たぶん個人的な詩情

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【映画感想】『エクスクロス 魔境伝説』―― 寒村を訪れた女子大生に迫る魔の手。ホラーの皮を被ったガールズアクションの怪作。

エクスクロス 魔境伝説

はじめに

ここのところジェネレーションギャップを感じる機会が頓に増えた。先日もYoutube か何かのコメント欄で「『絶対防衛レヴィアタン*1の頃から早見沙織さんを知ってるけど」との少々香ばしいコメントを見かけた。

思いがけないところで『レヴィアタン』の名前を見かけ頬が緩むのを感じつつ、一方でそれではマウントは取れないだろう、と逆マウントを取りかけはたと気付く。よくよく考えて見れば『絶対防衛レヴィアタン』が放送していたのは2013年のこと。

つまりは当時ニコニコ動画で笑いながらコメントしていたのも今は昔の9年前。恐ろしい話だが、今となっては『レヴィアタン』でも十分マウントを取るに足るアニメとなってしまったのだ。ちなみに『まどマギ』の『叛逆』も同年の作品だと言うのだから、月日の流れの早さを感じる。

ジェネギャ繋がりでもう一つ、先日見かけたニュースがこちら。

www.sankei.com

刃物を持った男性がいるとの通報を受け警察が駆けつけたところ、男が持っていたのは刃物ではなく携帯電話、いわゆるガラケーだったというこのニュース、笑い話のようではあるが、もし万一のことがあったらと思うと恐ろしい話だし、十代の若者にとってガラケーが見慣れぬ存在になってしまったと言う点でも恐ろしい話だと思う。

ちなみに自分は高校生から携帯を持たせて貰った口なのだけど、持っていない期間が長かったからなのか、ガラケーへの憧れが人一番強い中学生だったように思う。そして数あるケータイの中でも、特にスライド式が格好良いと感じていたことを今回感想を書いて行く映画を観ていてふと思い出した。

と言う訳で、いつになく下手くそな導入となってしまいましたが、今回はケータイが重要な役割を果たすホラーアクション映画、『エクスクロス 魔境伝説』の感想です。

あらすじ

恋人の浮気に心を痛めた水野しより(松下奈緒)は、友人の火請愛子(鈴木亜美)と共に山奥の寒村・阿鹿里村を訪れる。村人の態度を不審に思いながらも、温泉を満喫するしよりと愛子だったが、些細なことから口論に発展してしまう。

愛子と別れ一人宿に戻ったしよりは、押し入れからケータイの着信音が鳴っていることに気付く。「今すぐ逃げろ!足を切り落とされるぞ!!」。物部を名乗る男が告げる村の秘密と、しよりに忍び寄る影。時を同じくして、愛子のもとにも魔の手が迫る。果たして二人は因習渦巻く村から脱出することが出来るのか――。

感想

素晴らしい映画だった、というのが嘘偽りないの本作の感想です。最初はありがちなホラー映画だと思って見始めたのに、蓋を開けて見ればゲラゲラと笑いたくなるほどの謎展開とアクションシーンの連続で、見ながら思わず膝を打ってしまいました。

本作は真っ当なホラー映画ではありません。そもそも、ホラー映画ですらないのかも知れません。人里離れた村へ旅行に来た女子大生と村に伝わる因習。突如として鳴り響く着信音と謎の男からの警告。迫り来る村人たち。これだけの素材があれば十分正統派ホラーとしてやっていけるのに、本作は予想だにしない斜め上の展開を見せつけます。

なんとこの映画は途中からアクション映画へと変貌を遂げてしまうのです。変貌という言葉が悪ければ、ホラーとアクションの両輪を回して物語が進行するわけです。二人の主人公の視点と共に章を分け、ジャンルそのものをその都度切り替える手法により、方や村人から逃げ惑うホラーパート、方や殺るか殺られるかのアクションパートが別個で展開されます。

このアクションパートにて誰が誰と戦うのかはネタバレを含むと言いますか、その衝撃的な展開を含めてのお楽しみなのでここでは触れません。が、このアクションシーンが本作の何よりの見所なのは間違いありません。好きな人ならこれだけでお釣りが来るほどのB級感。爆笑と興奮間違いなしの神展開と神演出の連続です。

確かに演出の安っぽいさはありますし、突如として挟まれるアクションのためにホラー要素が薄れ、それ目的の人だと受け入れられないかもしれません。ただ、本作がこのごった煮感を楽しむエンタメなのだと割り切れれば、きっと楽しめるはず。

こうした謎展開はもちろん原作あってこそだとは言え、そうしたハチャメチャな原作の魅力を上手く映画に落とし込んでいるのは制作陣の力量あってこそでしょう。ホラーとガールズアクションを無理やりまとめあげてしまう力業は見事と言う他ありません。

アクションシーンについて語れる範囲で語れば、泥臭い抵抗と厨二心をくすぐる殺陣が何よりの魅力となっています。面白い演出が多数あって見応えがありますし、役者の鬼気迫る演技も見どころの一つ。

アクションシーンの演技に限らず、主演を務める松下奈緒鈴木亜美は共に初々しく魅力的で、脇を固める小沢真珠池内博之の演技も素晴らしいの一言。特に小沢真珠については改めてネタバレ込みで触れたいほどに素晴らしいものがあります。またちょい役ではありますが、しょこたんこと中川翔子が出演しているのも新鮮でした。

