たぶん個人的な詩情

本や映画の感想、TRPGとか。

たぶん個人的な詩情

MENU

【映画感想】『神様の言うとおり』――不条理系デスゲームの果てに神の子となるのは誰か。福士と神木とビー玉から目が離せない怪作。

神さまの言うとおり

はじめに

十人十色。

この四字熟語を知ったのは中学時代。出会いは、当時通っていた塾の階段。貼られていた塾のチラシに、この言葉が載っていた。教科単位で教える個別指導塾だったこともあり、最初は塾の造語かとすら思っていて、読み方も知らなかった。「じゅうにんじゅっしょく」だと思っていた。

このところ、多様な人の在り方が叫ばれるようになった。それ自体は良いことだと思うし、私自身、趣味や何やらを理由に人を判断しないようにしたいと思い、日々の生活を送っている。

しかし、認めはしても、自分と相容れない人間がこの世の中には存在する。差別は駄目だが、人は誰とでも仲良くなれるわけではない。

悪びれもせず選挙に行かないと公言する人のことはどうかと思うし、店員にタメ口をきくような人とも、価値観の違いを強く感じる。学問に対して価値を見出さない人とも話が合わない。

そして何と言っても、人知を超えたデスゲーム系作品に対して、何の含みもなく「楽しかったー!」と言えるような人間は、私からするとエイリアンだ。人として仲良くなれたとしても、趣味は合わないと断言できる。

そんな私がこの『神様の言うとおり』の感想を書いていく。

突如として教室に現れたダルマ。ダルマさんが転んでも動いてしまい、無残に死んでいく同級生たち。人知を超えたデスゲーム。それが『神様の言うとおり』だ。

漫画原作だということも後で知ったので、原作と比べてどうこうと言うこともできないし、正直言って気持ちの良い感想にはならないと思う。

だからこそ、この作品を何の含みもなく「楽しかった」と感じた人は、タブを閉じるかブラウザバックするかして欲しい。それがお互いのためだと思う。願わくは、この作品に対する価値観が違ったとしても、どこかで良い出会いができることを。

あらすじ

突如として教室に現れたダルマさん。動いたものは即死。ゲームにクリアした者は、次のゲームへ。ダルマ、まねき猫、コケシ、シロクマ、マトリョーシカ…。

つまらない日常に嫌気がさしていた高校生・高畑瞬(福士蒼汰)は、幼馴染の秋元いちかと共にゲームに挑む。デスゲームの果てに、彼ら高校生を待つ者とは。

大人気コミックを実写映画化。『悪の教典』の三池崇史監督が放つ超問題作。

感想

結論から言えば、この映画はつまらない。理不尽で捻りもなく、取り合えずコミカルなお人形が司会進行をしていればデスゲームっぽくなるのだと、駄目な学習をした粗製乱造系デスゲーム作品だ。

頭脳戦もあったもんではなく、恐らくこれは「ゲーム」ですらない。

ではなぜこの映画の感想をこうして書いているのか。それは、脚本以外で面白いと思った要素が存在したからに他ならない。感想を書きたくなるシーンがあり、面白いと思ったカットがある。ただ貶したくてこの映画の感想を書いているわけではないのだ。

まず目を惹いたのは、一つ目のゲーム「だるま」における人の死にざま。血液の代わりに教室内を弾け飛ぶビー玉の演出は面白く、視覚的にとても楽しい。そしてこの演出は楽しいだけでなく、ただ血液を吹き出す以上のグロテスクさがある。ゲーム進行の妨害となっているのも面白い。

だるまで言えば、友人・サタケによる死に際のファッ〇ユーも最高のカットだ。あの瞬間に彼の頭の良さが現れている。彼はあの一瞬で言外のルールに気付き、出来得る限りの仕返しをしたのだ。地上最高のファ〇クユー。

また個人的に最高だったのは、翔子が瞬に惹かれるきっかけとなった屋上のシーン。自殺を考え思い悩む翔子に、何を言うでもなく彼は「悪事」を勧める。

まず青春の一幕としてとても良いし、何より、彼女を後ろから見守る福士蒼汰の顔が良いのだ。美形だとかそういうことではなく、とても悪そうな顔なのが良い。

福士蒼汰のことは、この映画を観る前からもちろん知っていた。テレビで見かけたこともある。ただ、正直言えば顔が良くて演技の下手な俳優という印象しかなかった。しかし、あの表情で彼へのイメージが大きく変わった。

彼は悪い人間なのだ。

彼の人となりを私は知らないが、たぶんきっと性格が悪い。邪悪とかではなく、人並みに性格が悪い。誤解して欲しくないが、これは悪口などではない。役者にとって、自分の味があることはきっと強みになる。

正統派の良いイケメンではなく、性格の悪い男。

この先、彼が役者として花開くかは分からない。今の彼の活躍も知らない。けれど、彼には光るものがある。それを感じられただけで、この映画は観る価値があった。

また、演技という点で言えば、神木隆之介に触れない訳には行かないだろう。実はもったいなくて『るろうに剣心』は観れていないのだけど、予告映像などで観た瀬田宗次郎は彼のはまり役だと思えた。福士蒼汰とは逆に、彼はまっすぐで「純粋」だ。瀬田宗次郎はもちろんのこと、本作の天谷武もある意味では純粋だと言って良い。

天谷がはまり役かは分からないが、彼の演技を観て、取り合えずこの映画を最後まで見てみるか、と言う気持ちになった。彼がいなければ、この2時間近くの映画を観るのは苦行だったであろう。

同じく三池崇史監督の『妖怪大戦争』と、『探偵学園Q』の頃から彼のことは知っているが、子役という殻を破り、彼は役者として素晴らしい存在になっている。たぶんきっと、この先も素晴らしいものを見せてくれるに違いない。

福士蒼汰神木隆之介。奇しくも同い年の二人。この二人の存在だけでも本作を観た甲斐はあったし、そう思えるだけこの映画は良い映画だと思う。何も語れない映画の、何と多いことか。

おわりに

久しぶりに「毒」を吐いた。このブログでは気分に合わせて文体を変えている。偉そうに書き殴りたくなる作品もある。今回はそういう気分だった。

きっと文体を揃えた方が読み手側からすれば読みやすいし、リピーターも付きやすいのだとは思う。文体を変えるにしても、もう少し計画性を持って文体を変えたり、狙いを絞って変えた方が良いのだとも思う。

頭では分かっている。

ただ、結局このブログは掃きだめでチラ裏だ。そういう気持ちで、今回は思い切って感想を書いてみた。いつも以上に読み直しもせずにネットの海に垂れ流す駄文。グダグダした言葉の羅列。偉そうな見当違いの文章。それがこれだ。


▶神様の言うとおり (2014 / 日本)
▶監督:三池崇史
▶脚本:八津弘幸
▶原作:金城宗幸、藤村緋二
▶製作:市川南
▶音楽:遠藤浩二
▶撮影:北信康
▶編集:山下健治
▶出演者
高畑瞬:福士蒼汰
秋元いちか:山崎紘菜
天谷武:神木隆之介
高瀬翔子:優希美青
サタケ:染谷将太
タクミ:大森南朋
ホームレス:リリー・フランンキー
シロクマ(声):山崎努