はじめに
怪獣大国たる日本。恐らく、日本に住んでいてゴジラのことを知らない人はいないと思いますし、敵役であるキングギドラやガイガンならまだしも、モスラを知らない人もそうそういないはず。
とは言え、モスラが『ゴジラ』シリーズとは別枠で生み出された怪獣であることを知っている人は、途端に少なくなるのではないでしょうか。ラドンもそうですが、それぞれ『モスラ』と『空の大怪獣ラドン』という映画にて、ゴジラとは別に製作された怪獣だったりします。
と、偉そうに語ってはいるものの、実は私も知識としては知っていながら、平成モスラを含めて、モスラ単体の映画を観たことはありませんでした。ちなみに『ラドン』も観たことはありません。
そんな中、たまたまアマプラに『モスラ』があることを発見。しかも視聴期限がもうすぐ切れるということで、早速観てみることに。
そんな軽い気持ちで見始めたんですが、これがとても面白かったです。ストーリーはファミリー向けの親しみやすい内容となっており、特撮も手が込んでいて迫力満点。その他、個人的には世相を反映したなどにも面白さを感じました。
今回は、その辺りを中心に感想を書いていきたいと思います。
あらすじ
水爆実験により放射能に汚染された南太平洋の無人島・インファント島。嵐により島に漂着した貨物船の乗組員の安否が心配される中、彼らは放射能による被害をまったく受けていなかった。そして生還者の口からは、原住民の存在が語られる。
島を統治するロリシカ国は急遽調査隊の派遣を決定。調査隊を組織したネルソンは、調査隊の意思に反し、島で発見した双子の小人(小美人)を力づくで連れ去ってしまう。
小美人を金儲けの道具として使うネルソン。そして彼を止めようとする調査隊の言語学者・中條と新聞記者・福田。しかし、彼らは知らなかった。小美人の歌声に導かれ、インファント島より「モスラ」が東京へと近づいていることを……。
感想
怪獣映画の転換点としての『モスラ』
なんとまあ面白い作品でした。まず何と言ってもこの映画は観やすい。まさに人々が考えるファミリー向けの怪獣映画といった内容になっていて、初代『ゴジラ』にあったような重々しさや悲哀がありません。水爆実験への批判といった要素は同様に描かれるものの、あくまで子どもが家族と見られる内容に仕上がっています。
演出も全体的にコミカルで、モスラによる被害は結構深刻であるにも関わらず、随所に笑える要素が仕込まれていますし、コメディアンでもあったフランキー堺氏を主演にしていることからも、陽気で楽しい作品にしようとしていたのは間違いないでしょう。人気歌手ザ・ピーナッツも出演していますし。
恐らく、家族で観に行く「楽しい」映画、と言う意味での怪獣映画のスタンダードを生み出した点で、本作は画期的なのだと思います。
怪獣映画のターニングポイントを『モスラ』とすることには当方の誤解があるかもしれませんが、少なくとも初代『ゴジラ』の系譜から、後年のミニラという怪獣が生まれることはなかったでしょう。
そして、観やすさと軌を一にする形で、怪獣が善玉として描かれるようになったのも恐らくはこの作品の発明のはず。「悪」は一個人の欲望に集約され、怪獣=モスラは小美人奪還のシステムとして機能し、恐怖や恨みの対象にはなっていません。
作中、モスラは正義も悪もわからない、と言ったことを小美人が口にしていますが、その愛らしい外見も相まって、モスラは中立と言うより悪に対置される善の存在として描かれているように感じます。
この可愛らしいデザイン、というのもモスラの凄さであるように思います。
他方、もちろん『ゴジラ』に通ずるメッセージ性がないわけではありません。平和への願いが語られる他、インファント島に対するネルソンのやり口からは、植民地支配の構造が見え隠れしますし、小美人への扱いとそれに対する批判からは、人権意識が感じ取れます。
しかし、そうした「政治」は上手くコーティングされ、厭味ったらしく前面に出ることはありません。あくまで、子どもでも楽しめるストーリーラインを邪魔しないのです。
特撮の「すごさ」と、怪獣以外でも飽きさせない工夫
と、『モスラ』への誰もが口にできるような「分析」はこれくらいにして、以降は私が個人的に「すごい」と「なるほど」と感じた点について。
まず「すごい」と思わず唸ってしまったのは、本作の特撮技術です。中でも、モスラがダムに現れた際の、ダムがひび割れ水が漏れ、決壊するまでの一連の映像は質感が凄まじく、カラーであることも含めて、『ゴジラ』からの進化が感じられます。
この時点で、モスラの本格的な活躍についても期待が持てる訳ですが、実際、モスラが東京の町を破壊する様も素晴らしく見応えがあり、迫力があります。
