たぶん個人的な詩情

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【読書感想】『読書脳 新版・読んだら忘れない読書術』――記憶に残っていない読書は意味がない。大切なのはアウトプットとスキマ時間。

読書脳

はじめに

今週のお題は「最近読んでるもの」ということで、今回は最近読んだ本の中でも、特に感想を書いておきたいと思った本の感想を書いていきたいと思います。感想を書くのは自分としては珍しい選択であるビジネス書から一冊。

まず個人的な話で恐縮なんですが、私はビジネス書の類を読んだことがほとんどありません。多く見積もってもせいぜい5冊くらい。それには理由があるんですが、それは別の機会に詳しく書くとして、手に取らない理由の大きなものとしては、ビジネス書というものをぶっちゃけ馬鹿にしている節がある、という理由が挙げられます。

まあ、頭と質の悪い堀元見さんみたいなもんだと思ってください。ビジネス書と言っても目の敵にしているのはしょうもないタイプの自己啓発本なんですが、それはさておき、今までこの手の本を読んでこなかった自分がこの本を手に取った理由。その一つは装丁のキャッチーさに惹かれたからで、特に帯付きの本書のデザインは紫の色味がより強く押し出されていてとても目を引きます。

二つ目の理由は、ビジネス書であろうとなかろうと、私が読書術系や本の読み方系の本についつい手を出してしまうから、というもの。例えば、以前にも『戦略読書』というビジネス書の感想は書いていますし、ビジネス書ではありませんが、光文社新書の『わかったつもり 読解力がつかいない本当の原因』もその手の本の一種だと言えるでしょう。

bine-tsu.com

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で、そんな「本の読み方系」の本に眼がない私が今回手に取ったのは、サンマーク出版から9月に出版された『読書脳』。本書は同著者の『読んだら忘れない読書術』に、時代に合わせた加筆がなされた新版とのことです。

以下、本書の感想を書いて行くわけですが、本書が扱う「読書」の対象はビジネス書や知識を増やす類の本、小説だとしても、純粋な娯楽としてではなく、自らを成長させる目的での読み方が勧められているため、「そんな本には興味がないよ!」という方や、「そんな読み方には抵抗があるよ!」という方はご注意ください。

感想

作者の樺沢紫苑氏は作家活動の他、YouTubeTwitter(現X)などでも活躍している精神科医とのこと。本書は著者の精神科医としての知識を活かし、心理学や脳科学をもとにした「読んだら忘れない読書術」が書かれています。

あとがきによれば、著者の掲げる目標は「日本人の自殺、うつ病を減らす」というものだそうです。本書に自殺やうつを解決する方法が直接書かれてるわけではありませんが、著者はこの本を通して本の読み方を知ってもらい、病気の予防が書かれた本をもっと読んで欲しいとの思いから、本書を書いたとのことです。

このように、本書は広い読者を対象にした本だけあって、物足りなさや「え?」と思うところもあるにはあります。皮肉にも、著者自身「ベストセラーになる本は誰にとってもわかりやすくなくてはならず、読書家にとっては物足りない場合がある」といった旨の記述をしております。とは言え、なるほどと思わされた部分も多々あったので、以下個人的に参考にしたいと思った点に触れつつ、本書の概要と感想を書いて行きたいと思います。

記憶に残っていない=何の役にも立っていない

記憶に残っていないということは、その読書は何の役にも立っていない。これは本書の冒頭で書かれている記述の要約でして、これを見た私は耳が(目が?)痛くなり、ごもっともと唸るしかありませんでした。

実際、著者のように読書を自己成長の機会と意識高く捉えずとも、記憶に残っていない本が山ほどあると、徒労感と言いますか、空しさのようなものを感じてしまう時がままあります。

では、読んだ内容を忘れないためにはどうすれば良いか。

著者はここで二つのキーワードを提示します。それは「アウトプット」と「スキマ時間」。アウトプットは、読書術系の本では見飽きた感すらあるキーワードではありますが、著者によれば、従来速読・多読中心だった読書術系の本の流行りがアウトプット重視になった転換点はこの本の旧版である『読んだら忘れない読書術』だったのだとか。

アウトプット

それはともかく、本書のいうところのアウトプットとは何なのか。本書ではアウトプットの具体的な方法がいくつも紹介されていますが、一言でまとめれば、読んだ内容を一週間に三回アウトプットして記憶の定着を目指しましょう、ということになります。

なんでも、脳科学によれば最初にインプットしてから十日以内に三、四回アウトプットすることが最も効果的な記憶術なんだとか。で、その具体的な方法としてお勧めされているのは、①本にラインを引く②本の内容を人に話す③本の感想や名言をSNSでシェアする④ネットに書評・レビューを書く、の4つ。

