たぶん個人的な詩情

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【TRPG感想】『SW2.5ショートストーリーズ 冒険者ギルドへようこそ!』――舞台はウルシラ、冒険者ギルドをフィーチャーした短編集。

ソード・ワールド2.5ショートストーリーズ 冒険者ギルドへようこそ! (富士見ドラゴンブック)

はじめに

実は先日、人生で初めてファンタジー系システムのゲームマスターをしました。これまで回したそれらしいものと言えば、以前ブログで紹介した『サンサーラ・バラッド』ぐらい。こちらは異世界転生をメインに据えた少し変則的なシステムでしたし、なによりサンプルシナリオを回した程度なのでノーカウントと言って良いでしょう。

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ほとんどが身内との経験とは言え、TRPG歴がおよそ十年近いことを考えれば、自分のことながらちょっと驚いてしまいます。ソドワやゴブスレなんかはプレイヤーとして結構遊んでいたんですが、マスターしていたのは主に『クトゥルフ』と『ダブルクロス』。

偏りの激しさを感じますが、それはさておき、今回感想を書いて行くのはソード・ワールド2.5の世界を舞台にした短編集です。ソドワも含めリプレイの類はそれなりに読んできたんですが、その手の小説はあんまり読んだことがありません。それこそダブルクロスの小説くらい。

ちなみにこちらはゲームデザイナーの矢野俊策氏自ら手掛けた小説で、『インフィニティコード』初出のDロイス、輪廻の獣(アルマ・レグナム)がフィーチャーされていたりします。興味があれば是非。現在KindleUnlimitedでも読めるようですし。

手に取った理由

と、そんな余談はさておき、なんで私が普段手に取らないタイプの本を手に取ったかと言えば、最初に書いた通り、ソドワのGMをすることになったからに他なりません。シナリオを書くにあたり、ふと「冒険者ギルドとは何ぞや」と疑問に思ってしまったんですよね。

私は設定や情報は出来うる限り集めてシナリオを作りたい派の人間でして、クトゥルフをやる時も出来るだけ登場させる神話生物の原作に目を通すタイプだったりします。そんな私が冒険者ギルドに興味を持ったからには、冒険者ギルドに焦点を当てた本短編集に目を付けるのは当然と言えば当然でしょう。

実際に今回のシナリオを作るにあたってどれくらい活かせたかは疑問ですが、アルフレイム大陸、引いてはラクシアの世界を今後作っていくうえで、参考になる知識は増やせたように思います。何より、作品としても面白かったので一石二鳥でしたね。

以下、大きなネタバレはせず感想を書いて行こうと思います。

感想

本作はソード・ワールド2.5のショートストーリー第二弾で、複数の著者が同じ設定をもとに短編を書く、いわゆるシェアードワールド的な作品集となっています。第二弾となってはいますが、話は独立しているためここからでも普通に読めますし、この本に限って言えばどの話から読んでも問題ありません。

追加データ自体は収録されていないものの、ラクシア世界における知識がコラムの形で掲載されているのは面白く、登場人物たちのゲームデータが巻末に載っているのも個人的には楽しいポイントです。本作の舞台となる冒険者ギルド<勇気の集い>の内観や設定も掲載されていて、色々と参考になる部分はあるかと思います。

ちなみに、舞台となるのはルルブ3で新たに登場したウルシラ地方。魔神との戦いの最前線だけあって、その設定を活かした短編が多く収められています。ウルシラ地方を舞台にしたいと考えているGMにとっても参考になる部分はあるかも知れません。もちろん、作品としても面白いので、気になったら是非手に取ってみて下さい。

では、以下格短編について個別の感想です。軽くネタバレはあるのでご注意ください。

「騎士と冒険者の生き様」北沢慶

突如騎士団を除名されたお人よし、サラーナ・ガンゾリックが冒険者になるまでのストーリー。冒険者と騎士の違いに焦点を当てているのが特徴で、サラーナの他に複数人の冒険者が登場したりと、キャラの顔見せ的な役割もある短編です。

ウチの卓ではあまり罠を貼って云々、みたいなプレイはしないものの、提案される可能性はちゃんと考えておく必要もあるのかなと思ったり。実際、待ち受ける側ならこうした工夫はしたくなりますよね。あと、冒険後にギルドの面々がサラーナを歓迎してくれる感じは初心に帰った気持ちになります。ああいう達成感はセッションでも大事にしたい。

「人と狐のゲーム」清松みゆき

新米冒険者サラーナが、支部長の計らいで狐のリカントであるエミールと共にスカウトの仕事を経験するお話。冒険者の依頼にも裏取りって大事だよね、ということがよく分かります。

また、足用の装飾品を複数装備する方法が描かれているのは面白かったです。まさかあのような仕様になっているとは。その他、暗視持ちのキャラが暗視を持っていないキャラに合わせたりするのも、ゲーム的なリアリティを感じますし、獣変貌で会話できなくなったりするのも、ゲームあるあるで良かったです。

「森のスープと騎士への想い」ベーテ・有理・黒崎

リルドラケンの女性・ナディアと、アルケミスト兼シューターの人間・ヌメッケがメインのお話。リルドラケンでしかも女性という、少しイメージし辛いキャラクターがフィチャーされているのはマスターとしてもプレイヤーとしても参考になる部分が多いかなと思います。ナディアのキャラクターも良いですし。

また、奈落の魔域が舞台として描かれるため、魔域を演出したいGMは参考になる部分があるかも知れません。私の場合、魔域は好きに演出して良いんだと、ある種の勇気をもらいました。

