はじめに
先日、池袋のシネマ・ロサにて『松島トモ子 サメ遊戯』を観てきました。アカデミー賞にてオスカーを4つも獲得した、かの『アノーラ』を観た帰り道、ふとⅩで舞台挨拶があること、そして席も残りわずかだということを知り、勢いで席を予約。
『アノーラ』観た帰り道に『松島トモ子 サメ遊戯』の座席を予約するの、我ながら寒暖差エグくて風邪引きそう(普通に外が寒いだけとも言う)
— びねつ (@bine_tsu) April 4, 2025
まあすごい映画でした。
まだ公開中なのでネタバレには配慮しつつ、感想を書いて行きたいと思います。
あらすじ
インタビューを終え気を失った松島トモ子が目を覚ますと、謎の空間に閉じ込められていた。ドアを叩いても、叫んでも誰も来ない。目の前にあったサイコロを振ると、別の空間に移動。そしてトモ子は若返っていた。更に突如として現れたサメがトモ子に襲いかかる。果たして、トモ子はこの無限地獄から脱出できるのか……!
感想
まず、サメ映画の主演に大女優・松島トモ子を配する発想がすごい。狂気すれすれの天才を感じます。常人なら、たとえ思いついても、行動には移さない。実行に移してしまう行動力と運。きっと、川崎実監督にはそれらがあるのでしょう。
サメに襲われ、闘うタレントは誰がいいのか? わたしは、松島トモ子さんしかないと思った。かつてライオンとヒョウに襲われ、奇跡の生還を果たしたミネラル麦茶のレジェンド女優こそふさわしい*1。
作品自体は観たことないながら、川崎実監督の名前はもちろん知っていました。けれども、まさかこれほどまでとは、想像だにしていませんでした。
実際、口が裂けてもこの映画を人には勧めらません。出演者のファンならまだしも、これをただ映画として観ることを、私は勧めません。
ただ、だからこそ、この映画は良い映画だと思います。
こんなものがあって良いのか(誉め言葉)と、この作品が存在していることに感謝を捧げ、自然と世界の懐の深さに思いを馳せてしまうのです。
松島トモ子と昭和へのリスペクト
まず、松島トモ子さんを最大限を活かしているのがこの映画のポイント。ライオンとヒョウの逸話だけでなく、いろんな要素を引っ張ってきて、サメと松島トモ子の夢の競演を作り上げています。
そして松島さんだけでなく、昭和への郷愁というかリスペクトというか楽屋落ちというか、そんなものに溢れているのも本作の見所の一つ。
素人目にも分かるウルトラマンのオープニングのオマージュ。昭和を思い起こさせるタレントの起用とネタの連発。それが観る者の笑いを誘います。
これはサメ映画であると同時に、昭和を残そうとする試みだと私は感じました。昭和を思い返すための道しるべ。それこそがこの映画の本質なんだと思います。
同じ世代を生きた人であれば、昭和の懐かしさに浸り昔を懐かしめる。そして、昭和を直接知らない世代であっても、元ネタを調べてみたりするきっかけとなる。
サメ映画であることは、正直言ってこの映画の本質ではありません。ただ、サメ映画であることが、この映画の間口を広めることに一役買うことは事実。
松島トモ子、ひいては昭和を広め残すための手段として、サメ映画であることは非常に重要だと思います。笑えるおバカ映画である一方で、哀愁みたいなものをこの映画から感じてしまうのは、どこかそのような要素があるからかもしれません。
サメ映画としての魅力
さて、この映画がサメである必要はないと書きました。とは言え、この映画はもともと川崎監督が「サメポリー」というサメ版モノポリーのプロモーションを頼まれスタートした企画です。
ゆえに、サメを使うために作られた映画なのは間違いなく、そのサメを最大限に活かそうとした結果、選ばれたのが松島トモ子さんという訳です。
