たぶん個人的な詩情

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【今週のお題】寿司とお通夜と親不知。

今週のお題は「寿司」とのことなのだが、いきなり寿司と言われても、何を書けば良いのやら皆目見当が付かない。好きなネタについて書けば良いのか、あるいは良く行く回転寿司チェーンについて書けば良いのか。

と、このお題を見かけた時はそんなことを思ったのだが、お題の説明ページによれば、

「回転寿司」に「手巻き寿司」「ちらし寿司」「手こね寿司」。さまざまな「寿司」についてのエピソードや、思い出を語ってみてください。

とのこと。

なるほど、寿司にまつわるエピソード、あるいは思い出を書けばよいらしい。

だが、寿司が嫌いな日本人などはそうそういないにしても、果たして寿司のエピソードや思い出と言われて、すぐさま思い付く人がどれだけいるだろうか。

そもそも、何故にいきなり公式は寿司の話を求め始めたのだろうか。「寿司の日」と言った記念日なのかとも思ったが、寿司の日は11月1日らしい。

まあ唐突な謎お題は今に始まったことではないし、理由は何にせよ、お題が気に入ればテーマに従い記事を書く。ユーザーのやることは変わらない。

幸い、寿司については印象深い思い出もある。

それは十年ほど前のこと、祖母の通夜での一幕。

お通夜で振舞われる食事の定番と言えば寿司。その例に漏れず、その通夜の席で出された食事のメインも寿司だった。内々に開かれたお通夜だったとは言え、用意された量は十分なほどに多い。

例え通夜の席だとしても、夕飯が寿司で嬉しくないわけがない。それも目の前に広がる大量の寿司だ。祖母が亡くなったのは悲しかったけれど、お通夜ぐらいになれば当初の悲しみも退き、故人の思い出話に花を咲かせる余裕も出て来る。ちなみに経験上、出棺の際に蓋を締める時が一番心に来る。祖母の時もそうだった。

で、そんな涙が滲むこととなる前日、通夜当日のこと、今思うと何でか分からないが、私は歯医者の予約をしていた。それも親不知の抜歯だった。

担当医の腕が良かったのか、幸い痛みはほとんどなく、多少違和感があるくらい。いくつかの注意をされ、夕方頃に帰宅した。葬儀が行われるのは最寄りの駅前の葬儀場。歩いて十分もすれば着く距離のため、時間効率を考えればそのタイミングに抜歯の予定を入れるのは悪くない選択だった。

ただ、その時が初の抜歯だった私は知らなかったのだが、術後しばらくは歯ぐきから血が出る。それも結構。親不知を抜いたことのない人に説明すると、抜く際の痛み以上に術後の不快感の方が厄介だ。

勘が良くなくとも察するだろうが、その後の通夜振る舞いは悲惨な有様だった。 

言うまでもなく血液は不味い。正直言って酷い味だ。歯を磨いている時に血が滲んだって嫌な思いをする。いわんや食事をや。口内で噛むたびに交じり合う白米と血液。術後の傷口に染みる醤油。思い通りに行かない食事。脳は寿司を欲しがっていても、肉体と精神が拒絶するジレンマ。その結果会場に残される寿司の山、山、山。

それ以来、空腹を覚えた時、あるいは寿司を食べたいと思った時、ふと机に残された寿司の山、廃棄されてしまったであろう寿司の姿が脳裏をよぎる。

あの時にもっと食べておけば良かったとの思いは未だに強い。食べ物の恨みは何とやらと言うけれど、食べ物の後悔も中々に根深く残るものだ。

……以上が私の寿司エピソードとなる。

別に面白くもない話ではあるのだけれど、寿司と言うと思い出すエピソードを良い機会なので書かせてもらった。得られた教訓としては、親不知を抜いた後に食事の予定は入れないこと。もし今後親知らずを抜く予定がある方は注意されたし。

ちなみに、このエピソードが不謹慎だと言われかねないと思いはしたが、祖母と私の仲あってのエピソードだし、むしろ彼女は笑って許してくれるだろうとさえ思う。何せ寿司を見る度、間接的にとは言え祖母を思い出しているのだから。

と、そうは言っても世間から後ろ指を指されないか若干不安に思いつつ、今回はこの辺で。それらしい写真を探したらあったので、最後はコロナ禍前に友人と行った食べ放題の寿司店の写真を添えて終わりたいと思う。

ではでは。

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