たぶん個人的な詩情

本や映画の感想、TRPGとか。

映画:『パラサイト・クリーチャーズ』――雪山、化け物、グロテスク。

先日、ものは試しにとAmazonプライムに入会してみました。色々と便利な機能はありますが、一番の目的は何と言っても定額料金で対象の作品が見放題になるPrime Video。現状時間が取れずまだまだ堪能できているとは言えないものの、これを機に映画なんかを積極的に観ていければいいなと思っています。ブログを書くにもネタは必要ですからね。

さて、こうした動画配信サービスを使っていて面白いのは、何より知らなかった作品と出会えること。見たい作品を見るというよりかは、パッケージやあらすじで興味を持った作品を見るのに適したサービスなんだと思います。

今回感想を書いていくのもそんなたまたま出会った作品です(2018年12月19日現在はプライム会員特典ではなくなっています、ご注意を)。


『パラサイト・クリーチャーズ』 予告篇

科学者と共にアルプス山脈で気象調査を行っている観測基地の管理人ヤネク。ある日、観測機器故障のため山深くに向かった彼らは、氷河の一角が紅く染まっているのを発見する。しかし変異した氷河の調査を開始した矢先、狂犬病に感染したらしきキツネに愛犬が襲われてしまう。治療のため基地に戻ったヤネク達だが、突如彼らに未知の生命体が襲いかかる。何とか生命体を撃退するも、ほどなくして紅く染まった氷河を分析した科学者の口から驚愕の事実が告げられる。彼らを襲う生命体の正体とは!?果たしてヤネク達は生き延びることができるのか!? (配給会社公式サイトより引用)

犬、雪原、観測基地、謎の生命体……と、名作『遊星からの物体X』を彷彿とさせる本作、実際のところ影響は多大に受けているように思いますが、中々どうして、ただの模倣に終わらないオリジナリティがあり、個人的には中々楽しめました。

異変に気付きその危険性を指摘する管理人と、その新発見の隠蔽を私利私欲から画策する科学者たち、そして何も知らずにその危険地帯へと視察に訪れる環境大臣一行。そのメンバーの中には管理人とかつて恋仲だった女性学者がいて……といったあらすじ。

まず見始めて思ったことは「あ、これB級映画じゃないぞ」ということ。もちろん題材はB級感ましましなんですが、作りが低予算のそれとはちょっと違うんですよね……特有の資料映像もありませんし。

いくつか気になる点はありますが、それを抜きにしても悪くない映画だと思います。紅く染まった雪山の異様な雰囲気、クリーチャーの造形、閉鎖空間内の人間模様など、この手の映画として押さえるべきところをしっかりと押さえている印象です。

中でもクリーチャーのデザインが秀逸で、これだけでも見た甲斐はあったなあと思ってしまいました。元となった動物の特徴を残しつつ黒光りする甲殻(?)に覆われたどこか悪魔的なデザインはグロテスクながらかっこいい。デザインの話からは逸れますが、それぞれちゃんとパペットが用意されているのもポイントが高く、操演も巧み、役者との絡みについても違和感がないです。既視感はありますが、感染した生物の体内でキメラが培養され新種が産まれる、という設定も心躍ります。

グロテスクと言えば、傷口などの特殊メイクも中々に気持ち悪くて個人的には大満足。ああいった部分は蔑ろにされやすい分、こだわりを感じられたのはよかったです。特に「皮膚の下に何かいる」感がいい意味で凄く気持ち悪い。

またストーリーが進むにつれてそれぞれのキャラが立ち始めたのも面白かったです。特に女傑として覚醒するオバちゃん大臣の活躍はこの映画の見所の一つでしょう。中でも○○○を手に化け物に立ち向かう姿、怪我人の治療に精を出すシーンなどは印象的です。

あと妙なリアリティがあるのも個人的に好評価。立ちション中によろめいた際にその軌跡が残っていたり、はぐれた仲間を心配し取り乱す中、泣きながらバナナを頬張っていたり……。笑ってしまいそうなシーンですが、こういうところの何気ない演出がいいんですよね。

オーストリアの映画である本作、ドイツ語圏の特徴なのか、こうした硬派で真面目な作りには好感が持てました。ツッコミどころがないわけではないものの、この手の作品が好きなら見て損はない……かも。

パラサイト・クリーチャーズ [DVD]

パラサイト・クリーチャーズ [DVD]

 

▶2013年/オーストリア

▶監督:マーヴィン・クレン

▶脚本:ベンジャミン・ヘスラー

▶キャスト:ゲアハート・リーブマン、エディタ・マロヴチッチ、ブリギッテ・クレン、ミヒャエル・フイト

以下ネタバレありますので、気になる方はご注意を。

面白いんですが、色々と惜しいのは否めない本作、その最たるは何と言っても結末への不信感でしょう。救助のヘリが到着し大臣一行が乗り込む中、安楽死させた愛犬から生まれた犬と人間の交配種の赤子を見つけた主人公とヒロイン。逡巡の末、毛布にくるんでともにヘリコプターへと乗り込み、最後は不安を煽るように化け物のアップで終幕。

いくら愛犬の遺した子ども(のようなもの)といえど、ここまで未知の生命体の危険性を描いておきながら、彼らの独断でその危険因子を持ち帰ることが果たして許されるのか。

確かに、本作には終始「出産」というイメージがチラついていました。まず化け物の増え方が出産そのものですし、基地内で寝かされた女性と、その脚から化け物を取り出す場面などは露骨とも言えます。それらを考え合わせれば、ヒロインによる堕胎の告白自体は納得がいきますし、愛犬を安楽死させていることも踏まえれば、彼らが赤子を想う気持ちもわかる。とはいえ、それとこれとはまた別の話。あれをしょうがないと受け取れるか、余韻として消化できるかで本作の評価は大きく変わりそうです。

赤子を持ち帰るにしても、もう少し上手い描き方、過程があったのではないかと、個人的には納得がいかないのですが、ここまでクドクド書くのも本作が面白いと思ったからに他ならず、そのことはご理解ください。

さて、 文句はこの辺で終わりにしてネタバレ含みでよかった点を。

上でも書きましたが、環境大臣の活躍は本作の見所の一つでしょう。あの手際のよさを見るに、何かしらその手の学問を修めていたのかも知れません。理系から政界へというとオーストリアのお隣の国の首相を連想しますが、女傑ぶりを含め似てる……かも。彼女については上述の格闘や手術シーンのほか、要所要所の判断が素晴らしい。人間を食わせるわけにはいかないと怪我人の放置を拒むのも、理性的かつ人道的で的確な判断だったと思います。

また特殊メイクの具体例でいうと、ダンゴムシに食われた女性科学者の顔の抉れ具合は特によかったですね。あとは寝かされた女性の中で蠢く化け物も気持ち悪かったですし、虫に刺されたカメラマンの、首から顔にかけての腫れ具合も素晴らしかったと思います。

色々と思うところはある映画でしたが、意外な掘り出し物だったのは確か。オーストリアのような国でもこういった映画が録られているというのも何だか嬉しいです。

 

体調を崩したり、書くのが億劫だったりとブログから長々と離れていましたが、今後は定期的に更新していければと思います。では。