はじめに
久しぶりにゴテゴテのB級映画を観た。思えば子供の時分、B級映画はある意味で高嶺の花だった。これらの映画は、レンタルビデオショップに並んだとしても、旧作落ちする前に店の棚から消えていく*1。
新作や準新作を何作も借りられるほど、お金に余裕はなかった。もちろん、DVDを買い漁るほどの財力もない。部屋にテレビもなかったので、家のリビングでB級映画を観るというのも、恥ずかしいものがあった。理解のない家族ではなかったが、思春期男子学生の心は複雑なのだ。
だからこそ、今こうしてアマプラで気軽に気兼ねなく、財布も気にせずに観られる環境は素晴らしい。恐らく、ネット配信とSNS全盛の今こそが、B級映画最盛期なのではなかろうか。
手軽にバズれる環境と、バズった作品を簡単に消費できる、大B級時代。
今回は、そんな粗製乱造が著しいB級映画の中でも、個人的に見どころのあると感じた映画『プラネット・オブ・ピッグ 豚の惑星』の感想を書いていく。
アマプラでも絶賛配信中なので、興味のある方は是非とも観て欲しいが、出来に対する文句は受け付けないのでその点はご注意を。
あらすじ
第3次大戦後、人類は豚と人間を交配し生み出された生物兵器・マズルによって窮地に陥っていた。豚人間に家畜として支配され、今や食糧と化してしまっていたのだ。
ロブ・ジャスティスは、荒廃した世界で豚人間を狩る凄腕の賞金稼ぎ。彼はレジスタンスから、”マザー”と呼ばれる豚人間の母たる存在の殺しを依頼される。
長らく不通だった姉のラクシャと共に、ロブはマザー殺しに着手する。果たして二人はマザーを殺し、人類を解放することができるのか。カザフスタン・ブルガリア合作のエログロナンセンスB級アクション映画。
感想
結論から言うと、本作は素晴らしい映画だった。
どういう経緯でこの映画が撮られることとなったかは不明だが、この映画はすごい。カザフスタンとブルガリアの合作という時点で、世情に疎い身からするとまず意味が分からないが、内容も意味が分からない(誉め言葉)。
豚人間を狩るポストアポカリプスものというのは仮の姿。色んな意味でクソでバカな映画であり、シュールな笑いも人を選ぶ。万人には絶対に勧められない。だが、自分は大好きな映画だ。エログロナンセンス。途中から、何を見せられているのか分からなくなるのだが、それでも楽しい。
予算は多くなさそうなものの、アクション映画として見せたい画や演出があることは強く伝わってくる。センスも悪くない。普通に格好良くもある。人類が家畜として食用に堕していることを表すアニメーションなどは、個人的に大好きなポイントだ。
また、家畜としてぶくぶくと肥えさせられ、豚と立場が逆転した人類の姿は、非常にグロテスクであり、センスを感じざるを得ない。
そして露骨な馬鹿カットの数々。主人公の因縁の存在・ラファエルがカメラに映る度に披露される謎演出は、繰り返されることで変な笑いを生み出す。室内なのに風に靡く長髪。戦闘中に強調される股間。馬鹿馬鹿しいにも程がある。が、楽しい。
所かまわずヤりまくるエロ要素などは、ありがたみもないほど多量にあるが、結末を考えれば必要な要素だろう。
内容と共に賛否両論ありそうな結末について、ネタバレに触れず語るならば、私はあれが嫌いではない。むしろ、この映画はあのラストがあってこそ完成したとさえ思う。
ある種の悲しみを含んだラストは、人によっては金返せレベルのものだとも思うが、あの喪失感と鬱屈とした夢の終わりは、個人的に大好きな展開だ。
おわりに
ちなみに、あの手のオチは海外もののホラーゲームなどでよく見かける。恐らく海外のクリエイターは、フィクショナルな世界を理由もなしに生み出すことを苦手としているのだと勝手に思っている。空想の世界を手っ取り早く担保するために、彼らの取れる道がアレなのだろう。
もちろん、この映画においてはそうした主義主張や傾向とは別に、あの結末を選んだことは間違いない。ロブはどうなったのか。この後どうなるのか。それはある意味で私たちに委ねられていると言っても良い。