ゴジラのような二足歩行の怪獣に比べて、高さの低いモスラ(幼虫)だからこその迫力と言えば良いのでしょうか。どアップで収められる幼虫の巨体と、轢き壊される建造物群。比較対象がビルではなく、普段見慣れた二階建て程度の建物であることが、スケール感の分かりやすさに繋がり、本作の迫力に一役買っているはずです。モスラのどアップと壊される建物のために、スクリーンでこそ観てみたい作品です。
そして、幼虫から成虫へと羽化することで、一度で二度美味しいのもこの作品の良いところ。風圧で建物や車両、人々が吹き飛ばされる際のミニチュアの細かさが何とも素晴らしい。ニューカークシティの出来栄えについては少し見劣りの感はありますが、こちらはどうも予算の関係で十分に作り込めなかったのが原因のようです。
その他、モスラと対峙する戦車の動きにも驚いてしまいました。特に、後退する時の動きが滑らかで素早く、砲弾を放った後の反動も細かい。ラジコンの類だと思いますが、あの当時に随分と精巧で精緻な小道具を作れたものだと驚いてしまいます。今でさえそうなのだから、当時の人々はきっと度肝を抜かれたのではないでしょうか。
それにしても、モスラが孵化するのが映画開始から四十五分ほど。モスラが成虫となるのはラスト二十分を切ってからと、結構なスローペースだとは思うのですが、それを感じさせないのは、きっとドラマ部分の面白さがあるからでしょう。
怪獣ではなく、興行師クラーク・ネルソンが悪役を担うことで、怪獣がおらずともドラマ部分のメリハリが保てているのだと思います。また、小美人の歌声やパフォーマンスも映像的に面白く見飽きないですし、志村喬氏を始めとする名優が脇を固めているのも映画をだれさせない要因だと思います。
マスコミの扱いから感じる「なるほど」
そして、当時の世相を感じて「なるほど」となったのは、マスコミの扱いと、正義は我にありと言った形の発言についてです。
本作にて、学者である中條とタッグを組むのはフランキー堺氏が演じる新聞記者の福田善一郎。取材禁止の現場に潜入した際には、「国民が知りたがっている」ということを理由に取材を断行します。
その後も、写真を嫌う学者・中條の写真を何とかカメラに収めようとするなど、コミカルではありますが、報道のために我を通す姿が描かれます。
当時の感覚は分かりませんが、現代の感覚からするとマスコミの横暴とも捉えられ兼ねない演出だと、個人的には思ってしまうんですよね。
しかし、これも戦後の雰囲気が残る時代故のものなのでしょう。検閲が行われてた戦時中から、政府による。実際、調査隊への取材同行が認められない際には、時代を理由に不満を述べる記者の姿が描かれています。
もちろん、この姿勢が当時としても全面的に「正しい」わけではなかったはずです。小美人について福田は報告をしないことを選び、視聴者に人情味を見せます。このことからも、行き過ぎた報道は道義的に「正しい」ものではなかったのでしょう。
とは言え、マスコミを主人公に据え、このような姿を描いていることからも、政府と相対する報道側に、国民が肩入れしていた時代であったのは間違いないと思います。今だとマスコミは非難される側として描かれがちな気がするので、時代の変化を感じて面白かったです。こうした時代の雰囲気の違いを感じられるのも、古い日本の映画を見る醍醐味かもしれません。
おわりに
と、今回は長年観てみたかった『モスラ』の感想となりました。東宝の特撮映画は死ぬまでにある程度観ておきたい気持ちはあるので、この機会に観れて良かったです。
余談ですが、私のゴジラシリーズの知識は子どもの頃に買ってもらった『超全集』なる本によって培われたものとなっており、実は観た気になっている作品が結構あったりします。
有名どころの『ヘドラ』や『ビオランテ』も観たことないので、少しずつ観ていきたいところです。結構、アマプラに入っているみたいですし。
ここ最近は体調崩したりして思うようにブログの更新が出来ていなかったので、三月は何とかペースを上げていきたいと思います。ではでは。
▶モスラ(1961 / 日本)
▶監督:本多猪四郎
▶特技監督:円谷英二
▶脚本:関沢新一
▶原作:中村真一郎、福永武彦、堀田善衛
▶製作:田中友幸
▶音楽:古関裕而
▶撮影:小泉一(本編)、有川貞昌(特撮)
▶編集:平一二
▶出演者
福田善一郎:フランキー堺
中條信一:小泉博
花村ミチ:香川京子
小美人:ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)
クラーク・ネルソン:ジェリー・伊藤
原田博士:上原謙
天野貞勝(社会部デスク):志村喬

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