「探し屋のお仕事」北沢慶

遺跡や迷宮を探す探し屋のお仕事にサラーナが同行するお話。魔物の習性から遺跡発見に繋がる展開は良いですね。こういう仕事があってこそ、私たち冒険者は冒険が出来ているんだなあと改めて感じます。

そういえば、記憶が確かなら『2.0』の『Ⅰ』のサンプルシナリオって、探し屋から遺跡を調査するよう依頼される、みたいな感じだったと思うんですが、私の記憶違いでしょうか。思えば、あれが初めて遊んだソドワだったように思います。仲間が死にかけて、ガーゴイルから逃げ帰った遠い記憶。

「歌えなかった恋歌」秋田みやび

冒険者ギルド<勇気の集い>で働く吟遊詩人のグラスランナーの女の子のお話。本書では唯一、冒険にでることなくギルドの中で完結する内容となっています。

セッション中だと、どうしてもバードの呪歌はデータ的に処理をしがちですが、考えてみれば歌である以上、歌い手の得手不得手や好き嫌いがあるんだろうなあ、と改めて考えてしまいました。アリシャが経験のない恋愛感情を、試行錯誤して歌にしていく描写はとてもよかったです。

「贖い」川人忠明

魔神に攫われた女の子を助けるため、サラーナが頑張ろうとして、最終的に妖精使いのメルルルがすべて持って行ってしまうお話。本書の中で一番小説として面白かったのはこの作品でした。ビジュアルとか抜きにして、メルルルのちょっと冷めた感じがすごく好きです。

もちろん、奮闘するサラーナとそれを助けるナディアも良いんですが、やっぱりメルルルの格好良さが際立つ作品ですよね。語るとネタバレになりかねないので、これ以上触れませんが、あの種族とあの種族の仲が悪いというのはなるほどな、と。

「臆病者のマーチ」川端ジュン一

「森のスープと騎士への想い」で登場したナディアとヌメッケの出会いのお話。アルケミストでのデバフ戦法が人々から不評だったりするのは、ちょっと意外というか、悲しいものがありますね。あんなに金がかかっているのに、と言うのは冗談にしても、冒険者がただ依頼をこなすだけの存在ではない、ということを思い出させてくれます。

また、二人が持ち前の知識を披露し合う様子から、普段はあまり意識しないラクシアの食生活や小道具の細かい違いなんかが見えてくるのは面白かったです。あと、顔見知りってだけで気を許しちゃいけないというのは割とシビアな世界ですよね。

「未来への対価」田中公侍

タビットのミトンが、蘇生希望を出していた駆け出し冒険者の両親に、その旨を伝えに行くと言うお話。穢れのために蘇生が一筋縄ではいかないラクシア世界において、人々がどのような価値観を持っているのか窺えるのは面白いですね。

冒険者であれば可能な限り蘇生を考えるわけですが、世間的にはそうも言っていられないのがよく分かります。あと、数ある種族の中でも、タビット特有の価値観が見られるのも面白いポイントです。

「青い鳥は二度帰る」秋田みやび

エミールとアリシャが鳥の羽を取りに行く依頼主にお供する話。青盾鳥という青い鳥を中心に、鳥にまつわる文化や生態の他、エミールとアリシャのドタバタデコボコ感が楽しめるお話です。

アリシャが登場した「歌えなかった恋歌」の続きとなるエピソードで、あの世界ならこういうことは結構日常茶飯事何だろうなあ、とも思ってしまいます。二人の話を深掘りするのではなく、知らぬが仏(?)と終わらせてしまうのも逆に新鮮でした。

冒険者ギルド支部<勇気の集い>解説」北沢慶

1階から4階までが詳細に設定された資料集。長期滞在する冒険者が好きなように部屋を模様替えしたりするのはそれっぽくて良いですね。また強い風雨のみならず、魔神襲撃に際しても雨戸を用いるというのは地方色が出ていて面白いなと思いました。

これぐらい冒険者ギルドを設定して遊ぶセッションも楽しそうですよね。NPCとか内部の構造とか。ただ、GM側が練り込み過ぎるのも、それはそれで弊害があったりしそうなので、そこら辺のバランスは気を付けたいと思います。

おわりに

と言う訳で、今回は珍しいタイプの作品の感想記事でした。TRPG関連で言えば、リプレイなんかの感想は前々から書きたいと思っていましたが、まさか小説が先になるとは。

もちろん、感想記事だけでなくTRPG関連の記事は他にも書いて行きたいと思ってはいるんですよね。実卓のリプレイとかシステムの感想とか、シナリオ作成の考察とか。

特に自作リプレイは数年前から書く書く言って書けていないので、今年中に一本くらいは書き上げたいところです。ネックは、思った以上に作業に時間がかかることと、自分の声を聞くのが嫌だと言うこと。そしてこれが一番なんですが、GMした際の反省点とかが見えてくるところが嫌だったりします。もう少し良いマスタリングできたなあ、みたいな。

まあ、今後どうなるかは神のみぞ知るということで、今回はこの辺で。少なくともTRPG関連の記事は今年中にあと二本くらいはあげたいですね。では。


ソード・ワールド2.5ショートストーリーズ 冒険者ギルドへようこそ!
▶著者:北沢慶グループSNE
▶カバーイラスト:冬ゆき
▶カバーデザイン:世古口敦・前川絵莉子(coil)

▶発行所:KADOKAWA
▶発行日:2020年3月20日初版発行