移りする前に、一気に読んでしまうに違いない。それほど、この本は読みやすく面白い。
この調子で引用と感想を書いていったら、時間がいくらあっても足りないのでこのぐらいにするが、積読(本書では「ツン読」)や、読書における「チューニング」(この表現は小説家・保坂和志氏による)についての考え方は、面白く共感しつつ読んだことには触れておきたい。その他、ブ(ブックオフの略)に関する話も共感しきりであった。
また、参考になった部分も多い。雑誌の「保管」の仕方は目から鱗であったし、本を読むための旅の勧めも、自分にはない発想で良かった。思えば、これまで一人旅なんてことをしたことがなかったので、是非ともこれを機に読書旅を計画してみたいと思う。
おわりに
感想を書いている内から、積んでいる本に目が行き、手を伸ばしたい衝動に駆られているので、今日の感想はこれぐらいにしたい。折角の三連休なのだから、本を読みたい。
最後に、この本には「男の顔は読書がつくる」と題して、読書を積み重ねることで良い顔が作られる、という話が書かれている。これは多分その通りで、本を読んでいる人には独特の風格が生まれると思う。
別に顔を良くしたくて本を読んでいるわけではないが、知性が滲み出ているような良い男になっていたい気持ちがないわけではない。歳を重ねた時、本を読んで来たと外面内面共に自信を持てるよう、今日からまた一層本を読んでいきたいと思う。
▶読書の腕前
▶著者:岡崎武志
▶発行所:光文社
▶発行日:2007年3月20日初版第1刷発行

