たぶん個人的な詩情

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【映画感想】『エアフォース・ワン』――大統領vsテロリスト、機上の戦い。

大統領専用機エアフォースワン*1がテロリストによってジャックされた。犯人の要求はただ一つ。米露が共同で拘束した独裁者の解放。妻子を人質に取られ、ただ一人テロリストに立ち向かうこととなったハリソン・フォード演じる大統領は、果たして家族を救い出すことができるのか……。


エアフォース・ワン (吹き替え) - 予告編

言ってしまえば、このあらすじから想像する以上のものはないのだけれど、これがまた面白かった。ハリソン・フォード演じる大統領は格好良いし、ゲイリー・オールドマン扮するテロリストの、信念と危うさのバランスは見ていてハラハラさせられる。

映画としてのテンポは悪くないし、脚本も十分楽しめる。一定の人気が約束されたアクション映画というジャンルに胡坐をかかず、丁寧に作られているのも好印象。

例えば、ハイジャックされた機内にて、大統領がホワイトハウスに「大統領だ」と電話をかけ、受付の女性に悪戯を疑われ無碍に扱われてしまうシーン。凡庸な映画であればここで電話が切れてしまい、更なる連絡手段を模索させるところだが、本作ではちゃんと電話が繋がる。

この手の時間稼ぎや助長な演出は不満が溜まるし、百害あって一利なしだとは思うものの、意外とやってしまってる映画は多い。

また、犯人が人質に対して容赦がないのも個人的には評価ポイント。

多くの犠牲を望むわけではないが、まったくの犠牲を強いられないのもやはり緊張感に欠けるものがある。そしてこの犠牲についても、主人公の無能ゆえではないため、ヘイトが溜まらないのもいい。

とは言え、本作に対して思うところがないわけではない。

家族を愛し、家族に愛され、恐らく国民からの信頼も厚い、正義感に溢れる大統領ではあるが、彼の語る理想はあまりに脆いのだ。

力を持った国が正義を振りかざすことの危険性について、本作では最後まで触れられることはない。娯楽映画として堅苦しい部分がオミットされがちなのは分かるが、それゆえに本作の鑑賞後には一抹の不安が残る。

と、少し苦言を呈しはしたが、質のいいアクション映画であることは確かだし、普通に楽しめる作品だとは思う。実は本作、以前にも午後ローか何かでざっくりと見ていたのだけれど、カットやCMを挟まずに見た方が断然いい。

ちなみに、テロリストに解放を要求されるカ独裁者ラデクの姿には驚かされたのだが、キャストがユルゲン・プロフノフだと知り納得。作中でセリフの類は一切ないものの、この存在感は素晴らしいの一言に尽きる。

今に始まったことではないが、女優は髪型が変わると、男優は髭の有無で見分けが付かなくなるのは私だけではないはず……と願望を述べたところで、今回はこの辺で。

エアフォース・ワン [Blu-ray]

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  • 発売日: 2010/12/22
  • メディア: Blu-ray
 

エアフォース・ワン (Air Force One) / アメリカ(1997)
▶監督:ウォルフガング・ペーターゼン
▶脚本:アンドリュー・W・マーロウ
▶制作:ウォルフガング・ペーターゼン、ゲイル・カッツ、アーミアン・バーンスタイン、ジョン・シェスタック
▶制作総指揮:トーマス・A・ブリス、マーク・エイブラハム、デヴィッド・レスター
▶撮影:ミヒャエル・バルハウス
▶編集:リチャード・フランシス・ブルース
▶音楽:ジェリー・ゴールドスミス
▶キャスト:
ハリソン・フォード:ジェームズ・マーシャル大統領
ゲイリー・オールドマン:イワン・コルシュノフ
ウェンディ・クルーソン:グレース・マーシャル夫人
リーゼル・マシューズ:アリス・マーシャル
ディーン・ストックウェル:ウォルター・ディーン国防長官
ウィリアム・H・メイシー:コールドウェル少佐
ポール・ギルフォイル:ロイド・シェパード首席補佐官
グレン・クローズ:キャサリン・ベネット副大統領
ザンダー・バークレー:ギブス
ユルゲン・プロホノフ:イワン・ラデク将軍

*1:正確には、米国大統領が乗っている空軍機であれば何でもコールサインは「エアフォースワン」となる。本作ラストの台詞もそれを踏まえてのもの。