たぶん個人的な詩情

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【映画感想】『アナコンダ』――アマゾンの奥地で大蛇退治。丸呑みへの生理的嫌悪を見事に描いた佳作。

はじめに

10年以上前にテレビのロードショーで見逃して以来、長年見たいと思っていた『アナコンダ』。たまたま午後ローでやるのを知ったものの、CMが入るのも嫌だったので、いい機会だと思いレンタルして見てみることに。

午後のロードショー自体は好きでよく見ますが、カットやCMも多いため、本当に見たい映画については逆に見なかったりということも多かったりします。

さて、B級だろうとたかをくくって見始めた本作、ゴールデンラズベリー賞ノミネートは伊達じゃなく、万人にお勧めするような作品ではありません。が、中々どうして、個人的には結構楽しめました。

アナコンダ Blu-ray

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  • ジェニファー・ロぺス
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感想

まず映画を観始めて目を奪われるのは、画面に広がるアマゾンの自然の美しさです。実際にブラジルでロケを行っただけあって、最後まで見応えのある映像に仕上がっています。川を進む船の姿や途中で挟まれる爆破シーンもB級らしからぬ出来栄えと言って良いでしょう。ここだけならばかの名作、『地獄の黙示録』っぽいと言っても良いかも知れません。と言うより、確実に影響を受けている気はするんですよね。

また肝心のアナコンダの造形についても一定の水準は満たしており、今見てもそれほど安っぽさは感じません。文句がないわけでもないんですが「モンスターとしてのアナコンダ」の姿はしっかりと描かれていたように思います。

特にアナコンダが捕食の際に人間を噛み千切ったりしないのがよかったです。噛んだりなんだりはサメでもワニでも出来ますが、「絞め殺して呑み込む」というのはヘビにしか出来ない芸当、言わば専売特許ですよね。そしてこの捕食方法はそれだけで単純に気持ちが悪く、それが魅力的でもあるわけです。

もちろんただ呑み込むのではなくて、制作陣の悪趣味な演出がさらにそれを気持ち悪くしているのも素晴らしい。飲み込まれた犠牲者の顔がアナコンダの腹部に浮き上がったり、吐き出された死体の目が生理現象のためにピクリと動いたり……。これらはこの映画を語るうえで外せない名シーンだと思います。

ちなみに本作の翌年に公開された『ザ・グリード*1にも似たような描写がありますが、丸呑みと言う殺され方による生理的嫌悪は言葉に出来ないものがありますよね。

そして何と言っても、ジョン・ヴォイト演じる悪役、蛇ハンターのポール・サローンがとても良い味出しています。時折見せる悪い顔がまさにTHE・悪人で、ジェニファー・ロペスへ向ける嫌らしい眼差しや、暗い室内でのしたり顔が最高に不気味でした。

アナコンダの生理的な恐怖に対し、本作における日常的な恐怖、つまり暴力を司っていたのはこのサローンだったと言えるでしょう。船を暴力によって支配していく過程はサイコパスもののスリラーのような迫力があり、ここをもう少しクロースアップしても面白かったように思います。

余談ですが、彼は本作におけるもう一匹のヘビだったのかも知れません。聖職の道を捨て、人々の間に不破を起こす誘惑者である彼が、殺しの際に絞殺を選んだというのは示唆的な演出です。

本作について文句を言いたい箇所はもちろんあります。ただそれを踏まえても面白い部分があって、いいなと思えるシーンやカットがある。これだけで十分でしょう。ジェニファー・ロペスは綺麗だし、事が起こってからは矢継ぎ早に事件が起こるため飽きることもない。個人的には好きな映画です。

午後ローで見ることを拒否しておいて何ですが、見るともなしに午後ローでやっているのを見られたとしたら、運がよかったと思えるぐらいにはお勧めの作品です。続編もあるようですが、そちらは機会があれば。

おわりに

ちなみに、この映画を観ていて昔見ていたあるテレビ番組の名前がふと頭を過ぎりました。その名も「スネークハンター」。調べてみるとこの「スネークハンター」、『世界超密着TV!ワレワレハ地球人ダ!!』という番組内の企画の一つだったようで、言われてみればそんな気もしてきます。

で、その肝心な内容はと言えば、その名の通り世界を巡って10m越えのヘビを捕まえようというもの。ぶっちゃけ某探検隊シリーズのヘビ版なんですが、ヘビを捕まえること以上に、捕まえるにあたってのメンバー間のギスギスが子どもながらに印象的で妙に記憶に残っています。残念ながらディスク化はしていないようですが、機会があればまた観てみたい番組です。

と、最後の最後に話が逸れましたが、今回はこの辺で。

房登場人物に髭がなくてダニー・トレホだと気付かなかったとか、途中死んでしまうウエストリッジは何だかんだ良いやつだったな、とか、もっと語りたいことはまだまだあったりしますが、切りがないのでこの辺で。

ではでは。

アナコンダ / Anaconda (1997 / アメリカ・ブラジル)
▶監督:ルイス・ロッサ
▶脚本:ハンス・バウアー
▶制作:ヴァーナ・ハラー
▶音楽:ランディ・エデルマン
▶撮影:ビル・バトラー
▶キャスト:
テリー・フロレス:ジェニファー・ロペス
ダニー・リッチ:アイス・キューブ
ポール・サローン:ジョン・ヴォイト
ティーヴン・ケイル:エリック・ストルツ
ウォーレン・ウエストリッジ:ジョナサン・ハイド
ゲアリー・ディクソン:オーウェン・ウィルソン
デニス・カルバーグ:カリ・ウーラー:
マテオ:ヴィンセント・カステラノス
密猟者:ダニー・トレホ

*1:最高のB級モンスターパニックホラー。DVDの再販が俟たれる。