たぶん個人的な詩情

本や映画の感想、TRPGとか。

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読書-小説-怪奇・ホラー

【読書感想】雪富千晶紀『ブルシャーク』――富士山麓にシャーク鳴く。トライアスロン開催が迫る中、巨大ザメが湖に潜むとの情報が・・・。【サメ企画⑥】

はじめに 夏と言えばサメ。サメと言えば夏。サメは冬の季語のようですが、これは恐らく食材としてのサメ由来なのでしょう。やはり、サメが人を襲うフィクションにおいて、海水浴場とサメの組み合わせに勝るものはありません。 それもこれも、すべては『ジョ…

【読書感想】『恐怖の誕生パーティ』――偽りに彩られた夫の過去を知った時、幸せな結婚生活が崩れ始める。ヒトコワ系サスペンスホラー。

はじめに 先日のある日のこと、たまたま寄ったブックオフにて、以前より気になっていた小説を発見しました。しかも100円で。 どこでその存在を知ったのかは覚えていないものの、認知して以来、アマゾンの欲しいものリストに突っ込み、頭の片隅に残っていた本…

【読書感想】『フランケンシュタインの子供』――メアリー・シェリーの生み出した「神話」をテーマとしたアンソロジー。死体復活、自動人形、マッドサイエンティストなどなど。

はじめに 少し前になりますが、ブックオフでこちらの二冊の本を買いました。 ふと立ち寄ったブックオフにて『ラヴクラフト恐怖の宇宙史』と『フランケンシュタインの子供』を収穫。普段は100円棚縛りを己に課しているのだが、これは流石に買ってしまった。……

【読書感想】リチャード・レイモン『殺戮の〈野獣館〉』――〈野獣館〉へと挑む男を待ち受ける野獣とは。人前で好きだとは言い辛い悪趣味で最高のホラー。

はじめに 扶桑社ミステリーのホラー、『殺戮の〈野獣館〉』(以下『野獣館』)を読んだ。これは勝手な印象だが、扶桑社のホラーは他の出版社のホラーと比べ、アクの強さに定評があると思っている。ケッチャムしかり『ブッカケゾンビ』(未読)しかり。 悪趣味…

【読書感想】『黒いピラミッド』――呪いのアンクと黒い金字塔。呪いを解くべく赴くは始まりの地エジプト。

はじめに いつか「かつて存在した日本ホラー小説大賞」、などとわざわざ書かれてしまう時代が来るのかも知れない。既にこの賞がなくなって4年も経つことにふと思い至り、思わずそんなことを考えてしまった*1。 改めて歴代の受賞者を見てみると、まさに錚々…

【読書感想】森真沙子『転校生』―少し不思議な学園ホラー短編集。転校生が出くわす恐怖と百合と切なさと。

はじめに 私事ではありますが、生まれてこの方、転校を経験したことがありません。これが幸だと感じるのは、転校未経験による怖さ故か、あるいは幼少期より母から転勤族の苦労を聞かされてきたからか。何にせよ、転校が大変であることは間違いないでしょう。…

【読書感想】『暗黒神話体系クトゥルー3』――ラヴクラフト以前以後、玉石混交の作品集。「カルコサの住民」「黄の印」「暗黒のファラオの神殿」……。

はじめに いつの間にか新年を迎えてしまった今日この頃、皆さんは如何お過ごしでしょうか。自分などは文字通り寝正月と言った有様で、あまり正月らしいことは出来ておらず、やっていたことと言えば本を読むことぐらい。 しかも別に冬や正月にちなんだ本でも…

【読書感想】スティーヴン・ローズ『スペクター』――手軽さと粗さと面白さ。ファストフードのようなB級ホラーにオールディーズを添えて。

はじめに タイトルとあらすじに惹かれてスティーヴン・ローズの『スペクター』を読んだ。誤解を恐れずに書けば本作はファストフードのような小説だ。手軽に読めてなおかつ面白い。そして読み始めたら最後、味を吟味するような間は与えられず、気付けば最後ま…

【読書感想】『暗黒神話体系クトゥルー4』――初心者にもお勧めのバラエティに富んだクトゥルー神話譚。ラヴクラフト、スミス、ハワード、ダーレス、ブロック……。

はじめに クトゥルフ神話初心者にどの一冊を勧めるか。この問題については読者各人それぞれご意見をお持ちのことだと思います。私自身この問題については長年聞かれてもいないのに考えてきました。 創元推理文庫の『ラヴクラフト全集』は初版の刊行から50…

