たぶん個人的な詩情

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【映画感想】『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』――空の密室に取り残された二人の運命やいかに。コミカルな邦題に反し中身は硬派なパニックスリラー。

元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件(字幕版)

あらすじ

友人の結婚式に出席するため、サラはインド洋に浮かぶ島国・モーリシャスを訪れた。そこで再会したのは、かつてこの島で気まずい別れ方をした元恋人のジャクソン。互いへの想いを秘めながら、関係を修復できずに結婚式の舞台となる島へと向かう二人。

ジャクソンとの気まずさも忘れ、美しい海と青空に心躍らせるサラだったが、パイロットの死とともに、楽しい空の旅は一転、死と隣り合わせのフライトへと変貌してしまう。迫り来る嵐。減り続ける燃料。次々と襲い来るアクシデントを前に、二人は力を合わせて絶海からの脱出を目指す。


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感想

乗っていた飛行機の操縦士が心臓発作を起こし、突如二人きりになってしまった元カップルが協力して陸地を目指す。これが本作の全容であって、ぶっちゃけこれ以上の内容はありません。

コミカルなタイトルに反してお笑い要素は皆無。パイロットが死んでからは終始アクシデントへの対処に追われるパニック映画となっています。自分は特にあらすじも確認せずにアマプラで見たため驚いてしまったんですが、きっと似たような経験をした方は多いはず。このタイトルじゃあコメディとかを連想してしまいますよね。

この「なろう系」を連想してしまうタイトル、元々は「元カレとセスナに乗ったらパイロットが死んじゃった話」で配給する予定だったものを、権利元との相談の結果、今のタイトルに変更したそうです。

ちなみに原題は水平線を意味する“Horizon Line”。元のパッケージはより暗雲をフィーチャーした不吉なものとなっていて、これならパニックかサスペンス辺りのシリアスな映画だとすぐに分かりますね。どうしてこうなった。

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まあそんな配給元の思惑や商業主義的な売り方についての文句はさておき、肝心の内容はと言うと、意外にもしっかりしていて中々に面白かったです。舞台は飛行機と言う閉鎖空間のみ、主な登場人物も二人しかいない中、パニック映画としてやるべきことは十分にやり切ったのではないでしょうか。

恋仲にあった男女でありながら、感情的にならず適材適所で活躍してくれますし、変に燃え上がった結果見つめ合って時間を無駄にするようなこともしません。自分の場合、こうした不合理な描写が挟まれるのが苦手なので、この点は安心して観ていられました。娯楽を見ているはずなのにストレスが溜まっては元も子もないですからね。

また本作の感想を書くにあたって触れておきたいことと言えば、何と言ってもその映像の美しさについて。飛行機の背景として広がる海と空がとにかく綺麗で、はめ込みの不自然さもなく、南国の青さがストレートに伝わってきます。二人を窮地に追いやる嵐の迫力も素晴らしく、この点に関しては映画館の大スクリーンで観たかったと思ってしまう程。

正直言って名作の類ではないですし、お勧めなので観て欲しいと言えるほどの自信もないですが、最低限ハラハラドキドキできるパニック映画ではあります。加入している動画配信サービスにあるのなら見てみても良い……かも知れません。

では、副操縦士のいない飛行機には乗らないことを心に強く誓ったところで、今回は終わりにしたいと思います。


▶元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件 / Horizon Line (2020 / スウェーデンアメリカ)
▶監督:ミカエル・マルシメーン
▶脚本:ジョシュ・キャンベル、マシュー、ストゥーケーン
▶製作:フレドリク・ヴィークストレム・ニカストロ
▶製作総指揮:ジャウム・コレット=セラ、フアン・ソラ、ティム・キング、フレドリク・ヴァルステット、ペーター・ガルデ、ジョン・フリードバーグ
▶音楽:ヨン・エクストランド、カール=ヨアン・セベーダグ
▶撮影:フラビオ・マルティネス・ラビアーノ
▶編集:クリス・ギル、ローラ・ジェニングズ
▶出演者
サラ:アリソン・ウィリアムズ
ジャクソン:アレクサンダー・ドレイマン
ワイマン:キース・デイヴィッド
パスカル:ソール・マッキー
ソロモン:プリヴィルジュ・マンゲジ