たぶん個人的な詩情

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映画:『スクリーム・オブ・バンシー~殺戮の妖精~』――現代に蘇る泣き女の恐怖。

B級映画に対して減点方式の評価を下すのはナンセンスだ。もしそんな基準を設けてしまえば、大半の映画は見終わるまでに持ち点が残っていないだろうし、かろうじて残っていたとしても、その数字から当の作品の魅力は伝わってこないだろう。

やはりこの手の映画こそ「何が嫌いかより何が好きかで語る」べきだ。と言うわけで、今回はB級ホラー映画、『スクリーム・オブ・バンシー』*1の批判ではなく、魅力を語っていこうと思う。以下の文章ではさらっとネタバレをするかも知れないし、その手の配慮をするつもりはないので注意されたし。 


スクリーム・オブ・バンシー ~殺戮の妖精~(プレビュー)

B級作品群を見渡していて驚かされるのは、その多様性と新規性、つまりは如何に他作品と被らずにいられるか、皆が競い合ってアイデアを出し合っていると言うことだ。ブルーオーシャンを求めて、日ごとに人類に牙をむき始める新たなモンスターの数々。

まさかこんなものが……と言った題材が扱われる作品の中にあって、本作で登場するバンシーは比較的まっとうなのかも知れない。それにしても、数ある伝説や伝承の中からバンシーを持ってきたと言うのは面白い。本作を観ようと思った人の多くは、これがバンシーを扱った映画だから見ているのではないだろうか。少なくとも私はそうだった。

バンシーとは、作中でも少し語られているが、アイルランドスコットランドで語り継がれる妖精の一種である。女性の姿をしていて、その泣き声が聞かれた家では近い内に死者が出ると言う。間違っても、幻覚を見せ超人的な能力で人を呪い殺す類の妖精ではない。

……のだが、それはこの際どうでもいい。製作者がバンシーだと言うのならばこれはバンシーなのだし、特殊能力持ちのゾンビ映画のように見えたとしても、これはバンシー映画なのだ。

さて、本作の素晴らしいところはニッチなバンシーを題材としていることだけではない。私がいたく感じ入ってしまったのは、そのバンシーを史実の存在であるテンプル騎士団*2と絡めることで、歴史的な背景を付与し、作品に深みを加えたことだ。

そして、場当たり的に巻き込まれた人間が化け物と対峙するのではなく、学際的な立場にある人間が封印を解いてしまい、解決を迫られるという構図も良い。主人公たちの前に立ちはだかる、バンシーの造形も味がある。箱の中に収められた醜怪な首*3も、エイリアンとプレデターを足して2で割ったような終盤の姿も悪くない。中盤、三人の登場人物が同時に危機的状況に陥ると言う演出も中々にハラハラさせられた。

とは言え、歴史的な要素については、正直言ってそれが十分に活かされていたとは言えないし、アカデミックな立場を利用して、主人公側が怪異の原因を調査するパートが薄いのも少々物足りない。度重なる夢落ちも如何なものだろうか。

ランス・ヘンリクセン演じる老学者にしても、もう少し彼を活かせなかったのかと言う不満も残るし、取って付けたような恋愛模様、立て続けに起こり過ぎる殺戮、無駄に唐突な死などなど、不満を挙げればそれこそきりがない。だがしかし、それでもこの作品が嫌いになれないのは、本作が目指した方向性にシンパシーを感じたからだし、何かしらの可能性を本作から感じたからだ。そうでもなければ、わざわざブログで感想を書いたりはしない。

ちなみに、本国でのパッケージはこちら。

シャレオツでセンスに溢れ、名作感漂うデザインではあるが、内容は間違っても名作・傑作の類ではない。だとしても、好きな人は好きだし、楽しめる人は楽しめる。今ならアマゾンプライムで見られることだし、気の迷いが起きたのなら見てもいいのではないだろうか。とは言え、それで時間を無駄にしたとしても、怒りの矛先をこちらには向けないようお願いしたい。

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▶スクリーム・オブ・バンシー (Scream of the Banshee) / アメリカ(2011)

▶監督:スティーヴン・C・ミラー

▶脚本:アンソニー・C・フェランテ

▶撮影:アンドリュー・ストレイホーン

▶音楽:ライアン・ドッドソン

▶キャスト:

モーラ・ウェラン: ローレン・ホリー

ブロデリック・ダンカン:ランス・ヘンリクセン

オットー: トッド・ヘイバーコーン

*1:原題も“Scream of the Banshee”ではあるが、片仮名表記のなんとダサいことか。

*2:12世紀に彼らがアイルランドに勢力を広げていたのか、そもそも本作で言われるtemple knightsがテンプル騎士団を指すのか、浅学な自分には分からない。

*3:≪サイカトグ≫、あるいは≪食らいつくし≫に描かれたクリーチャーのように見えて仕方がない。