南極で未知の繊維製の服を着た死体を発見したNASAの研究チーム。死体の眠っていた断層から、死体はおよそ4万年前のものだと判明。早速上司に報告するが、一方でそれを盗聴する謎の組織が存在した。
死体は軍によって回収され、急遽帰途に就くこととなったチーム一行。だがしかし、彼らの乗ったヘリコプターが国へとだどり着くことはなく、何者かに海上で爆破されてしまう。辛くもヘリから脱出し一人生き残ったイヴリンは、命を狙われながらも元夫のアダムズとともに真相解明を目指す。
何故彼らは命を狙われることとなったのか。謎の組織が企む計画とは。そして南極で発見された死体は一体何者なのか……。
高度な技術力を持った先史時代の死体の発見と言う、一見するとホーガンの『星を継ぐもの』を彷彿とさせる導入ですが、本作の本質は謎の組織と主人公たちの追走劇、言わばスリラーパートにあると言ってよいでしょう。
序盤から命を狙われるスピーディな展開に読みやい文体、興味を引く謎の数々も相まって、一気読みは必至。都市伝説系のオカルトや陰謀論ネタも良い意味で安っぽく、B級アクション系の作品が好きならきっと楽しめるはずです。
その反面、ハードSF的な知的興奮を満たす要素は薄いため、その点には注意が必要です。点と点が繋がり線になる、と言った謎解きの面白さはなく、主人公たちは最後まで受動側に甘んじることとなります。
本作の面白さを担う追走劇についても、敵方のミスと運に頼る展開が続くのはちょっと気になりました。それもこれも、敵対する組織を強大に設定し過ぎたがための弊害なんでしょうが、もう少しやりようはあったのかなと。
それと、これは個人的な好みかも知れませんが、オカルトや陰謀論ネタの扱いがちょっと弱いんですよね。コリン・ウィルソンを見習えとまでは言わないものの、もう少しもっともらしさ、真実味が欲しかった気もします。
と、最後は少し批判めいた感じになってしまいましたが、本作はエンタメとして面白いですし、良い意味で時間つぶしに最適な作品だと思います。著者が軍人経験者と言うことで、ミリタリネタが豊富なのも魅力の一つでしょうか。
先にも書いた通り、この手のB級アクション映画が好きで、気になっているのなら読んでみても良いと思います。着眼点は良いですし、扱う素材も悪くないです。
ちなみに、作中でルーズヴェルト大統領についての記述があるんですが、年代的にこれは恐らくトルーマンの間違いかと思われます*1。ただ、編集のチェックは二重に入っているでしょうし、こちらの読み違い説もあるので、どなたか分かる方がいらっしゃったらコメントで教えて頂けると幸いです。
では少し長くなりましたが今回はこの辺で。昨年はあまり本を読めなかったので、今年は昨年以上に本を読めればいいなと思います。
▶神の起源 (ORIGIN / 201)
▶著者:J・T・ブラナン
▶訳者:棚橋志行
▶装丁:ヤマグチタカオ
▶発行所:ソフトバンククリエイティブ
▶発行日:2013年7月25日初版発行
*1:具体的には「下巻」p.79-78の記述。