たぶん個人的な詩情

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【映画感想】『セーヌ川の水面の下に』――パリに現れた巨大ザメと迫るトライアスロンの開催。驚くほどに硬派な社会派サメ映画【サメ企画⑤】

はじめに

実はこのブログ、昨年の4月から「サメ企画」という感想投稿企画を独自に行っております。内容は簡単。月に一本、サメに関連した作品の感想を書こうというもので、期間は12か月。つまり一年で終わる企画なわけですが、ここで「行っておりました」と書かれていないのは誤字ではなく私の怠慢ゆえ。

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4本書いたところでモチベと忙しさからストップしてしまい、文字通り当ブログのオワコンと化していたのですが、久方ぶりにテンションの上がるサメ作品と出会いましたので、満を持して「サメ企画」再開をここに宣言します。

記念すべき第5回目の作品は、巷で話題のネトフリ産のサメ映画、『セーヌ川の水面の下に』。パリオリンピックの開催が迫る中、そのプレイベントであるトライアスロン大会を前にして、セーヌ川に巨大ザメが現れる、というこの作品。出オチ感のある触れ込みに、当初はどんなもんかと思っていたんですが、どうもネットの評判が良いんですよね。


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ちょっとしたネタ枠だと思っていたら、結構まじめな作風だと聞き、俄然興味が湧いたので観てみたところこれが当たり。私が観た時点では国内ランキングも3位と、噂に違わぬ人気ぶりのようですが、実際中々面白かったです。

詳しい感想は後ほど書くとして、とりあえず見れる環境があり、気になってる人はちょっと見てみて欲しいと思います。私の場合は実家がネトフリに入っているので、実家に寄った際に母と見たんですが、こういう映画がたくさんあるのなら契約しても良いかなと思い始めました。

と、前置きはこのぐらいにして以下感想です。作品についてのネタバレもしていくので、その辺りが気になる方はご注意ください。

あらすじ

海洋学者のソフィアは、かつて夫を殺した巨大ザメ“リリス”が、今まさにセーヌ川にいると告げられる。始めは半信半疑だったソフィアだったが、サメに食い千切られた死体が発見されたことで考えを一転。海上警察と共にサメの捕獲に乗り出す。

しかし、パリオリンピックが目前に迫る中、政治家は事態を隠蔽。さらには環境活動家の少女も独自にサメの保護に乗り出し……。笑いなしのフランス産社会派サメ映画。

感想

まず始めにこの映画、個人的にはかなりの当たりでした。気になる点はあるものの、抑えるべきところはしっかり抑えた上質のサメ映画だと思います。サメであることに意味を持たせつつ、サメに甘えていない点が良かったですね。

実際、サメ映画と言うよりは、サメを扱った普通の映画とみて良いでしょう。映像も綺麗で甘えがなく、役者の演技も良い。パニック映画としての盛り上がりもちゃんとありますし、ホラー的な演出もしっかりしています。

全体的にだれると言うか、ちょっと盛り上がりが単調な嫌いは確かにありますが、それを差し引いても素晴らしい作品です。大まかな感想はこれぐらいにして、以下本作を3つの要素に分けて書いてみたいと思います。

B級ではないA級サメ映画。サメに甘えることなかれ

まず一つ目の好きな点は、本作が真面目に作られた映画だということ。サメ映画であることに甘えた映画は数多くあり、私自身、そうした馬鹿馬鹿しいB級サメ映画は大好物ですが、そういう作品が多いからこそ、本作のような真面目な作風が輝くわけです。

この映画がサメ映画ではなく、サメを扱った映画だと書いた理由はここにあります。全体的に、良い意味で地に足がついているんですよね。脚本や役者の演技がちゃんとしているのはもちろん、カット割りや演出も、ちゃんとホラーの定石に則っていて、ホラーとしての気概を感じるのも好きなポイントです。

冒頭、海中でサメと遭遇するシークエンスに始まり、セーヌ川で目撃されるサメの影など、かなりホラーしています。登場人物が水中にいる時、常に不安を感じてしまうのは、私が水の中に苦手意識を持っていることだけが原因ではないでしょう。

ちなみに、ホラーだけでなく、パニック映画らしいサメのド派手なアクションもしっかりと抑えているのは流石という他なく、これまでのテイストから一転、怒涛の「サメ映画」に切り替わる様はただただ見事です。