個人的にお勧めの一作なんですが、現在アマプラでは配信が終わってしまっているため安易に勧め辛いのが悩みどころ。一応 U-NEXT では見られるようなので、興味があれば見てみて欲しいです。無料トライアルも行っているようなので是非是非。

と言う訳で、ここまではネタバレなしの感想となりました。以下ネタバレあり、と言うか、どうしても触れたい点について触れていきたいと思います。これまで以上に取りとめのない内容となりますので、ご理解のうえでお進みください。

ネタバレあり

個人的に因習渦巻く村の恐怖、的な内容のホラーは好きなんですが、本作はそうした期待を良い意味で裏切ってくれる作品でした。ここまでぶっ飛んでくれるならいっそ清々しささえあります。

ここからはネタバレを気にせず感想を書いて行くわけですが、本作のネタバレに触れるなら、小沢真珠扮する西園寺レイカの活躍に触れないわけにはいかないでしょう。ゴスロリ ✕ ハサミ ✕ メンヘラというレイカの構成要素は恐らく原作から変わっていないのでしょうが、その魅力を十二分に引き出しているのは小沢真珠の怪演あってこそ。痛々しさと可愛いらしさを塗り潰すほどの狂気を見事に演じ切っています。

彼女を中心としたアクションシーンも素晴らしく、特に火花散るトイレでのレイカの乱舞はインパクト絶大。余談ですが、このシーンを見ていて『クレヨンしんちゃん』の映画、『ブタのヒヅメ大作戦』に登場する刃物マニアの敵幹部との戦闘シーンを思い出しました。

その後の巨大鋏とチェーンソーの殺陣も、愛子が吹っ切れてから一気に面白くなり、かなり見応えがあるシーンになっていたと思います。またそんな刃物を交える殺陣のみならず、手近なアイテムを用いた攻防も面白かったです。洗剤を混ぜての反撃、それを踏まえた工事現場での傘を使った防御からの引火、それに次ぐ『仮面ライダー』の怪人もかくやと言ったレイカの爆破は笑いなしには見られません。

その後しよりが村人に取り囲まれる中、突如姿を現したレイカの姿は未開の部族もかくやと言ったワイルドさで、最後までレイカが持って行ってしまった感がありますね。もちろん、主役二人のやりとりも王道で良くはあったんですが……。

そして終盤におけるしよりの元カレである朝宮の豹変ぶりも実に面白かったです。しより個人への執着なのか、はたまた「おみ足」を介した生神様への信仰なのかは分かりませんが、下手な純愛よりも純愛していましたね。生神を求めて都会に出て理想の女性を見つけたかと思いきや、ハニトラに引っかかって危うく失いかけた朝宮。お上りさんがハニトラに引っかかったと考えると面白さがありますね。迷惑甚だしいですが。

ちなみに、フェティシズムとはフランス語の「フェティッシュ(物神、呪物)」から生じた言葉であり、元来宗教学や人類学における「物神崇拝」を意味する用語でした。これを踏まえると、朝宮の「おみ足」への執着はまさしくこの本来の意味のフェティシズムと、現代的なフェチズムとの融合と言えるのかもしれません。

あと阿鹿里村の因習とそれが生まれた理由についても、現実的かはさておき、ストーリーを邪魔しないだけの説得力はあったと思います。ミイラ化した女性を案山子にする設定とか猟奇的で良いですよね。連帯感と逃走を防ぐために左脚の健を切る設定があることで、村人との追いかけっこが無理のないものになっていたのも良かったと思います。

それと、電話口の物部昭の声が小山力也であったために、画面には日本人が出ているのに、吹き替えで洋画を見ているかのようなアンバランスさがあって面白かったです。

おわりに

今回は『エクスクロス 魔境伝説』の感想となりました。万人受けする内容ではないものの、個人的には当たりの素晴らしい作品だったと思います。ちょっと原作の方も気になったので、折を見て読んでみたいところ。面白そうですし、何より一体どのような原作であればこのような映画が出来るのか、怖いもの見たさもあるので。

と、長くなってしまいましたが今回はこの辺で。ではでは。

▶エクスクロス 魔境伝説 (2007)
▶監督:深作健太
▶脚本:大石哲也
▶原作:上甲宣之
▶撮影:小松高志
▶編集:洲崎千恵子
▶アクション監督:横山誠
▶特殊メイク・造形:原口智生
▶音楽:池頼広
▶主題歌 : Aly & AJ「こわれそうな愛の歌」
▶キャスト:
水野しより:松下奈緒
火請愛子:鈴木亜美
橘弥生:中川翔子
西園寺レイカ小沢真珠
朝宮圭一:池内博之
物部昭:岩尾望フットボールアワー
物部昭(声):小山力也

*1:GREEが提供していたソーシャルゲームのアニメ化作品。早見沙織喜多村英梨竹達彩奈花澤香菜といった有名声優をメインに起用しているとは到底思えない牧歌的な作画と緩い脚本に、当時ニコニコ動画の一部ではおかしな盛り上がりを見せていた(気がする)。お勧めはしないけど普通に好きでした。