アウトプットの取り組み方は人それぞれあるにしても、何にもせずに読みっぱなしにしてしまうと、記憶に残らずもったいない、というのはまず間違いないでしょう。実際私もブログに感想を書いた本の内容は意外と覚えていますし、例え忘れていても、ブログを読み返せば結構な割合で思い出せたりします。

また、アウトプットすることを前提に本を読む(=インプットする)と決めることでプレッシャーがかかり、インプットする量が増えるとの記述もありました。確かに、レポートにまとめることを前提に本を読んでいた時の特有の冴え、みたいなものはあったような気がします。

スキマ時間

では、もう一つのキーワードであるスキマ時間とは何なのか。

これを一言でまとめると「読書は通勤時などのスキマ時間にしろ!」となります。これまた耳が痛いのですが、著者によれば「電車の中でスマホを見るのは、最大の時間の無駄」とのこと。

では、車内で何をすれば良いかと言えば、それはもちろん読書です。これは通勤時間を有効活用して読書時間を確保しよう、というだけの読書術ではありません。だらだらと長い時間を読書に充てるのではなく、限られた時間の中で読書を行うことにも意味があります。

例えば、外出前に今日はこの本を読み終えると目標設定をする。例えば、電車を降りるまでにこの章だけは読み終える、など。こうした程よい難易度の目標に挑むことでドーパミンが分泌され、内容を記憶しやすくなるのだそうです。

今まで自分は特に読む時間的な目標も設けず、漫然と読んでばかりいたので、この指摘は目から鱗でした。確かに、目標を設定することで緊張感が生まれ、本への向き合い方も変わってくるように思います。

その他、印象に残った記述

以下、本書の中で印象に残った記述を自分なりに噛み砕いたものをメモ代わりに書いておこうと思います。どういうこっちゃ?と思った方は、是非本書を手に取ってご自分の目で確かめてみて下さい。

  • 目的を持って本を読む(目的地を設定する)
    =行き当たりばったりに本を読まない
  • 初心者に限って上級のノウハウを知りたがる
  • 1冊の本から3行ラインを引ければ元が取れる
  • 哲学や思想の本を読んでいる人は短期で目立った結果が出ず、
    モチベーションが上がらない(=ノウハウ本も読むべき)
  • 内容について議論できて始めて本を読んだとなる

おわりに

本を読んでも実行しない人がほとんど。本書に書かれたこの一文を読んだ時、恥ずかしさを感じた。これがこの本の感想を書こうと思った直接のきっかけです。

自己啓発本だとして斜に構え、内容を呑まずに右から左へ流してしまう。ビジネス書の直接的なノウハウを小馬鹿にしてまともに受け取らない。それはそれで良い。けど、そんなお前は書かれた内容を一つでも実行に移したことがあるのか。

自己啓発本の「熱い」内容を実行に移していれば何かが変わっていたかもしれない。自己啓発本でなくても、本に書かれた内容を実行に移していれば、今は違う景色が見えていたかもしれない。

書いていて何か宗教染みたものを自分でも感じるわけですが、兎にも角にも、私は今まで行動することをして来なかったと、今さらながらに気付かされてしまったわけです。

もちろん、ここで何も行動しなければ今までと変わらないので、まずは本を読む前にその本を何日で読み切るかの目標を設定して読み始めるようにする。そしてスキマ時間は極力読書と映画鑑賞に使い、インプットの場として行きたいと思います。

アウトプットについては、ブログはもちろん、Twitter(現X)を活用したりして手軽に取り組めるようちょっと工夫していきたいところです。

ちなみに、今回のお題の紹介文は下記の通り。

読書の秋です! 夜も長くなってきたので、ゆっくり本でも読んで過ごしたいものです。そこで今週は「最近読んでるもの」をテーマに、みなさんのエントリーを募集します。「このエッセイがおもしろい!」「一気読みしてしまったマンガ」「このブログのファンです」「スマホの電源を切ると読書に集中できる」など、あなたの「最近読んでるもの」にまつわることを、はてなブログに書いて投稿してください! ご応募をお待ちしております。

気付けば読書の秋。実は仕事の疲れから、以前に比べ本を読んだりする時間が取れていないんですが、ちょっとゆっくり本を読んだりしたいなあと思いつつ、そのためにも体力つけたりしないとなあとぼやいたところで今回はこの辺で。

ではでは。

▶読書脳 新版・読んだら忘れない読書術
▶著者:樺沢紫苑
▶発行所:サンマーク出版
▶発行日:2023年9月10日