まさかの社会派要素。新感覚サメ映画

二つ目は、サメ映画にしっかりと社会派要素を織り込んだこと。産業廃棄物の影響で突然変異するB級サメ映画は数多くあれど、環境問題について正面から取り上げた作品はあまりないのではないでしょうか。

冒頭で映る網に絡まって死んだクジラの死体や、海洋生物が乱獲される映像は、映像が美しいだけにとても印象的です。

そして、社会的なメッセージを残しつつ、説教臭さくなり過ぎていないのも嬉しいポイント。エンタメであることを邪魔しないのは精神衛生上とてもよく、強いメッセージを語らせた上で、小気味よく環境活動家を退場させる手腕は上手いですよね。

また、パリがサメに覆われるエンディングでは、水面にゴミなどを浮かべることでオープニングと結び付け、改めて視聴者の頭に環境問題を浮かび上がらせます。印象的なエンドロールでは、環境変動の結果として、主要都市がサメの支配下に置かれる様が暗に示されるのも面白かったです。

ちなみに、我らが東京もそんな都市の一つとして取り上げられているのは、悲しいことではありますが、ちょっと嬉しかったです。後述しますが、この映画にはここ以外でも妙な日本要素がいくつかありましたよね。

映像美。パリの景観とサメの美しさ

最後の三つ目は本作の映像美。ネトフリの資金の成せる業か、終始映像が綺麗で鮮やかだったのは本作の魅力の一つでしょう。

まずはリリスを追跡するために訪れた海。海洋を漂うゴミの数々、網に囚われ死んだクジラ、海を泳ぐサメの群れなど、すべてが綺麗で、自ずとこの映画への期待が高まったことを覚えています。こりゃただの「サメ映画」ではないな、と。

そして、物語の中心となるパリの美しさも触れないわけにはいきません。実際にロケをしたのか、はたまた合成か、あるいはセットなのかは不明ですが、違和感なくパリの街並みを描くことに成功しています。

映像美とは少し逸れますが、今現在のパリの街並みって、思い返すとあまり見たことがなかったんですよね。この映画のお陰でちょっとした観光気分を味わえました。

また、美しくもあり恐ろしくもあったのは、カタコンベとそこを泳ぐサメの美しさ。頭上を見上げた際に、視界を覆うほどのサメの群れが描かれた際の衝撃は素晴らしかったです。ラスト、水没したパリの街並みとサメの群れのカットも、状況の絶望感も相まって、とても美しい映像だったと思います。

その他、触れておきたいこと

まず、露見したセーヌ川でのサメ被害第一号であるホームレスの男性について。多くの方は、犬の飼い主としての彼が亡くなったことにショックを受けると思うんですが、それと同じくらい、読書好きの人間が死んだことへのショックが私にはありました。

本読みあるあるとして、読書好きのキャラクター好きになりがち。あると思います。

次に、上でも触れましたが、本作の謎の日本趣味について。日本びいきの人のことをフランス語では「タタミゼ」などと言うらしいですが、主人公のソフィアが自室でラムネを飲んでいたり、ミカの仲間がランドセルを背負っていたり、市長の部屋に日本画風の絵がかかっていたりと、本作からも中々に日本びいきを感じました。

最後は、サメの子どもからサメが生まれる点について。この驚異的なサメから恐るべきサメの子供が生まれる描写は、状況はちょっと違うものの、以前感想を書いたサメ小説『メガロドン』を思い出しました。ちなみにこちらは、ジェイソン・ステイサム主演のサメ映画『MEG ザ・モンスター』(未見)の原作だったりします。

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おわりに

と言うわけで、久しぶりのサメ企画は『セーヌ川の水面の下に』の感想でした。少し乗り遅れた感じはするものの、自分としては早めに流行に乗れた方だと思います。

ちなみに、フランス産のサメ映画は初めて見ましたが、来月は我らが日本産のサメ映画も公開されますね。


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予告を見る限り、『温泉シャーク』は『セーヌ川』とは打って変わってB級感ましましですが、こちらはこちらで楽しみにしています。上映館が少ないのと、恐らく上映期間も短いと思うので、忘れないようにしたいですね。

では、今回はこの辺で。次回はホラー小説の感想になるかと思います。


セーヌ川の水面の下に / Sous la Seine (2024 / フランス)
▶監督:サヴィエ・ジャン
▶脚本:サヴィエ・ジャン、ヤニック・ダアン、モード・ハイヴァン
▶出演者
ソフィア:ベレニス・ベジョ
アディル:ナシム・リエス
ミカ:レア・レヴィアン
市長:アンヌ・マリヴァン