はじめに
ここ最近ブログを書く手が止まっていまして、その理由については前回の記事を読んでみて欲しいんですが(大した理由ではない)、そもそもの話、あくまで趣味のブログである以上、無理して更新などする必要はぶっちゃけないんですよね。
と、いつもなら無理して更新することなく放置してしまう中、今月はそうも言っていられない事情がありまして、というのも、5月の終わりが刻一刻と迫っているのに、未だ今月の「サメ企画」が投稿できていないのです。
サメ企画というのは、私が個人的に企画した月一企画のこと。詳しくは下記の記事を読めば分かるので詳細は省きますが、端的に言えば月に一本、ジャンルを問わずサメをテーマとした作品の感想を書くという企画になっています。
記念すべき第一回は、現代に蘇った古代鮫メガロドンを扱ったパニック小説、『メガロドン』だったわけですが、それから一か月以上が経過し、ネタ探しもままならない中でなんとか見つけて来たのは、大絶賛の前回とは打って変わり、人には勧め辛いことこのうえないZ級サメ映画『シャーコーン』。
世にも珍しい正統派ホラー風(?)サメ映画である本作、正直人によっては見向きもしないタイプの作品ではあるものの、決して無理して感想を書くのではなく、個人的に面白いと思ったので感想を書くことにしました。この手の映画が苦手でない人は是非お付き合いしてください。
あらすじ
とある田舎町のトウモロコシ畑で殺人事件が発生し、殺害現場の畑ではホホジロザメの目撃情報が相次いでいた。時を同じくして、サメの顎を凶器に使う連続殺人鬼が逮捕されるが、これら全ての事件の背後にはサメを神と崇める邪教集団の陰謀が渦巻いていた。果たして人類は最終鮫戦争<サメマゲドン>を阻止し、邪教徒の野望を打ち破ることができるのか…!?(配給元サイトより引用)
感想
こちらの予告編を見て貰えば分かる通り、本作は安心安定の「サメ映画」であって、紛れもないクソ映画に他なりません。ホームメード感溢れる映像やツッコミ所満載の脚本といったクオリティの低さだけならまだしも、サメ映画にしては地味に長い1時間45分の拘束は人を選ぶこと間違いなし。
正直お勧めはしませんし、余程時間を持て余しているか、サメ映画フリークか、はたまた大切な人を人質に取られてでもいない限り観る必要はないでしょう。そんな客観的な評価がお世辞にも高いとは言えないこの映画、最初にも書いた通り、個人的に嫌いになれない類の映画でして、結構見所があるとも思っているんですよね。
私がこの映画で注目したいのは、本作かが前面に押し出しているギャグやコメディと言った笑いの部分ではなく、意外にも正統派な作りをしているホラー風の脚本についてです。
町に迫るモロコシ鮫の恐怖。暗躍するのは、サメの神の復活のために殺人を犯すカルト教団。迫る終末に備えるため、彼らはサメ人間への進化を目指し行動を起こします。舞台に目を移せば、古くは埋葬地だったという町の名はお誂え向きのドルイド・ヒルズ。これは本作のサメがロレンチーニ器官を通じてストーンヘンジとコンタクトを取れることを考えれば意味深長と言えるでしょう(本編では深掘りされないけれど)。
カルト団体の信者が自らの信仰する神を蘇らせようと画策する。クトゥルフ神話TRPGなどでお馴染みであり、ホラーのテンプレとも言えるあらすじではありますが、これがサメ映画となると話は別です。
つまり、私が注目したいのはこの映画の脚本自体と言うよりかは、サメ映画に正統派のホラーの構成を組み込んだアイデアの部分についてとなります。確かにサメ映画がパニック映画として生まれた以上、ホラー映画との親和性は高く、実際、ホラー的な演出もサメ映画を観る醍醐味の一つと言えるでしょう。
ただしそれは恐怖演出の親和性であって、両者のストーリーは似て非なるものとなりがちです。特に、ホラーでよく見られるような人為的な悪意、それも複数人の集団の悪意とサメが密接に結びついているというのはとても珍しいように思います。基本的にサメ映画におけるサメは、偶発的な事象や現象の脅威として描かれるからです。
制作陣は本作をホラーではなくコメディとして生み出しましたが、制作費さえあればちょっと硬派なサメ映画に成り得た気もしますし、もしかすると、ここに正統派ホラー✕サメという新たなサメ映画の地平が切り開かれたのかも知れません。もしかすると私が無知なだけでその手の作品は既にあるのかも知れませんが……。
ちなみに、本作のトウモロコシ部分の元ネタは映画化もされたスティーブン・キングの短編「トウモロコシ畑の子どもたち」*1だと思われます。
ただし読んでいないので定かではありませんが、あらすじは似て非なるものですし、どうしてこの作品をオマージュしたのかは正直不明です。その謎を探るためにも、前々から読んでみたい作品だったのでこれを機に読んでみようかと思います。
あとオマージュと言えば、本作からサメ映画の始祖である『ジョーズ』のオマージュを強く感じたのも印象に残っています。姓がシャイダーの警察署長や、収穫の利益を優先して畑の封鎖を承服しない市長などはまさしく、といった感じで笑ってしまいました。
おわりに
というわけでZ級サメ映画『シャーコーン』の感想でした。人に勧めるのは憚られる映画でありながら、どこか憎めない作品であるというのはサメ映画にとって最高の特徴でしょう。実際、この手のホラー風味が強いサメ映画というのは新鮮で、もし私がスピルバーグならリメイク権を買って制作に乗り出すんですが……。
そんな妄言はさておき、上記で触れた以外にも本作の馬鹿馬鹿しい部分や謎のサメ女神・チチマトゥルについてもっと語ってみたい部分はあったものの、ちょっと物理的な時間がなくなってきたので今回は省略することとします。
6月まで二時間を切る中、何とか5月のサメ企画も終わらせられそうで安心しております。ではでは。
▶シャーコーン! 呪いのモロコシ鮫 / Sharks of the Corn (2021 / アメリカ)
▶監督:ティム・リッター
▶出演者
シャノン・ストッキン
フォード・ウィンスター
スティーブ・グイン
ケイシー・ミラクル
アル・ニコロージ
トーマス・キンドラー
レベッカ・ラインハート
ビリー・ブラックウェル
ゾーイ・ブッシュ
ジェイソン・ボイド
トリッシュ・エリクソン・マーティン
トッド・マーティン / 他
*1:原題は“Children of the Corn”。本作の原題は“Sharks of the Corn”。