たぶん個人的な詩情

本や映画の感想、TRPGとか。

【映画】ブレイン・ゲーム――推理ゲームではなく、命の問題を扱ったヒューマンドラマ。役者の名演と映像演出が光る。

世の多くの人の例に漏れず、アンソニー・ホプキンスと聞くとハンニバル・レクター*1を連想してしまう私。何だか申し訳なさも感じますが、どうしてもファーストインプレッションの印象はぬぐえず、未だにこのありさまだったりします。


映画『ブレイン・ゲーム』予告編

で、今回感想を書いていく『ブレイン・ゲーム』のあらすじを簡潔に述べるならば、昔馴染みのFBI捜査官の頼みを受け入れ、隠居中の医者であるアンソニー・ホプキンスが連続殺人事件の解決に協力すると言うもの。

まさに「善なるハンニバル・レクター」と言うあらすじなわけですが、実際のところ本作はそうした印象からは随分とかけ離れた作品でして、違いとしてはまずアンソニー・ホプキンス扮するジョン・クランシーの持つ能力が、ばりばりフィクショナルなものであることが挙げられます。

作中では並外れた洞察力を基に過去と未来を見ることが出来る、と言ったような説明が朧げになされてはいますが、彼の予知能力は超能力の域と言ってよく、ある種SF的とさえ言ってよいレベルです。

もちろん、そうした非現実的な能力を扱っていようと『羊たちの沈黙』的なサスペンスは十分可能ですが、実は本作、そもそもの本質がサスペンスではないんですよね。事件の起こりなどは、それこそ『羊たちの沈黙』や『セブン』を彷彿とさせますし、邦題もそれっぽく仕立ててはいるんですが。

むしろ本作はジョンを中心とした人間ドラマ、ヒューマン要素の強い作品でして、犯人自体早い段階で自らジョンの前に姿を現します。コリン・ファレル演じるチャールズ・アンブローズは、ジョンを上回る能力の持ち主であり、彼は死が約束された被害者たちを苦しみから解放するために殺しを続けていたわけです*2

境遇を同じくするジョンに理解を促すチャールズと、友人の死を経験しチャールズと対峙することを決意するジョン。年配ながら能力では劣るジョンがチャールズに迫ろうとする展開は熱いですし、チャールズはチャールズで、ジョンが自らと同じステージに立ち、自分を解放してくれることを望んでいる。

同類相憐れむ、と言えばいいんでしょうか。この奇妙な関係にある二人の追いかけっこはかなり好きで、アンソニー・ホプキンスコリン・ファレルのやり取りが凄く良いんですよね*3

正直言って、尊厳死にも通じる本作のテーマはありふれていますし、展開や結末にしても新鮮味はありません。Wikipediaによると評論家の評価は芳しくなかったようですが、それもまた肯けます。

そんな本作ですが、全体的に質は高く、個人的には結構楽しめました。何よりアンソニー・ホプキンスを始めとする役者の名演が素晴らしく、本作を一段階上のクオリティに引き上げていると言っても過言ではありません。ジョンの友人であるジョー捜査官を演じるジェフリー・ディーン・モーガンの演技もとても良かったです。

また、ジョンの見る未来や過去のカットをモンタージュ的に演出する手法は面白く、映像としても綺麗で魅力にあふれていました。犯行現場のビジュアルや、死体の描き方も雰囲気があって良かったです。

先に書いたオリジナリティへの注力と共に、サスペンスとドラマ、そのどちらかにより寄せていればもっと良い作品になったのではないかと惜しみつつ、今回はこの辺で。現在アマプラでも見られるようですし、気になった方はぜひ見てみてください*4。ただしちょっとエログロ要素はあるので苦手な方はご注意を。

ではでは。

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ブレイン・ゲーム / Solace (2015/アメリカ)
▶監督:アフォンソ・ポヤルト
▶脚本:テッド・グリフィン、ショーン・ベイリー
▶制作:ボー・フリン、トーマス・アウグスバーガー、トリップ・ヴィンソン、マシアス・エムケ、クローディア・ブリュームフーバー
▶制作総指揮:ショーン・ベイリー、ジェイコブ・ペチェニック、ガード・シェパーズ、アンソニー・ホプキンス
▶音楽:BT
▶撮影:ブレンダン・ガルヴィン
▶編集:ルーカス・ゴンザーガ
▶キャスト:
ジョン・クランシー:アンソニー・ホプキンス
チャールズ・アンブローズ:コリン・ファレル
ジョー・メリウェザー捜査官:ジェフリー・ディーン・モーガン
キャサリン・コウルズ捜査官:アビー・コーニッシュ

*1:ただし最近では「ハンニバル」と聞くとマッツ・ミケルセンを連想してしまうようにはなった。

*2:原題の「Solace(慰め、癒し)」はこの辺りから来ている。

*3:個人的に似た者同士による追走劇がかなり好き。『PSYCHO-PASS』における狡噛と槙島の関係とか。

*4:2021年2月15日現在。