【読書感想】鈴木光司『仄暗い水の底から』――仄暗さと温かさと人間の光と影。水にまつわるホラー短編集。

暦を見れば8月も既に半分が過ぎ、気付けばお盆も終わっていた。海外においてゴーストストーリーが冬の風物詩なのに対し、日本の怪談の季節と言えば夏をおいて他にはない。下記の記事によれば「涼み芝居」と称して幽霊の出る演目を歌舞伎で上演したのが夏に…

【読書感想】『ハラサキ』――生まれ故郷へ失われた記憶を求めて。ゲーム的であることの功罪。

多種多様。角川ホラー文庫に対するイメージはまさにこの言葉に尽きます。ラノベ調の軽めのものから日本を代表する硬派なホラーまでより取り見取り。ホラー系の作品が読みたい時、取り合えず選択肢に挙がるレーベル。それが角川ホラー文庫だと思います。 で、…

【読書感想】瀬川ことび『お葬式』――恐怖と笑いは紙一重。可笑しみに溢れたホラー短編集。

笑いと恐怖の境界線は、思いのほか曖昧なのではないだろうか。そんな思い付きを裏付けるかのように、よくよく考えてみれば不思議で恐怖を伴う光景であるはずなのに、思わず笑みがこぼれてしまう、なんて状況はそう珍しいことではない。 もしかするとそれは、…

読書:クーンツ『ストーカー』――逃走の果てに、彼は何を得たのか。

クーンツ『ストーカー』を読了。誤解を恐れずに言えば、クーンツの魅力の一つは、最低限楽しませてくれることだと思っています。打率が安定していると言いますか、大きく外れることがないんですよね、これまでの経験上。 とは言え、そこまで彼の作品を読んで…

【読書感想】加門七海『祝山』――もう肝試しなんてしない。思わずそう決意を固めたくなる実話怪談風ホラー。

はじめに 海外の怪奇小説は好んで読むのに対し、国内のホラー作品はあまり読んだことがありません。食わず嫌いと言うのもありますが、それ以上に読むのが怖いと言うのが大きな理由として挙げられます。何を馬鹿なと思われるかもしれませんが、海外ものはあく…

読書:D・プレストン&L・チャイルド『レリック』――質の高いB級作品はB級なのだろうか。

たまたま手に取った本が予想以上に面白いと何だか幸せな気分になってしまう。そんなちょろさを久々に発揮させられたのが、今回感想を書いて行く『レリック』です。落差が恐いため、普段はあまり期待せず作品に臨むことにしているんですが、本作はそんな保険…

読書:エレン・ダトロウ編『ラヴクラフトの怪物たち 上』――現代作家による粒揃いのクトゥルフアンソロジー。

クトゥルフ熱の高まりにより、ちょっと前に買っていた『ラヴクラフトの怪物たち』の上巻を読了。ここ最近*1は新潮文庫でラヴクラフトが出たり、青心社からもアンソロジー*2が出たりと、この界隈が活発なようで嬉しい限りです。新紀元社はこれまでクトゥルフ…

【読書感想】コリン・ウィルソン『ロイガーの復活』――コリン・ウィルソンなのに最後まで面白い怪奇小説。

TRPGのシナリオで「ロイガー」を使いたいと思い立ち、前々から気になっていた『ロイガーの復活』を読了。ラヴクラフト風の書きぶりながらコリン・ウィルソンの持ち味がしっかりと活かされた中編で、今まで読んで来た彼の小説の中でも一、二を争うほどに面白…

読書:タニア・ハフ『ブラッド・プライス―血の召喚―』――都会の闇と女探偵とファンタジー

タニア・ハフ『ブラッド・プライス』を読了。手軽に読める本をと思い手に取った本作ですが、その予想に違わず読みやすく、気付けば一気に読んでしまいました。 ブラッド・プライス―血の召喚 (ハヤカワ文庫FT) 作者: タニアハフ,Tanya Huff,和爾桃子 出版社/…

読書:ニコラス・コンデ『サンテリア』――現代に甦った正統派怪奇小説。

ニコラス・コンデ『サンテリア』を読了。ずいぶんと前から本棚の肥やしになっていたんですが、これがよかった。とてもよかった。久しぶりに骨太の怪奇・恐怖小説を読めて新年早々幸先がいいなと思っています。 サンテリア (創元推理文庫) 作者: ニコラスコン…