はじめに
ここのところ、『スター・ウォーズ』のキャスト関連の記事をよく目にする。具体的には新三部作でオビ=ワン・ケノービを演じたユアン・マクレガーと、アナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセンにまつわる記事だ。
それというのも、動画配信サイト「Disney+」にて、エピソード3と4の空白を描いた新作ドラマ、その名も『オビ=ワン・ケノービ』の配信開始日が間近に迫ってきているからに他ならない。
予告編を見る限り、どうやら新作ドラマではタトゥイーンにて幼きルークを見守るオビ=ワンと共に、実写作品では初の登場となる帝国のジェダイ狩り、尋問官たちの暗躍が描かれるようだ。アニメでの活躍から人気を博した彼らを実写で見られることに興奮冷めやらぬファンも多いことだろう。
私自身はと言えば、予告編で流れている新三部を代表する音楽の数々に、不覚にもテンションが上がってしまったことをここに告白しておく。未だ「Disney+」に入っておらず『マンダロリアン』も未見の身ではあるのだけれど……。
と言う訳で、これを機に『スター・ウォーズ』作品のどれかを取り上げて感想でも書いて行こうかと思った矢先、たまたま目に入ってきたのがこちらの一冊。
特撮やアニメ、漫画などの作中描写に科学的な考察、もといツッコミを入れる作風で人気を博した柳田理科雄氏の『空想科学読本』。こちらはその『スター・ウォーズ』版であり、どうやら過去作からネタを採録したのではなく、新たにツッコミどころを見つけて書き下ろされた一冊のようだ*1。
良い機会なので『スター・ウォーズ』本編の感想はまたの機会に譲るとして、今回はこちらの感想を書いて行こうと思う。ちなみに、ジョージ・ルーカスが「俺の宇宙では音が出る」との発言をしたというのは(真偽はさておき)有名な話だが、それはまた別の話。楽しめるものは楽しんだもん勝ちだろう。
感想
結論から言うと、本作は数ある『空想科学読本』の中でもあまり切れ味が良い方ではないように思う。というのも、別の体系にある科学(もとい魔法)についてこちらの言葉で語ろうとすると、どうしても難癖の感が強くなってしまうからだ。
例えば、あちらの世界では当然のごとく行われている星間飛行。これらの科学技術について、光すら超えられていないこちらの技術と比較して語るのは土台無理という話だろうし、同じく科学を超越した力であるフォースについても、科学的に語ってみたところで雲を掴むようなツッコミにしかならない。そんなことを言い始めれば、フォースで先が読めたところでレーザーの嵐を捌くことなど不可能であるし、そんなこと視聴者は百も承知なのだ。
と、こちらも難癖を付けて見たものの、だからといって内容がどれもつまらないというわけではない。本書でも『空想科学読本』らしい魅力は健在であるし、目の付け所も興味深いものがある。
例えば、作中の存在を地球のサイズ感と比較した類のツッコミは中々に面白い。19kmもの全長を誇る宇宙戦艦、エグゼクター級スター・ドレッドノートの材料は、地球上の製鉄所が74年間フル稼働してようやく賄える、と言った指摘はスケール感の大きさを感じられて面白いし、ナブーの海溝の深さがマリアナ海溝の556倍と言われると、作中でさらっと行われたコアを抜ける冒険の苛酷さがより伝わって来る。
その他、ドゥークー伯爵の乗るソーラー・セーラー*2についての記述などは、現実の太陽帆船との比較を含めて知らないことも多く個人的には面白かった。もし現在の科学技術に依拠した形でロケットと同等のスピードを持った太陽帆船を作ろうとすれば、必要な帆の面積はなんと2万7千k㎡。これは四国の面積を超える大きさとなってしまうという。
また、かのミディ=クロリアンがミトコンドリアと同じような形で人間と共生していた場合、フォースを使った際の反作用がヤバイ、という指摘は馬鹿馬鹿しいがちょっと笑ってしまった。
結局このミディ=クロリアンは黒歴史にされてしまったわけだが、今にして思えばこれは中々に面白いテーマになっていたのではないかと思わなくもない。実際、ルーカスが続三部のメガホンを取っていた場合、扱われるのはこのミディ=クロリアンになっていたと言う。
もしルーカス版三部作が描かれていたとすれば、それはそれで批判があったような気もするが、個人的にディズニー版の結末は冒険心が足らなかったと思うだけに、このような展開は見てみたかった気もする。これは完全な余談もとい愚痴だが、エピソード9はトレボロウ版の方が断然面白かったと思うのは私だけだろうか……。
と、愚痴はこれぐらいにして話を戻すと、科学的ツッコミがなされる章と章の合間には人物列伝の名でイラスト付きの登場人物紹介もなされており、『スター・ウォーズ』自体にあまり詳しくなくとも読みやすくなっているのは嬉しいポイント。扱う題材についても『新たなる希望』から刊行時最新作だった『ローグ・ワン』までの範囲を幅広くカバーしているため、「この世代は観ていないんだけど……」みたいな層でも読めるのはありがたい*3。
思いがけず久しぶりに『空想科学読本』を読んでみたわけだが、何だか懐かしい気持ちにさせられる読書体験だった。「ものすごく面白い!」とはならずとも、時間をつぶすには最適な本なのは相変わらずで、題材が『スター・ウォーズ』に絞られているのも良かったと思う。
おわりに
と言う訳で、今回は『スター・ウォーズ 空想科学読本』の感想となりました。あまりこの手の本は読みませんが、やはり興味のある作品が題材だとついつい手に取ってしまいますね。熱心なファンとは言えないものの、「『スター・ウォーズ』なくして今の自分はない」と言えるほどには、幼少期に影響を受けた作品なので。
これは最初にも書きましたが、『スター・ウォーズ』の本編(特に4と3)についてはどこかで感想を書ければなと。良い機会ですし、オビ=ワンのドラマ配信前には書いて行ければと思います。
ではでは今回はこの辺で。