この采配が天才的であることは先にも述べましたが、実際この映画では、サメが海の捕食者であることに着目。松島トモ子と謎のマリアージュを起こしています。
と言うのも、ネタバレになるので詳細は避けますが、サメが松島さんを狙っていた理由がまさにそんな感じで、個人的にツボにはまり、思わず笑ってしまったんですよね。
頂点捕食者としての意地、プライドがサメを突き動かしたというか何というか。ライオンとヒョウに並ぶ「格」を考えれば、サメを持ってきたのは大正解だと思います
その他、サメ映画としての見所を語るとすれば、兎に角サメの着ぐるみが良いです。豪華な内装を駆け回る、二足歩行のサメ。バリエーションも豊富で飽きが来ず、光沢のある質感は意外にも格好良いんですよね。
ちなみに、舞台挨拶のぐんぴぃさんの話では、撮影中に何度も足が取れたりするなどのアクシデントがあったらしいです。
なお余談ですが、パンフレットによれば、こちらのサメはソフビ人形の発売も決まっているとのこと。値段と出来栄え次第ですが、ソフビ映えしそうな質感なので、普通に欲しいと思ってしまいました。
その他あれこれ
その他、ぐんぴぃさんの熱演や、妙に頭に残る主題歌「おんな鮫追節」、謎に迫力のあるBGM、ジョシュ・バーネットや戸松遥さんの出演など、語りたいことは山ほどあります。
ただ、本読みとして特に触れておきたいのは、岩井志麻子さんの怪演について。これにはほんと度肝を抜かれました。
川崎実監督作品に出演されていることをを知らなかったこともあり、予告の時点で驚いてはいたものの、本編での活躍も凄すぎました。岩井さんについては、ベテラン作家というイメージが強かったので余計に。
岩井さんは、舞台挨拶での活躍もすごく、サービス精神旺盛だったのが印象的です。
また、舞台挨拶で印象に残った内容は以下の通り。
・本作は受け入れる力が試される。川崎監督作品の中でもすごい作品(意訳)
・ぐんぴぃの出演は尺稼ぎ
・松島さんが襲われた際に、スタッフに渡されたバファリンが効いた
・サメ映画デビューに最適な作品(賛否両論)
・なぜぐんぴぃが童貞なのか楽屋で問い詰める岩井さん
なお、DVDの一般販売もされると聞きますが、この映画は是非とも劇場に足を運んで観て欲しいです。劇場で観客が漏らす笑い声があってこそ、この映画は完成するはず。
上映期間も少なくなってきていると思うので、ぜひぜひ。
おわりに
というわけで、『松島トモコ サメ遊戯』の感想でした。先にも書いた通り、万人にお勧めはできませんが、少しでも興味を持ったのなら是非見ていただきたい怪作です。
なお、しれっとサメ企画の第7弾としていることからも分かる通り、サメ企画を忘れているわけではないのです。ただ、思うようにネタが思いつかないのです。
※サメ企画なるものの詳細は下記記事参照
サメについてはまた自分のペースで記事を書いて行くとして、冒頭でも書いた通り、『アノーラ』も観ているのでそちらの感想も書きたいところ。
その他、映画館で観た映画もあったりしますし、感想を書きたい本も溜まってきていたりします。ブログモチベは高いので、また他の記事でもお会いできれば幸いです。
ではでは。
▶松島トモ子 サメ遊戯 / GAME OF SHARK (2024 / 日本)
▶監督:川崎実
▶脚本:小野峻志、川崎実
▶製作:喜多宗則、高橋信之
▶製作総指揮:加瀬林亮
▶音楽:月見朝生
▶撮影:佐々木雅史
▶主題歌:「おんな鮫追節」作詞:川崎実 作曲・編曲:月見朝生 歌:永野希
▶出演者
松島トモ子:松島トモ子
男:岩井ジョニ男
海の男:ゆうぞう
チロル:輪湖チロル
戸松遥:戸松遥
ぐんぴぃ:ぐんぴぃ
ヒョウ:岩井志麻子
サメ・ライオン:谷口洋行
ジョシュ・バーネット:ジョシュ・バーネット
ヤングトモ子:木下彩音
*1:パンフレットより引用